| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

やっぱり僕は歌が好き 第八楽章「悪口を言っちゃおう委員会発足」

(グランバニア城下町:中央地区:アマン・デ・リュムール)
アイリーンSIDE

「もう! 私の彼氏の話は如何(どう)でも良いでしょ……それよりも芸高校(芸術高等学校)の人たちが集まってるんだから、何か学校関連の話をしてたんでしょ!? 邪魔しちゃダメよリューナ」
あ、そうだ。忘れてたわ。

「あら、私が来るまでは何の話をしてたんですか?」
「あ~……え~と……確かぁ……あぁ、宰相閣下の悪口だ!」
おいキャバ嬢……そうだけど、そうじゃないだろ。

「あらぁ……それじゃぁこの集まりは『グランバニア王国宰相兼国務大臣閣下の悪口を言っちゃおう委員会』の会合って事かしら?」
「うん。概ね合ってるわ……会費も宰相閣下から貰ってるし」

「ちょ、ちょっとエウカ(エウカリス)! そうじゃないでしょ……私そんな委員会は抜けるわよ!」
「貴女……ピクトルちゃんって言ったわよね。先刻(さっき)も思ったんだけど、本当にあの男に惚れてるの? 趣味悪いわよ」
思わず本音が漏れ出てしまった。

「ち、違いますぅ! 私、そう言うんじゃないですぅ!」
「あらあらウフフッ……まぁ顔だけは良いですからねぇ、あの男。ベッドの上でも凄いのかしら?」
お上品な口調だが、言う事は遺伝子に左右されるらしい。

「し、し、知らないわよ!!」
「あらやぁね。そんなに必死に否定しないでよ。余計に疑っちゃうじゃない……セクハラくらいはされてるのかしら?」
「何ぃ……私の大切なピクちゃんにセクハラだぁ!? 許せんあの野郎……玉ぁ蹴り上げてやる!」

「あら貴女達、そう言う仲だったの? 二人とも浮いた話を聞かないから、おかしいなぁって思ってはいたのよ」
「私はノーマルよ。男の趣味が良すぎて、中々理想の男性に巡り会えないだけ」
「わ、私だってノーマルですぅ! 男の趣味だって悪くありません!」

「別に隠さなくても良いのよ。同性愛は悪い事じゃないんだから」
「だから違うってば! そ、そんな事よりも……今回の集まりは、芸高校(芸術高等学校)の卒業式に関してでしょ! 悪口やドロドロの話をしてないで、真面目に考えましょうよ!」

「そ、そうだったわ……現実逃避をしたさすぎて忘れてた」
「ちょっとピエ……真面目要員のアンタがそれで如何すんのよ?」
普段ならツッコむのに、黙って聞いてたのはそういう訳か?

「そうなのね。じゃぁ私は邪魔しない様に席を移りましょうか? それとも何か協力出来る事がありますか?」
「そりゃぁ良い。魔技高校(魔法機械技術高等学校)一の天才少女リューナが手伝ってくれるのなら、もう解決したも同然だね」

「ラッセル……訂正して頂きたいわ」
「な、何を!?」
何か気に障ったのかしら?

「私は“天才”等ではなく、努力によって今日の成績を収めております。“天才”とは天から与えられた生まれ持っての才能であって、努力なくても良い成績を得られる者の事を指します。私の事を評するのであれば『魔技高校(魔法機械技術高等学校)一の秀才』と言って頂きたいですわ」

「し、失礼しました……」
「あともう一点!」
まだ何かあるの?

「『美』を忘れてもらっては困ります。魔技高校(魔法機械技術高等学校)一の秀才“美”少女リューナですわ!」
結構言うわね、この娘も。
まぁ陛下の御血筋という事を鑑みれば当然か。

「さて……私がお手伝いするのは良いとしても、何が如何なってるのか教えて頂かない事には何も出来ませんわね」
やっと今回の本題が動き出し始めた事で、ピエに視線が一斉に集まる。
アンタが責任者なんだから、説明をするのもアンタなのよ。

「えーとですねぇ……かくかくしかじかで……」





「……なるほどね。まだ何も進んでないのね」
「はい……その通りですぅ」
「でもピエッサさんが責任者なのだから、方向性だけでも貴女が決めないと……」
「方向性?」

「そうよ。ポップスミュージック?って言うのの知識がまだ半人前だとしても、この場の誰よりも一番知識があるのはピエッサさんなのだから、屋台骨みたいな方向性を示してこそ、私達もアイデアを出し合えるってモンでしょ?」

「う~ん……それなんだけど曲だけなら何とかなっても、歌詞の方は卒業式に合わせなきゃならないから、凄く難しいのよ。だからね、美術学部の皆さんに、先に卒業をテーマにした美術品を作ってもらって、それに沿った歌詞を作れば……って考えてるんだけど」

「それ良いかも。私達もテーマに合った絵を描けば良いだけだから、楽よね……ね、エウカ(エウカリス)もラッセンもそう思うよね?」
委員会活動の時は無口気味だったピクトルさんが、急に喋る様になってきた。本当にあの男に惚れてるのか?

「ダメね、それは」
だがきつめの口調でダメ出しをするリューナ嬢。
何が気に入らない……って、当然か。

「ピエッサさん、貴女は自らポップスミュージック制作にはまだ力量不足と言ってたわよね」
「は、はい……」
「そんな人に、既に歌詞(ストーリー)の決まってしまってる楽曲を作れるかしら?」
「……た、確かに」

「それよりも自由にストーリーを作り作詞をした方が未熟者には楽なんじゃないかしら? そして出来上がった歌詞に沿って肉付けする様に絵を描いてもらった方が上手くいくと思うのよ」
「うぅぅぅぅ……私、作曲家であって作詞は不得手なのよぉ……(泣)」

「埒が明かないわね。もういっその事、作詞作曲は外注(がいちゅう)に出すべきじゃない?」
「え、マリーちゃんに頼むのぉ!?」
「その害虫(がいちゅう)じゃないわよ!」
「ひ、酷い……と思えない」

「何々、秀才美少女ちゃんはあの娘の事に詳しいの?」
「えぇよく知ってますわエウカリスさん。チャンスがあれば『パオームのインク』でアイツの顔にチョビ髭を描いてやりたいと思ってますから(笑)」
(笑)ではない……パオームのインクって、二度と消えないインクでしょ。

「それよりも、私が言ってる外注ってのは別よ。私に(つて)があるから、今から依頼をしに行きましょ」
そう言うと食べかけのケーキを一気に食べきり、小声で「甘過ぎ」と言ってブラックコーヒーを流し込むと立ち上がり財布を取り出すリューナ嬢。

「おぉっとストップ秀才美少女! 今回の会合の会費は、既に腐れ宰相閣下から奪ってあるから、お嬢ちゃんが出す必要はないのですわよ」
「まぁステキ。ではご相伴に甘えさせて頂きますわ」
目が眩むほどの眩しい笑顔!

「因みにお幾らほど宰相閣下からご提供頂いたんですか?」
「150(ゴールド)!」
キャバ嬢が奪った100(ゴールド)札と50(ゴールド)札を取り出して見せつける。

「……それっぽっち? 何あの男、せこいわねぇ……重要な会合なのだから、その10倍は出しなさいよね」
「皆そう思ってるわ。如何(どう)する、このまま第2回グランバニア王国宰相兼国務大臣閣下の悪口を言っちゃおう委員会会合を始めちゃう?」

「終わりが見えないから、卒業式が始まっちゃうわよ。楽しみはとっておく事にしましょう」
「私はあまり楽しく無いなぁ」
ただ一人、気乗りしてないのは男の趣味が悪いピクトルさんだけだ。

「と、ところで何所へ行くの?」
「お城よピエッサさん。信頼できる外注先の(つて)はお城に行かないとお願いできないの」
あぁ~……私にも分かってきたわ、その(つて)って奴がなんなのか。

それは迷惑がかかるから避けてたんだけどなぁ……

アイリーンSIDE END



 
 

 
後書き
結局あの人の手を借りるのであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧