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星河の覇皇

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第八十二部第三章 国債の発行その二十八

「これがね」
「そうなりますか」
「ドビュッシーにしても」
 この作曲家の作品もというのだ。
「そうした意味で残っている作品はね」
「少しですか」
「今も上演されたり演奏される作品となると」
 それこそというのだ。
「少ないよ」
「千年以上もとなりますと」
「本当に価値がある作品でないと」
「残らないですか」
「そうしたことも考えると」
 ペレアスとメリザンド、この作品はというのだ。
「非常に優れているよ」
「そうした作品ですか」
「そう思うよ、難解な作品でも」
「名作ですね」
「そのことは間違いないね、ただ」
 王はさらに話した。
「私は本当にこの作品がわからないよ」
「そのことはどうしてもですね」
「否定出来ないよ」
 どうしてもという口調での言葉だった。
「本当に」
「そうですか」
「あらゆる意味が入っていて、ただね」
「ただといいますと」
「ドイツ歌劇だとヴォツェックはね」
 この歌劇についてはだった、王は王妃にどうかという顔で話した。
「どうしてもね」
「お好きではないですか」
「うん、どうしてもね」
 この作品はというのだ。
「私は最初に観た時から」
「私は観たことがないです」
「ああ、ないんだ妃は」
「はい、どうも」
「あまりね、観てもね」
「よくないですか」
「音楽がどうも不協和に感じて」
 それでというのだ。
「ストーリーも暗いし登場人物達もね」
「陛下にとっては」
「兵士が主人公なのはいいとして」
 それでもというのだ。
「おかしくなっていってその末に死んでいくことは」
「そうした作品ですか」
「観ていてね」
 王としてはというのだ。
「好きになれなかったよ」
「そうでしたか」
「十代の頃に父上と共に観劇したけれど」
 前ケベック王である彼と、というのだ。尚前ケベック王は既に王位を退いて今は先王として離宮にいる。
「どうもね」
「お好きにはですか」
「なれなくてね」
 それでというのだ。
「その時から観る機会はないけれど」
「陛下としましては」
「別にね」
 これといってというのだ。
「残念に思っていないよ」
「そうですか」
「現代劇とはまた違うし」 
 こちらの舞台とも、というのだ。
「変わった作品だよ」
「作曲者は誰ですか」
「アルバン=ベルクだよ」 
 王は王妃の今の問いにも答えた。
「ルルも作曲しているけれどね」
「ルルは観たことがあります」
 王妃はこちらの作品は知っていた。 
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