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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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やっぱり僕は歌が好き 第九楽章「使えるモノは親でも使え」

(グランバニア城)
アイリーンSIDE

窓からは西日が差し込む夕暮れ前、私達は数時間ぶりにグランバニア城へと戻ってきた。
今回は魔技高校(魔法機械技術高等学校)の才女リューナ嬢と一緒に。
とある人物に合うべく、彼女は真っ直ぐに目的地へと歩を進める。

目的地が近付くにつれ彼女が誰に会おうとしてるのかが、私以外にも判ってきて少し響めく一行。
だが、その目的の部屋の手前で響めきの声は嫌悪の呻きに変わる。
「うわっ……一日に何度も顔を見るなんて最悪」

目的地である陛下の執務室から出てきたのは、重要そうな書類の束を抱えてるクズセコ宰相閣下様だった。
「お前が盗作しなきゃ、何度も合う事はねーよ」
してねーわ!

「すみません。態度だけがデカい三下閣下……邪魔なんですけど消えてもらえますか」
「あれ、何でリューナがこのボンクラ共と一緒に居るんだ? 芸高校(芸術高等学校)の卒業式問題は如何した?」

「貴方には関係のない事です。私は陛下にお話があって参ったので、視界から消えて頂けますか……永遠に!」
「『永遠に』って……俺、何かお前に嫌われるようなことしたか?」

「自覚ないんですか?」
「怒らした記憶はない」
「存在自体が不愉快です」
「俺がこの場に居るのは、お前の一族の責任だ!」

二人とも眩しいくらいの爽やかな笑顔で会話しているが、仲が悪い事はヒシヒシと伝わってくる。
まぁこの男と仲良く出来る人間なんて、そうそう居ないだろうけど。
どちらかというと小心者のピエが、胃の辺りを押さえて辟易している。

「兎も角そこを退きなさい! 陛下への謁見を阻む権利は貴方にはありません」
「いや、有るよ。俺は宰相だよ。リュカさんを守る為に、危険と思われる人物を選定して排除する事は出来るよ!」

「烏滸がましい! 陛下が貴方なんぞに守られるわけないでしょう。陛下よりも心身共に強くなってから発言しなさい!」
(ゲシッ!)

一方的に意見を言うと、ザコ宰相のスネを蹴り上げ扉の前から退かせる美少女。
「痛ぇ!!」
「失礼……腹違いの妹に教わった“完全不意打ちツンデレ拳(デレ無しバージョン)”ですわ」

「た、ただの暴力じゃん!」
痛そうに蹴られたスネを擦るザコ宰相を横目に、リューナ嬢は目的の部屋へと入っていく。
それに続いて私達も「失礼します」と言って入るわよ。



(グランバニア城:国王執務室)

室内に入ると陛下はクズ宰相の大いなる被害者たる女性秘書官……確か名前はユニさん……と、その部下と思われるメイドに何やら指示を出している所だった。
思わず深々と頭を下げたリューナ嬢……私らも慌ててそれに続く。

陛下はチラリとこちらに視線を動かした後、右手をヒラヒラ振って容認の意思を示して下さった。
流石は陛下……お心が広い、それに手を振ってるだけで格好いい。
更に言えばお仕事をなさってる姿は、最高に格好いい!
暫くの間、陛下の格好いいお仕事姿を見学する事に……

「もう男女問わないからさ、男気のある奴に愛の告白させられない?」
「無意味ですよリュカ様……」
「そうです陛下。あの変態性は……」

仕事の話か? 何なんだ?
「ちっ……あの女か」
内容を理解したのか、リューナ嬢が舌打ちと共に苦々しく呟く。なるほど……あの女(リュリュ)か!

この場に居ない変態女(リュリュ)に苛立っていると、陛下と打ち合わせをしていた女性二人がお辞儀をして数歩下がる。
如何(どう)やらお話は終わったらしい。

「さて……妙な組み合わせの一団だけど、如何したの?」
確かに……
リューナ嬢が居なければ、芸高校(芸術高等学校)生徒だけなので、何となくは察する事が出来るだろうけど。

「はい。本日は陛下にお願いとご報告があり、私どもはここに参った次第でございます」
「美女のお願いなら聞くけど……報告?」
この場に連れてきたリューナ嬢が率先して陛下に用件を伝えてくれる。ただ報告って何?

「この度私ども、とある委員会を発足致しまして、陛下にはその委員会のエグゼクティブ・アドバイザー(高級顧問)に就任して頂きたくお願いに参りました」
いやいやいや、芸高校(芸術高等学校)の卒業式の為に国王陛下をエグゼクティブ・アドバイザー(高級顧問)になんて出来ないわよ!

「いや……いきなりエグ…なんちゃらになれと言われても、会の内容も分からないと何とも言えないよねぇ。それなりに忙しいし」
そりゃそうだ!

「失礼しました。確かに委員会活動の内容を説明しない事には、何とも返答しづらい事でしたわ」
いや止めて。説明よりも撤回して。
陛下はお心が広いから、こんな事では起こらないと思うけど、すごく失礼な事ではあるのだから!

「当委員会の名称は『グランバニア王国宰相兼国務大臣閣下の悪口を言っちゃおう委員会』と申しまして、その活動内容は「いや説明不要だね。うん、完全に理解した。なるよ、そのエグに」
え、活動内容ってそっち!? ……ってか陛下も簡単に了承しちゃうの!?

「ふざけんなよ。卒業式の事を話し合ってたんじゃねーのかよ!」
あれ……クズ宰相が居た。如何(どう)やら私達の後ろから付いてきた様だ。
何で居るのよ……もう用事は済んでるのだろうから仕事に戻りなさいよ!

「わぁ、面白そう! 私も委員になりたぁい! 如何したらなれるんですか?」
「あら、上級メイドのジョディーさんも当委員会に入りますか? この場で行える入会テストがありますが、今すぐお受けになりますか?」
私達そんなテスト受けた事ないんだけど?

「受けるぅ!」
即答(笑)
「では私が発した言葉に対して、頭に思い浮かんだ事を即座に答えて下さい。熟考は禁止です」
如何(どう)言う事だ?

「???」
メイドも理解が追い付かず首を傾げてる。
「例えば……私が『陛下』と言ったら、貴女は頭に思い浮かんだ言葉を言えば良いのです」
つまり『陛下』と言われたら、頭に思いついた『格好いい』等の言葉を言えば良いって事ね。メイドも了解したらしくクビを立てに振っている。

「では一問目。『宰相閣下』」
「クズ!」
「二問目。『自称天才』」
「死ね!」

「はい、合格です。おめでとうございます」
「やったー! 超簡単(大笑)」
なるほど……知らぬうちにテストを受けてたわね。

「ただの悪口じゃねーか!」
「あらあら所詮は自称天才宰相閣下ですわねぇ……一瞬前の会話も記憶できないとは(クスクス) 陛下は委員会の名前を聞いただけで、全容を理解したと言うのに」

「ムカつく女だな! 父親の顔が見てみたい」
コイツ分かってて言ってやがるな!
「あら、会いたいのでしたら紹介しますけど……何をお話するのですか?」
目の前に居りますよー!

「……そーだなぁ。うん『娘さんを僕にください』って言う」
「うわ……この世界に、これほど最悪な台詞があるとは知りませんでしたわ。流石は自称天才……色々な事を学ばせて頂いております」
陛下へチラリと視線を向けたが、笑って居られるので大丈夫なのだろう。

「あの~……私もその委員会に入りたいので、テストを受けたいのですが」
おずおずとテストを受ける希望を発したのは、クズ宰相の部下の女性だ。
私は名前を知らない。

「あらユニさん。貴女は既に当委員会の会員ですわ……と言うよりも、ユニさんには会長をお願いしたいのです。最前線にて御仁の被害に遭われている、ユニさんにこそ最適だと思いまして……了承願えますか?」
「私が会長ですか!? てっきり会長はリュリュ様かと思いました」
確かに!

「当委員会は平和的な会であり、あのご婦人は些か危険な思考に傾倒しがちなので……何時(いつ)何時(なんどき)キッチンで猛毒を生成してテロ行為に走るか分かりません。志の高さは認めますが、我々平和主義者にまでテロリストというレッテルが貼られかねませんので、共に歩む事は出来かねます」

この()もあの娘が嫌いなのかしら?
気持ちは解るわぁ~!
でもキッチンで猛毒をって如何(どう)言う意味かしら?

アイリーンSIDE END



 
 

 
後書き
話の方向がズレてきた。
どうしよう? 
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