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星河の覇皇

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第八十二部第二章 国債その二十八

「全員そうだからな」
「この船にいる奴はですか」
「最近レーションばかりですか」
「そうなっていますか」
「そうだよ、それで何でも艦隊でもな」
 彼等がいるこの艦隊もというのだ。
「そうらしいな」
「そうですか」
「俺達の艦隊でもですか」
「全体でレーションですか」
「最近はそればかりですか」
「そうなんだよ、こんな状況だろ」
 惨敗し撤退している、そうした状況ならというのだ。
「それならな」
「食うものもですか」
「まず食うことが先決ですか」
「敵が何時追い付いてくるかも知れないですし」
「それでレーションばかりなんですね」
「落ち着いたらまた食える」
 普通の食事を摂れるというのだ。
「食堂でな」
「そうなるからですね」
「だからですね」
「今はレーションで我慢することですね」
「こうした状況だからこそ」
「そうだ、後だ」
 軍曹は兵達にこうも言った。
「酒もな」
「はい、それもですよね」
「逃げているんですから」
「飲めるものじゃないですね」
「到底」
「そんな時に飲めないだろ」
 到底という言葉だった。
「だからな」
「今はですか」
「酒は飲めないですね」
「そちらも我慢ですね」
「我慢してですね」
「そうして行くことだ」
 目的地にというのだ、彼等の行くべき場所に。
「何とかな、あと大変だがな」
「大変でもですか」
「それでもですか」
「こんな逃げる時でも胸を張れ」
 そうしろとも言うのだった、兵達に対して。
「絶対にな」
「俯くな、ですか」
「そうして逃げるべきですか」
「今も」
「そうだ、俺の叔父さんに言われた。叔父さんは普通の工場で働いてるおっさんだがな」
 その彼がというのだ。
「俺がガキの頃に言ってくれたんだ」
「どんなことですか?」
「軍曹の叔父さんが軍曹に言われたことは」
「それは一体」
「どういったものですか?」
「だから今言った言葉だよ」
 まさにというのだ。
「どんな時でも胸を張れ」
「そうしてですか」
「ことを進めってことですか」
「ここはですか」
「撤退しないといけないですか」
「卑屈になれば」
 その時はというのだ。
「そうでなくても俯いてな」
「何が出来るか」
「それですね」
「若し背中が丸まっていれば」
「俯いていれば」
「そうだよ、周りも見えないしな」
 胸を張っていれば周りが見える、だが俯いていればその時は下しか見えない。そうした状況だというのだ。 
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