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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第26話:死者との邂逅


シャマルからの敵襲の報を受けた俺は,レーベンをセットアップすると,
走り始めた。
シャマルから送られてきたデータを確認すると,
ガジェット1型10機ほどの編隊が3つ,ホテルに向かっていた。

「ロングアーチ02より,各員へ。
 これより,接近中の敵ガジェットの殲滅にかかる。
 スターズは敵左翼。ライトニングは敵右翼の編隊を叩け。
 中央の編隊は俺が引き受ける!
 各隊とも副隊長に指揮を任せる。逐次状況報告を頼む」

『こちらスターズ02。了解したが,おめーのほうは一人で大丈夫かよ』

『こちらライトニング02。スターズ02と同意見だ。援護が必要だろう』

ヴィータとシグナムからそれぞれ俺を心配する通信が入った。

「こちらロングアーチ02。データを見る限り,中央の編隊は少し手薄だ。
 これなら俺一人で十分対応可能だ」
 
俺は通信にそう返すと,ヴィータとシグナムに念話で話しかけた。

[シグナムもヴィータも心配ありがとうな]

[そんなんじゃねーよ。けど,お前が怪我したらはやてが心配するかんな]

[主はやてだけではない。私もお前にとって友人のつもりだ。無理はするなよ]

[了解!手に負えなくなったら応援頼む]

俺はそこでもう一言両副隊長に言っておくことにした。

[あとな,シグナムもヴィータもとりあえずはあまり手を出さずに
指揮に集中してくれ。フォワード達に経験を積ませたい]

[[判った!]]

俺は,2人からの返答を聞くと,レーベンを握り直し,
正面に迫ったガジェットの集団に斬りかかった。

俺が半分位のガジェットを破壊したところで,シャマルから通信が入る。

『シャマルよりロングアーチ02。飛行型10機編隊が2つ接近中。
 距離は現在約800m』

「ロングアーチ02了解。スターズ02,ライトニング02迎撃に上がってくれ!」

『スターズ02了解!あとの指揮はスターズ04に引き継ぐ』

『ライトニング02了解。こちらもライトニング04に指揮を引き継ぐ』

「ロングアーチ02了解。スターズ04およびライトニング04は頼むぞ!」

『『了解!』』

ティアナとキャロからの返信を聞くと,俺は再び目の前のガジェットとの
戦闘に集中した。
10機のガジェットをすべて破壊したところで,シャマルから通信が入る。

『シャマルより各員。3方向からガジェット1型の増援を確認しました。
 数は各10機程度』

「ロングアーチ02了解。スターズ・ライトニングそれぞれ状況は?」

『こちらスターズ04。当初の10機はすべて破壊しました。
 これより増援の迎撃に向かいます』

『こちらライトニング04です。こちらもはじめに出現した分は破壊しました。
 引き続き迎撃します』

「ロングアーチ02了解」

俺は少し遠くに見えるガジェットの群れに向かって手のひらを向けると,
カートリッジを1発ロードした。

「パンツァーシュレック!」

俺の右手の前から放たれた魔力の塊がガジェットの群れを飲み込んでいく,
かに見えたが,ほとんどは寸前でかわしたようで,破壊できたのは数機だった。

「レーベン,おかしくないか」

《ええ。少しおかしいですね。いくら威力不足のマスターの砲撃でも
 半分は破壊できたと思ったのですが》

「じゃあ,接近戦で確認してみるか・・・行くぞレーベン!」

《はい!》

俺は,ガジェットの群れに向かって突っ込むと,そのうちの1機に向かって,
レーベンを振り下ろした。が,そのガジェットはひらりと交わして距離をとり,
砲撃を放ってくる。

「くそっ,間違いないな・・・」

《ええ,有人操作に切り替わってますね》

俺はレーベンと短い会話を交わすと,各隊の状況を確認することにした。

「ロングアーチ02より各員へ。こちらの増援分のガジェットは,
 どうやら有人操作に切り替わってる。各隊の状況を知らせろ!」

『こちらスターズ04。こっちも同じです。現状ではかなり辛いです』

『こちらライトニング04です。こちらもです。ちょっと支えきれそうに
 ありません』

(まずいな・・・時間を稼ぐか・・・)

「ロングアーチ02了解。スターズ02・ライトニング02。敵航空戦力の殲滅は?」

『こちらスターズ02。あと2機』
『こちらライトニング02だ。あと1機』

「ロングアーチ02了解。航空戦力を潰したら各分隊の応援に回ってくれ。
 スターズ04・ライトニング04。交戦状態を維持しながら徐々に後退しろ。
 両副隊長と合流するまで時間を稼ぐぞ!」
 
『『了解!』』

「シャマル!ガジェット以外の反応は?どこかに召喚師がいるはずだ!」

『了解。探してみるわね』

「頼む!」

俺は通信を終えると,目の前に迫ってくるガジェットの群れを見た。

《どうするんです?マスター》

「は?俺んとこには増援が来ねえんだから,俺一人でなんとかするさ」

《大丈夫ですか?》

「お前ね,俺とこれ以上の修羅場を何回もくぐってきたろ?
 頼りにしてるぜ,相棒」

《まったくあなたは。格好つけも大概にしたほうがいいですよ》

「はいはい。んじゃあさっさとケリつけようか!」

《了解です。マスター》

俺はレーベンを構え直し,ガジェットの上方に向かって飛び上がった。
そのまま落下しながらガジェットの1機を切り捨てる。

「レーベン,カートリッジロード」

《了解です》

俺はカートリッジをロードすると,目の前で背中を晒している
ガジェットに向けて右手のひらを向けた。

「パンツァーファウスト!」

俺の砲撃魔法でそのガジェットを貫くと,再びレーベンを両手で構えた。

「レーベン,スピードブースト!」

《はい!》

地面を蹴ってガジェットとの距離を詰め,斬るという動作を5回ほど繰り返すと
周囲にはガジェットの姿は無かった。

「こちらロングアーチ02。増援部隊を撃破した。各員状況報告」

『こちらライトニング02。ライトニング03・04と合流し戦闘継続中』

『こちらスターズ02。航空戦力を殲滅した。これよりスターズの援護に・・・
 ってやべぇ!』

「スターズ02どうした?」

俺はヴィータに向けて問いかけるが返信がない。
少し待ってみると,ヴィータの怒鳴り声が聞こえてきた。

『・・・味方の射撃の命中コースにいることも
 コンビネーションのうちだってーのか!?
 もういい!お前ら2人ともすっこんでろ!!』
 
(・・・ヴィータ,通信を切り忘れたな・・・)

俺は念話でヴィータに話しかけることにした。

[ヴィータ。何かあったのか?]

[ゲオルグ?な,何でもねーよ!]

[通信が入ったままだったぞ]

[げ,マジか・・・あー今戦闘中だから後で話す。とりあえずあいつら2人は
後ろに下がらせた]

[了解。ヴィータ1人で大丈夫か?]

[このくらい何てことねーよ!]

[はいよ。じゃあ気をつけろよ]

俺がヴィータとの念話を終えるとシャマルから通信が入った。

『シャマルからロングアーチ02へ。現在そちらの・・・あれ?』

「どうした?シャマル」

『あの,そちらの近くにアンノウンの反応が出たんだけど
 すぐ消えちゃったのよ。なんだったのかしら・・・』

「了解。調べてみるから位置を教えてくれ」

俺はそう言うと作戦図に印のついたところまで歩いて行った。
近くまで行くと,茶色のコートのようなものを羽織った男の背中が見えた。

「おい,そこの奴。両手を挙げてゆっくりこっちを向け!」

俺がそう言うと男はゆっくりとこちらを向いた。

「!!!!」

その顔を見た瞬間,俺は全身の血が沸き立つのを感じた。

「・・・なんで,なんであなたがここにいるですか!ゼストさん!!」

その男は,8年前に死んだはずの姉ちゃんの上司だった男。
ゼスト・グランガイツだった。

 
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