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星河の覇皇

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第八十三部第三章 今だ目覚めずその一

                今だ目覚めず
 シャイターンが倒れてから四日が経った、だが。
 彼の意識はまだ戻らない、脈拍も心拍も安定しているがそれでもだった。
 まだ起きることがない、それで彼の異変を知る僅かな者達は危惧する顔で話していた。
「インフルエンザは五日だ」
「五日の間絶対安静だ」
「そうしなければならないが」
「しかし」
 それでもというのだ。
「目覚めて頂きたい」
「せめて現状をお話したい」
「ティムールの現状を」
「そうしたいが」
「目覚められぬと」
 どうしてもというのだ。
「どうにも出来ぬ」
「確かにまだベッドにいて頂きたいが」
「高温であられるし」
 まだ熱があるのだ。
「それも三十九度ある」
「四十度近い」
「ようやく四十度を下がったが」
「そうした状況であっても」
「何とかだ」
 ここはというのだ。
「目覚めて頂きたいが」
「まだか」
「目覚められないか」
「国境では敗北し」
 そしてというのだ。
「第二防衛ラインまで下がっている」
「そしてラインの建築も進んでいるが」
「間もなく戦いだ」
 それがはじまるというのだ。
「大変な状況だ」
「だから閣下には起きて頂きたいが」
「せめて戦局だけでも報告したい」
「だが今はな」
「とてもな」
 目覚めていない状況ではというのだ。
「報告も出来ない」
「せめてと思うが」
「それもな」
「今は難しい」
「残念なことだ」
 こうしたことを話していた、そしてだった。
 彼等はシャイターンが目覚めることを願いつつも彼等のなすべきことを行い続けていた、その中で。
 政府の要人達はティムールのことについて彼等の中で話していた。
「国境での敗北は深刻ですね」
「全くです」
「国民が動揺しています」
「ティムールは敗北するのではと危惧して」
「そうなっていますね」
「困ったことです」
 実にと言うのだった。
「流石に主席が倒れられていることは漏れていませんが」
「主席はあくまで前線におられます」
「そうなっていますが」
「しかし」
 それでもというのだ。
「敗北は知られています」
「次の戦闘で勝利しなければ」
「国民の動揺はさらに拡がります」
「そしてそれが大きくなります」
「そうなりますので」
「勝って欲しいですね」
 心からの言葉だった。 
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