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星々の世界に生まれて~銀河英雄伝説異伝~

作者:椎根津彦
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敢闘編
  第五十六話 アムリッツァ星域会戦(後)

宇宙暦483(宇宙暦792)年12月11日20:05
アムリッツァ星系、第五周回軌道(小惑星帯)、銀河帝国軍、ヒルデスハイム艦隊、旗艦ノイエンドルフ、
ラインハルト・フォン・ミューゼル

 敵艦隊に新たな動きが認められる…こちらへ回頭…?しまった、攻撃準備を悟られたか!?
「参謀長、奇襲は失敗だ。前進!」
間髪入れずにヒルデスハイム伯が前進を命じる。確かに敵は回頭中、その後陣形を再編するつもりだろう。伯はその間に距離をつめる腹づもりなのだろうが……敵艦隊の行動は明らかに我々の存在を察知した為のものだ。であれば攻撃ではなく待機、または徐々に後退して遅滞行動を取る方が良かったのではないか……いや、もうよそう、始まってしまった以上は補佐に徹すべきだ。
「不満気だな、少佐」
「いえ、そういう訳ではありません」
参謀長が苦笑した。言われて気付いたが、伯も参謀長もどこか不満気な顔だった。奇襲に失敗したのだ、皆不満なのは間違いない。
「敵は現状では劣勢だ。もう一つの艦隊と合流するまでは無理はしないだろう。であれば、こちらも無理する事はない。チャンディーガルに残っているダンネベルグやカイタルのクラインゲルトには悪いが…撤退する」
「了解致しました。ですが、本当によいのですか」
「一個艦隊を完全に撃滅、更にもう一個艦隊にも損害を与える事が出来るだろう。だがそれで充分だ。確かに時間は稼がねばならんが、まずは要塞から収容した者達を無事にオーディンに連れ帰らねばならんしな」
忘れていた。伯の言う事は尤もな話だった。チャンディーガルを離れる時にイゼルローン要塞に駐留していた約二百万の人員を満載した輸送艦と補給艦を分離したのだ。今頃はアムリッツァ星系を抜ける頃だと思うが、彼等を無事に送り届けねばならないのだ。それを考えると、確かに戦闘のみにかまけてばかりは居られない。
「そうでした、確かに百隻程度の護衛では彼等も心許ないでしょう。参謀長、敵右翼に攻撃を集中して、そのまま反時計回りに転進、殿を務めつつ輸送船団に合流しましょう」
「そうだな。如何ですか閣下」
「是とする。卿等のよいようにせよ」




12月11日20:35
アムリッツァ星系、第四周回軌道近傍、自由惑星同盟軍、第二艦隊、旗艦メネラーオス、
ジェフリー・ルーカス

 「敵艦隊、更に前進してきます!こちらの右翼に攻撃を集中しつつあり!」
「右翼に後退しろと伝えろ。右翼が後退を開始したら前進しろと左翼に伝えろ」
「はっ」
敵の意図は何だ…?右翼を崩してこちらの後背を取るつもりか?それとも右方向からの半包囲……それならこちらは中央と左翼は前進……どうする?





12月11日21:00
イゼルローン回廊、自由惑星同盟軍、イゼルローン要塞、中央指揮所
ヤマト・ウィンチェスター

 ふむふむ、ここがアニメでいつもヤンさんが昼寝してる司令官席か…どれどれ………固いな!よくこの固い椅子で昼寝出来るもんだ…おや?
「中々さまになってるじゃないか」
「キャゼルヌ大佐…お休みになられないんですか?」
「非番は非番だがね。どうだ、付き合わんか?」
キャゼさんの手にはバーボンの瓶とグラスが二つ握られていた。
「いいんですか?小官は勤務中ですが」
「上官の命令だ、気にするな」
「ではありがたく頂きます…一応勤務中ですのでシングルでお願いいたします」
「分かった分かった…ところでだ、アムリッツァの件、聞いたか」
「はい。第十一艦隊が敗北…というより殲滅されたと」
意外にロボスのとっつぁんは慎重だった様だ。だが戦力を小出しにした為に第十一艦隊は奇襲を受けて壊滅してしまった…しかし、堂々と命令違反とは…ホイヘンス提督…だったか?まあよくやるもんだ。どの面下げて戻って来るんだろうか。
「これで前線の兵力は七個艦隊になってしまった…ロボス提督も靡下の提督達の引き締めにかかるだろうな。今頃は全軍でアムリッツァを目指している頃だろう」
キャゼさんが一気にグラスをあおる。そして深い息を吐いた。
「シトレ閣下は何も仰らなかったのですか?」
「ああ。先ほどロボス閣下と超光速通信(F T L)で話しておられたが、提督のせいではありません、と慰めておられたよ。まあ慰められた方はどう受け止めたか分からんがね」
キャゼさんは自嘲じみた笑顔で一気にグラスを空にした…一つ艦隊が消えたのだ、ロボスのせいではない、では済まないだろう。まあこれで他の艦隊司令官達もバカをやる奴はいなくなるだろうが…。しかし、第十一艦隊を壊滅させたのは…やはりヒルデスハイム艦隊か?となると手際が良すぎる…意外にヒルデスハイムが有能?いや、違うな、やはりラインハルトだろう。裁量権を与えられているか、全面的に信頼されているか、のどちらかだ。停戦会議の時もいがみ合ってる様子はなかったし…となるとアニメや原作の様に「金髪の孺子」呼ばわりされていない事になる。ヒルデスハイムはブラウンシュヴァイク一門の中でも主だった人物だ。そこに受け入れられているとなると…でもなあ、ラインハルトの生い立ちや性格、そしてその目的からして自分から進んで売り込む筈はないだろうし……。
「どうした?考え事か?」
「あ、いえ、ヤンさんは何をなさっているのかなあと」
「おいおい、俺じゃ不満か?」
「そういう意味じゃないですよ」
「冗談だよ、首席副官の俺が非番って事は、忙しいのは他の誰か?って事になるだろう?」
「ああ、なるほど。確かにそうですね」
空いた俺のグラスに遠慮なくバーボンが注がれていく。原作だったら…ヤンさんはどんな想いでイゼルローン要塞攻略戦に参加していたのだろう。シトレ親父の副官という今と変わらない立場だった筈だ。ヤンさんの事だから喜んでシトレ親父を補佐しただろうが…黄金の翼は小説版を読んでないんだよなあ……ああ、読みてえなあ…。
 
 「大佐、この先どうなると思います?」
「この先どうなるって…お前さん、何も考えてないのか?」
「あまり…」
…分かりますけどね、そんなに呆れた顔しなくてもいいじゃないですか…。
「おいおい、しっかりしてくれ。お前さんに判らない事が俺に判る訳ないだろう」
「はあ…」
「ははあ、それでヤンの事が気になったという訳か。分かった、呼んで来よう」
再び注いだグラスを名残惜しそうに一気に空にすると、キャゼさんは行ってしまった。有難い事だ、忙しさにかまけてヤンさんと今回の戦いについてロクに話した事がなかったんだ…。見切り発車で始めた作戦だからなあ…やってる事は原作のフォークと変わらん…。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変、か…それが出来たら本当に天才だよ。
あ、ヤンさんがそうか。うん、やっぱり話聞こう…ん?ああ、内線か。
「あれ…キャゼルヌ大佐」
”作戦会議室に集合だ。急いでくれ“
「了解しました」
……ああ、もう。

 作戦会議室には既に俺以外の面子が集まっていた…シトレ親父にクブルスリー総参謀長。ハフト准将、ギャバン准将、ロックウェル准将。そしてキャゼさんとヤンさん。あとはグリーンヒル提督、ビュコック提督、ウランフ提督。
総参謀長が深刻そうに口を開く。何かあったのか?
「アムリッツァ星系で新たな戦闘が生起しました。第ニ艦隊と帝国艦隊…先日会見したヒルデスハイム伯爵の率いる艦隊とが交戦中です」
自分より上位の提督達が居る為だろう、総参謀長の口調は丁寧な物だった。
「ほう。要塞を取られたとはいえ只では引き下がらんという訳ですな。中々しつこい敵の様だ」
ウランフ提督が感心感心、といった面持ちで話し出した。
「状況を察するに十一艦隊を撃破したのもこの艦隊ではありませんか?敵ながら天晴れというべきですな」
味方を非難しそうなウランフ提督の口ぶりを察したのだろう、総参謀長が慌てて経過概略図をスクリーンに映し始めた。
天頂方向から見た図だ…アムリッツァ星系のイゼルローン回廊側に位置している外惑星マルガオ、第五周回軌道、そして第四軌道上のカイタル…恒星アムリッツァを挟んで第三軌道上のチャンディーガル。マルガオからカイタルに到着した第十一艦隊をヒルデスハイム艦隊が後背から襲う…。その後チャンディーガル方面に向かったと思われるヒルデスハイム艦隊は姿を消した…。後続の第ニ、第三艦隊はそれぞれマルガオからカイタルへ、チャンディーガルへと進撃、索敵範囲を拡げた。その後第ニ艦隊は第十一艦隊の残存と合流、いや救助した後、カイタルからチャンディーガルへ針路を変える…そのまま進んだ第ニ艦隊がカイタルの周回軌道からチャンディーガルの周回軌道をに到達する寸前で第五周回軌道…小惑星帯から帝国艦隊が現れ、第ニ艦隊の後背を取ろうとするも、第ニ艦隊はこれに気付き反転、迎撃体制を取る…。
アスターテ会戦みたいだな、合流前に各艦隊を奇襲による各個撃破…という事はやっぱりラインハルトか。まあ第二艦隊が気づいてくれたおかげでアスターテの二の舞は避けられたから良かったけれど…ってアスターテ会戦は起きてないから二の舞ってのはおかしいか。

 「総参謀長、第二艦隊司令官のルーカス提督はどの様なお方なのですか?」
「私などより長官代理の方が詳しいよ。如何です、長官代理」
「そうだな…優秀な人だ。士官学校では私の五期先輩にあたる。沈着冷静を絵に書いた様な人だな…ウィンチェスター中佐、何か気になる事があるのかね?」
「いえ、小官は艦隊司令官の方々の人為をよく知らないので…では第三艦隊のルフェーブル提督はどの様な方なのでしょう?」
「佐官時代しか私は知らないが、参謀としては優秀だった。今回は艦隊司令官として初陣だから、気負い込んでいるかも知れないな」
ふむ…沈着冷静と初陣か…。第二艦隊と第三艦隊…合流出来ればプラスマイナスゼロで問題なく戦えるか…?ラインハルトがどこまで信頼されているかによるな。信じがたい事だが、貴族艦隊のヒルデスハイム艦隊がイゼルローンでの激戦を難なく乗り越えている。アニメや原作のイメージで貴族の艦隊を捉えていると痛い目に会うかもな。そして第十一艦隊を撃破…多分、要塞駐留艦隊を収容して当初より兵力が増しているんだ…。ヒルデスハイムがラインハルトやシューマッハに指揮を任せているとすれば、二個艦隊相手でも互角に戦うだろう。
「長官代理、ロボス閣下はもうアムリッツァに向かっているのでしょうか」
「ああ、予定通りならあと七時間程で星系外縁に到達する筈だ。アムリッツァは死守するとの事だ」
死守ねえ…。ロボス親父もよほど懲りたのだろう…第十一艦隊の壊滅は、自分では提督達を統御出来ないと思われても仕方ない出来事だからな…。
「では一安心ですね」
「うむ…グリーンヒル提督、要塞残留中の各艦隊の状況はどうかな」
「はっ。要塞の工廠が使用出来ましたので、装甲の材質や電子部品の規格など一部不具合はありましたが、各艦隊とも損傷艦の修理はあと一週間ほどで終わります。それぞれ一万隻程度まで兵力は復旧します」
「そうか、それは重畳だ。考えたくはないが君等もアムリッツァ星系に進出せねばならない可能性は残っている。しばらくはイゼルローン要塞で待機してもらう。ギャバン准将、後方勤務本部との折衝はどうなっている?」
「はっ。補給に関しましては物資の消費量が作戦の想定内に収まっている為、滞りはありません。近日中に補給第一陣が到着いたします。それと同時に要塞内に後方勤務本部の支部を立ち上げたいので許可が欲しいとの事です。統合作戦本部の承諾は得ているそうです」
「了解した」
「伝えます。支部長にはセレブレッゼ少将が着任します」
「ふむ、セレブレッゼか。彼なら前線での補給任務も難なくこなすだろう。いい人選だ…とまあここまでが今作戦の現状だ。質問はあるかな?なければ話を進めるが、いいかな」
誰も何も言わない…しょうがない。
「ありません。お話の続きをお願いします」






12月12日00:30
アムリッツァ星系、第四周回軌道近傍、自由惑星同盟軍、第二艦隊、戦艦エルセントロ、
ダスディ・アッテンボロー

 くそ、敵さんえらく威勢がいいな。味方は押されっぱなしじゃないか…。なんだってこうもこっちの右翼ばかりに攻撃を集中してくるんだ?
「砲術長、休憩してきたらどうだ。哨戒直からずっと配置に付きっぱなしだろう」
「あ、副長…いえ、大丈夫です、若いですから」
「そうか。まあもうすぐ第三艦隊も駆けつける。そうしたら大分楽になるだろうよ。それにしても帝国内に踏み込んで戦う事になるとはなあ。シトレ閣下もとんでもない作戦を思いついたもんだ」
「副長、多分、いや確実にこの作戦を考えたのは長官代理じゃないですよ。考え付いたのは小官の一期後輩のヤツです」
「そうなのか?何て奴だ?」
「宇宙艦隊司令部に作戦参謀として入っているんですが、ウインチェスターって奴です」
「ウインチェスター?ヤマト・ウインチェスターか?」
「あれ、ご存じなんですか?」
「改変前のエル・ファシル警備艦隊で一緒だったんだ。当時はまだ術科学校を出たばかりの一等兵曹だったなあ。もう四年も前になるのか。君も知り合いなのか?」
「はい、士官学校に編入で入学してきた頃からの付き合いでして。当時は大変でしたよ、五十年ぶりの将官推薦の編入生が来た、って」
「俺も聞いたときは驚いたよ、そもそもそんな制度自体知らなかったからな。ハイネセンで会った時はまだEFSF所属だったが…そうか、今は宇宙艦隊司令部にいるのか。下士官らしくない物の考え方をする奴だったし、出世はするだろうと思っていたが…」
ガットマン副長は遠い目をして顎を撫でている。
「今じゃ立派な宇宙艦隊の参謀中佐ですよ。あーあ、上手いこと引き抜いてくれないもんですかねえ」
「はは、その話、俺も一口乗せてもらおうか」
「いいですねえ。コネは充分に活用しなければなりませんから」
「そうだな、だがまずは生き残らんとな。まあいいから休憩してこい、命令だ」
「はっ、ありがとうございます」



12月12日00:35
アムリッツァ星系、第四周回軌道近傍、自由惑星同盟軍、第二艦隊、旗艦メネラーオス
ジェフリー・ルーカス


 どうも敵の動きが解せん…。なぜこうも右翼ばかりに攻撃を集中するのだ?
「パエッタ参謀長、どう思う?」
「はっ……何と言いますか、こちらに退いて欲しいのではないか、と」
「退いて欲しい…??」
「あ、いえ、なんとなくそういう印象を受けましたので。此方は既に敵右翼に対し半包囲体勢を構築しています。それに対し敵は右翼のみがそれに対応し、相変わらず敵中央、左翼は此方の右翼に対する攻撃を止めません。それで、退いて欲しいのかと思った次第であります」
退いて欲しい…?敵にしてみれば当たり前の話ではないか。だが印象か…確かにそうかもしれんが…
「なるほどな。右翼の被害状況はどうなっている?」
「はい、一千隻ほどが撃破され、残存艦艇の三割程が何らかの損傷を受けています。戦闘に支障のあるものはその三割の半数に及ぶ様です」
「第三艦隊の到着まであとどのくらいだ?」
「およそ二時間かと」
二時間……現状のまま推移するとなると、此方の右翼はズタズタになるか…。
「参謀長。後退する。後退しつつU字陣形に再編だ」
「後退なさるのですか?」
「参謀長の印象に賭けてみよう。こちらに退いてほしいというのなら、奴等は撤退するのかも知れんしな。それに我々の任務はこの星系の確保だ、敵艦隊の撃破ではない。後退してみれば、奴等の意図もわかるだろう」
「…了解致しました」
不満そうだな参謀長、だがこれ以上戦力を減らす訳にはいかんのだ。確かに第三艦隊と合流すれば挽回は可能だろう。だが我々は既に一個艦隊を失っている。それがホイヘンスの命令違反によるものだとしても、宇宙艦隊司令部がそう見るとは限らない。ロボス閣下や我々の連帯責任にされかねない。既に我々の能力や行動に危惧を抱いている輩は少なからずいるだろう。であればまずは作戦目的の達成だ。我々の任務は星系の確保であって、敵戦力の撃破ではない…。敵は必ず大規模な反攻作戦を興すはずだし、敵戦力の撃破はその時で良い、敵に対するのに我々だけで当たる必要はない…。



12月12日00:50
銀河帝国軍、ヒルデスハイム艦隊、旗艦ノイエンドルフ、ラインハルト・フォン・ミューゼル


 敵は後退する様だ。U字陣形…半包囲体勢は崩さないという事か。
「少佐、どう思う?殊更に陣形を見せつけているとすると、敵は我々の撃破ではなく残りのもう一つの艦隊と合流を優先するのではないかと思うのだが」
シューマッハ中佐の見立ては正しいだろう。U字陣形、半包囲体勢の陣形だ。此方の方が戦力が多いから、中央突破出来ない事もないが、敵はどうやら中央部を厚くしている様だ。となると突破には時間がかかる、突破するまでに少なくない損害が出るだろう…。
「参謀長の予想通りだと思います。まあ此方が敵右翼ばかりに攻撃を集中するので、意図を図りかねての後退という側面もあるのでしょうが…U字陣という事は追撃されたくないという事ですから、こちらにも好都合ですね」
「そうだな。閣下、如何でしょうか」
「うむ。全艦、斉射。三連だ。その後、艦隊左三十度回頭。離脱する」
「了解致しました」
…欲を言えば、眼前の艦隊も撃破したかったが…道を空けてくれるというなら素直に従うべきだろう。それにしても、オーディンに戻ったらどうなる事か…政府、軍そして門閥貴族達…この事態にどう対処するのか見物だな。高見の見物とはいかないが、どうなろうとも切り抜けてみせる。たとえそれが門閥貴族の力を借りる事となってもだ。
「少佐、同盟軍に平文で通信を送ってくれないか。内容は…今、閣下が考えておられる」
指揮卓を見ると、伯が手を顎に当てて天井を見ている。どんな内容を送ろうというのだろう。
「…よし。少佐、今から言う内容を送信してくれたまえ」
「はっ」
「回廊ヨリ此レ迄ノ戦イブリ、マコトニ見事ナリ。再戦ノ日マデ壮健ナレ。以上だ」
「…了解致しました」
負け惜しみじゃないか。吹き出しそうになった…だが再戦の日か。そうだ、必ず戻って来る。そして必ず叛乱軍を叩き潰す…。




 
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