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星河の覇皇

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第八十三部第一章 防衛ライン到達その二十四

「労働者階級の権利獲得だったか」
「そうした言葉もありましたね」
「どうもサハラでは疎遠ですが」
「二十世紀に人類に大きく普及した思想でしたね」
「確かそうでしたね」
「私もよく知らないが」 
 参謀達にアッディーンはこう返した、イスラムが絶対の立場にあるサハラではどうしてもこのイデオロギーは歴史的にもその存在感は希薄なのだ。
「しかしだ」
「労働者ですか」
「その立場の者達のことですか」
「その権利獲得ですか」
「農民もあるが」
 これは共産主義のシンボルにも出ている、労働者のハンマーと農民の鎌がそれでありソ連の国旗にも使われた。
「とにかく被抑圧者だ」
「その立場の思想ですか」
「彼等が社会での権利を獲得する」
「そうした考えですか」
「そうだ、それが労働者や農民ではなく」
 マウリアではその多くはシュードラ階級とされている、要するに平民である。
「アウトカースト層だ」
「ヒンズー教の中で阻害されている」
「不可触民ですね」
「決して触れてはならないとされていて」
「汚い仕事をやらされる立場ですね」
「そうだ、そうした立場だからだ」
 その政府の代表者でというのだ。
「彼は常にそのことを念頭に置いている」
「自分達アウトカースト層の社会進出ですか」
「そして権利獲得ですか」
「それを考えていますか」
「言うなら革命だ」
 それになるというのだ。
「まさにな」
「革命ですか」
「マウリアの中での」
「疎外者の権利獲得」
「それを考えていますか」
「我々にはない考えだ」
 こうもだ、アッディーンは言った。
「どうもな」
「全くですね」
「そうした考えは我々にはありません」
「イスラムではそうした疎外者はいません」
「確かに低所得であり社会的地位の低い職業は存在しますが」
「ですがそれがカーストとして定められてはいません」
 参謀達はこのことを話した、実際にイスラムでは階級は存在しない。如何なる時代であっても奴隷はいてもそれはムスリムではなかった。
「しかもそれが代々とはです」
「定められていません」
「そこはヒンズー教とは全く違います」
「不可触民なぞ想像も出来ません」
「だから私にもだ」
 到底と言うのだった。
「わからないが」
「そうしたことは」
「どうしてもですね」
「アウトカースト層の社会進出、権利拡大と言われても」
「このことは」
「そうだ、理解出来ないものがあるが」
 それでもと言うのだった。
「だがジャバル副主席にとってはな」
「政治での公約であり」
「そして、ですね」
「人生の目標である」
「それも絶対のものですね」
「そうだ、何があってもだ」
 ジャバルにとってというのだ。 
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