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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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別世界より⑤

<グランバニア>

リュカ国王陛下が本に吸い込まれてから早1年…
現在グランバニアでは、娘の1人…リュリュが代理女王を務め国政を安定させている。
更にはラインハットへ嫁いだ娘のポピーが、臨時宰相としてリュリュとコンビで国家を壟断している状況だ!
そんな2人の前に、本日も貴族の面々が、不平を抱えて謁見に訪れている。


「女王陛下におきましては、本日もご機嫌麗しゅう…日々お美しくなっております様で、私共も我が事の様に嬉しく存じます!」
「あ、ありがとうございます…」
「いえいえ、礼など…私めは本心「うっさいわね!早く本題に入りなさいよバカ!」
貴族のゴマスリを一刀両断に断ち切るポピー…10人程集まっている貴族達に、一斉に睨まれている。
尤も本人は全く気にしてないが。
「し、失礼しました…」
畏まり頭を垂れながらも、口の中では悪態を吐く貴族達…

今、謁見の間には貴族以外にも多くの人物が存在する…
貴族達の正面…玉座にちょこんと座っているのが、父リュカの代わりに女王の大役をこなしているリュリュ。
そしてリュリュから見て、左側1歩後方にアクデンが鬼の形相で立ち、右側1歩後方にバトラーが周囲を隈無く睨み付ける…
更にアクデンの左には、国務大臣のオジロンと軍のトップ…軍務大臣のピピンが佇んでいる。
玉座の直ぐ右には、臨時宰相のポピーが居り、その右には彼女の警護役のプックルが貴族達に向け、牙をむいて睨んでいる。
彼等モンスターズが威嚇し続けてるのはワザとで、案の定臨時宰相様の指示なのだ!
これにより、思慮の足りない者達が、彼女等(主にリュリュ)に不埒な振る舞いをする事のない様に牽制しているのだ。

「それで…本日はどの様な事で謁見を?」
リュリュがポピーとは正反対の、女神の様な優しさで話しかけると…
「は、はい!実は…先日、急遽通達があった、我々貴族に対する大幅な増税の事で、意見具申を致したく、陛下のお時間を頂戴したのであります」
「お、大幅な増税…?」
貴族達の『増税』の言葉を聞き、驚きポピーを見つめるリュリュ。

「左様でございます陛下!…いくら陛下のお達しでも、何ら理由のない増税はご無体すぎます!何卒、ご再考をお願い致します」
「ポピーちゃんがやったの…増税を…」
「そうよ…」
不意にリュリュがポピーを詰問する…そしてあっさりと認めるポピー。
貴族達は唖然と見つめている。

「どうしてそんな事を!?」
「だって…欲しい洋服が沢山あるんだもん!」
ポピーは天使の様な微笑みで、悪びれもせず答える。
「そ、そんな理由で増税しないでよ!国家を私物化しちゃダメなんだからね!」
「何よ!そいつ等だって、自分たちの贅沢の為に、領民から重税を強いてるじゃない!同じ事をしたまでよ…」

「こ、根拠のない誹謗は止めて頂きたい!」
ポピーの言葉に皆が唖然とする中、1人の貴族が声を荒げて反論した。
「はん!根拠がないぃ~?…根拠なら此処にあるわよ!(バシン!)」
ポピーは自身の隣に置いてあるテーブルから、1冊のファイルを左手に取り、右手で叩きながら言い切った。

「私が何も調べないで居ると思ったワケ?あま~い!アンタ等の身勝手な行いなど、ちょっと調べれば直ぐ見つかる物なのよ!」
テーブルの上には、他にもファイルが何冊も…
声を荒げた貴族以外も、徐に動揺している。
「このファイルが領民達の手に渡れば、次の日には武器を片手に屋敷へ雪崩れ込んで来るんじゃない?うふふふふ…楽しみだわぁ~」
ポピーの無邪気な微笑みに、貴族の誰もが恐怖する!

「た、確かに…少しばかり贅沢な暮らしをしてましたが…こ、これからは違いますぞ!我ら貴族は、領民達の為を思い、質素倹約…無駄を省いた暮らしを志すつもりなのです!で、ですから陛下…何卒…此度の増税は…ご再考の程を…何卒!!」
集まった貴族全員が、床に平伏しリュリュに増税中止を懇願する。
「ポピーちゃん…皆さんもこう言ってますし…これから良い子になると言ってますから…増税は止めにしてあげよ…ね?」

可愛い口調で優しくポピーを見つめるリュリュと、厳しい瞳で貴族達を睨み続けるポピー…
そして、暫くの沈黙の末ポピーが発した言葉は…
「はぁ………仕方ないか…陛下がそう言うのなら…今回は見送ります…」
安堵の表情で顔を上げる貴族達…
中には泣きながらリュリュに感謝の言葉を述べる者も…

「良かったですね皆さん。…でも、これからは領民の方達を苦しめてはダメですよ!」
リュリュが悪戯っ子を叱る様な口調で、貴族等にダメ出しをする。
今の貴族等には効果は十分だった。
悪魔の様な宰相から、自分たちを救ってくれた女王陛下に、感謝の心と絶対的な忠誠心が植え付けられる。




全ての謁見も終わり、オジロンがポピーに近付き要求する。
「ポピー…そのファイルを見せてもらえるか?」
「勝手にどうぞ…」
ポピー横のテーブル上のファイルを手に取り、中を確認するオジロン…

「これは酷い…」
「オジロンどの…一体何が書かれているのですか?」
ピピンも近付き、ファイルを見て唸るオジロンに質問する。
「これを見れば分かる…このファイル、何も書かれてはおらん!とんだハッタリだ!」
「何と悪辣な…」
「陛下はご存じだったのですか?」
オジロンが玉座にちょこんと座り、紅茶を啜るリュリュに質問する。

「いいえ、ファイルの事は知りませんでした。でも流石ポピーちゃんですよね…細かい小道具で貴族さん達を苦しめるのですから」
「つまり…増税の事は知っていたと…?」

「………えぇ、まぁ………その事で、近日中に貴族さん等が押しかけてくるって…」
リュリュは申し訳なさそうに俯き、言葉尻を濁して行く…
「ポピー…最初から増税するつもりは無かったのだな?」
「当たり前でしょ!増税する根拠が無いし、連中の横暴も分かっているけど立証出来ないし…でも、どうせ碌な事してないから、罠にかけるには十分だったでしょ♥」
天使の様な微笑みをオジロン達に振りまくポピー。
見た目と違って腹黒い…


「でも…お父さんって凄いわね!毎日こんな事をしてるのでしょう?」
「リュリュ違うわよ…お父さんは、今のリュリュと私…それと護衛モンスター達の仕事を、纏めて1人で行っているのよ!本当に凄いんだから!」
リュカの娘2人は、些か興奮気味に父の事を話し合う。
「うん!本当に凄いわぁ…でもね、だとすると不安が1つあるんだけど…」
「………あるわねぇ………」
リュリュとポピーが溜息混じりで呟いた。

「ふ、不安とは何だ!?」
「あのねオジロン様…お父さんがやっている王様の仕事って、凄く大変なの。正直言ってティミー君に出来るのかな…って」
室内に沈黙が流れる…
リュカの唯一の息子…ただ1人の跡取り…それがティミーだ。

今は考えても仕方ない。
話題を出したリュリュも、質問したオジロンも、その答えを探る事に恐怖を憶え沈黙する。
今は目の前にある危機を乗り越えなくてはならない。
未来の事は後で考えるのだ!



 
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