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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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愛の思い出

<オリビアの岬>

アルル一行は、ダーマ神殿の遙か北に流れる、海廊を進みオリビアの岬を通過しようとしている。
「何で此処は『オリビアの岬』って言うの?…どっかで聞いた事ある名前なんだけど?何処で知り合った女性だったかなぁ…『オリビア』って?」
不意にリュカが、誰にともなく呟いた。

「お父さん…忘れちゃったの!?モニカさんと幽霊船のエリックさんの話を!」
マリーは父に、幽霊船で手に入れた『愛の思い出』を見せ思い出させる。
「あぁそうか!幽霊船で聞いた名前だったか!…何処でナンパした女性だったか考えちゃったよぉ!」
「何で女性の事を思い出すのに、ナンパの記憶を手繰るんですか!?」
ティミーが呆れ顔でツッコミを入れる。
「流石リュカさん!常人とは思考回路が違いますね!」
「いや~…そんなに褒めるなよ!」
義息の嫌味も軽く躱し、彼を中心にヌルい空気が蔓延する。


しかし異変は突如訪れる!
『オリビアの岬』を通り抜ける直前、何処からともなく悲しげな歌が聞こえ、急に海流が乱れ出す!
そして乱れた海流は、アルル達の船を進行方向逆へと押し戻す!
突然後退を始めた船上では、皆がバランスを崩し前のめりに倒れ込む。
高所で作業をしていた者などは、勢い良く落下し大怪我を負ってしまう!


船はオリビアの岬進入直前まで戻されて止まった…
「な、何なんだ!?…今の現象は何なんだよ!!」
転倒時に頭を強打したらしく、血を流しながらカンダタは吠える。
周囲を見渡し、誰かに答えを求めている。
だが誰も答えない…答えなど分からないから…

そして気付くと視線はリュカに…
彼なら何かしら解決策を見いだすと思っているのだ。
そのリュカは、船が逆送した時にバランスを崩したビアンカを抱き抱え守り、そして今は怪我がないかを確認している。

「な、なぁ、旦那…今の何なんだ!?何であんな事になるんだ?」
リュカはビアンカの身体の隅々を見て、怪我がない事を確認すると、念のためベホマを唱えると言い放つ。
「知らん!」
そして次にマリー・アルル・ティミー・ウルフ・ハツキと、各々にベホマを唱えて回る。

「モ、モニカ…お前は何か知ってるか?」
リュカに冷たくあしらわれ、仕方なくモニカへと縋るカンダタ…
「さ、さぁ…ただ、もしかすると以前話した幽霊船の…関連かも…」
モニカは確たる自信が無い為、言葉を濁しながら話す。
それは以前話した、幽霊船に纏わるエリックとオリビアの、悲運の物語の事だ。

「此処は…オリビアの岬って名前だろ…オリビアは此処で自殺をしたのかも…」
「その通りですわモニカさん!此処は間違いなくオリビアさんが自殺した場所です!だからその呪いで先程の様な現象が起こったのですわ!」
急に大声で喋るマリーに、皆が驚き注目する。

「何でオリビアは僕等に呪いをかけるんだ?関係ねぇーだろ!」
リュカはビアンカが怪我をしそうだったので、結構ご立腹の様子。
「いえいえ…私達に呪いをかけたのではなく、この海域を通る船に対し呪いをかけてるんですよ」
「何で!?」
「愛した男性を、船の事故で喪った悲しみから、船全てを呪っているのでしょう…」
マリーは自分の胸の前で両手を握り締め、切なそうに語り溜息を吐く。

「八つ当たりじゃねぇーか!イタい女だな!」
「お、お父さん………」
ガックリ項垂れるマリー。
やはり敵わない様だ…


「しかしコレじゃ先に進めないぞ!この先に『祠の牢獄』があるというのに…」
「モニカさん!その点は大丈夫です…ですから、もう1度船をオリビアの岬へ進めて下さい!」
マリーは幽霊船で手に入れたペンダント…『愛の思い出』を握り締めながら、モニカ船長に前進を促す。
モニカはマリーの自信に満ちた表情を信じ、再度船をオリビアの岬へと進めた。

船は進み、オリビアの岬を抜ける直前、またも悲しげな歌が聞こえ、海流に乱れが生じる。
船上の誰もが、船の急な後退に身構えるが…
「オリビアさ~ん!エリックさんからの愛のメッセージを届けに来ました!この『愛の思い出』を受け取って下さい!!」
マリーは『愛の思い出を』天高く掲げ、オリビアに語りかけている!

すると、周囲に響いていた悲しげな歌が止み、マリーの前に男と女の幽霊らしき人物が現れ見つめ合っている。
『ああ、エリック!私の愛しき人…貴方をずっと待ってたわ…』
『オリビア…僕のオリビア!もう君を離さない!』
『エリック!』『オリビア!』
エリックとオリビアは抱き合い、そして消えていった…


我に返ると、辺りは静けさを取り戻しており、船はオリビアの岬を通過していた…
「よ、良かったですね…愛し合う2人が一緒になれて…」
皆が呆然とする中、マリーは何とか先程の事をキレイに纏める。

「勝手だなぁ…散々迷惑かけておいて、詫びの一言もなく消えていったよアイツ等!」
「父さん…幽霊相手に無茶言わないで下さいよ…」
まだ惚けている面々の中で、この親子だけが事態の評価を下していた。
「ま、まぁ…これで先に進めるわけだし…良いじゃないですか!?」
パーティーリーダがその場を纏め、次なるステップへの移行を促した。
そして船は祠の牢獄周辺を航行する。


「それにしても…」
不意にティミーがマリーに向けて疑問を問う。
「何でマリーは、この『オリビアの岬』に呪いが掛かっている事を知ってたんだ?そうじゃなきゃ『愛の思い出』を探しに、ワザワザ幽霊船まで行かなかっただろう!何故だい?」
ティミーとしては至極当然な疑問である。
別に妹の事を勘ぐるつもりは微塵もない。
しかしマリーにしてみれば、自分が転生者である事の説明や、此処が本来物語の世界である事の説明をするのは避けたい所…
誰もが、自分たちは物語の住人であると言われれば、良い気分では無いはずだ!

「え…え~とですねぇ…コレはですねぇ…その~…」
堪らずリュカに目で助けを求めた。
「はぁ…ヤレヤレだな…」
リュカの溜息混じりの言葉に、思わず反応したのはティミー…
「何ですか!?何なんですか、その呆れる様な溜息は!?」

「ティミー、よく聞け!情報というのは、何気ない雑談の中にも含まれているんだ!マリーは数々の情報を選別し、今回の事件解決の結論に至ったんだ!」
「ど、どんな情報があったと言うんですか!?」
年端もない妹が手に入れる事が出来た情報を、自分は手に入れられなかったと言われた気がして、ついムキになってしまっている。

「以前、モニカが幽霊船の逸話を話してくれたろ…そこには『エリック』と『オリビア』の名前も出てきたはずだ。そして地図を見れば、『オリビアの岬』と記載があり、幽霊船では、現世に名残を残して彷徨うエリックの幽霊が…後はちょっと推理すれば、自ずと答えが導き出せる!」
リュカの言葉に周囲からは感嘆の溜息が聞こえてくる。

「し、しかし…マリーは、モニカさんから幽霊船の逸話を聞く前から、幽霊船探しを望んでましたよ!矛盾しませんか?」
「その考え方は愚かだ!最初は単なる偶然だっただけだろう…ただ幽霊船を見てみたいだけだったのが、何時しか重要な手懸かりになっていただけだよ…だからこそ、幽霊船探しの重要性を、みんなに詳しく説明出来なかったんだ。後から重要性を説いても、ただの興味本位に正当性を持たせているようにしか見えないからね」
誰もが言葉を失った…
リュカの説明により、マリーの知能の高さが露わになった。
皆が呆然とマリーを見つめる…
マリーは、ただぼけっと父親を見つめる事しか出来なかった。



 
 

 
後書き
やっと100話まで更新できました。
そんなワケ(どんなワケ?)で、次話はリュリュちゃん登場!
勿論ポピー様も♥ 
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