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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第7章 日常編
  第32話 記憶

マカロフからの依頼で、倉庫の整理をしているナツ、グレイ、ルーシィ、エルザ、ミラ、カグラ、ウルティア、ジュビア、ウェンディ、ハッピー、シャルルは、乱雑に置かれている資料を区別するなどして整理に明け暮れていた。
そんな中、ナツは梯子に上って本の整理をしているルーシィを見上げるようにしてボケッとした表情を浮かべていた。
「もーう!何で私までこんなことしなきゃいけないの!!」
ルーシィの叫びを聞き、周りにいたメンバーが反応を示す。しかし、ナツのボケッとした表情は変わらずであった。
「暴れると危ないよ…」
「つか、パンツ丸見えだぞ…」
「見るな!」
「グ、グレイ様にパンツを見せつけるなんて…やはり恋敵!!」
ハッピー、グレイ、ルーシィ、ジュビアがそれぞれ会話をする様子が見られる。エルザは、そんな会話を聞いてか知らずか、大量の本を持ち上げながら口を開く。
「仕方なかろう。これまでに街の建物を壊したり、一般人に被害を出したりしてきたんだ。むしろこれくらいですんでよかったではないか」
「いや、壊してるの全部あんたらだけどね…」
「私とウルティア、ウェンディを一緒にしないで」
エルザの言葉に、ウルティアとカグラが異議を唱える。
「わ、私は皆さんのお役に立てれば全然かまいません…」
「ほんっと、お人よしよね、あんた」
ウェンディは当初マスターから倉庫の片づけを依頼されていなかったが、自分から手伝いますと名乗り出たのだ。そしてシャルルはそんなウェンディについていく形で手伝うことになった。
そんな風に会話を繰り広げているが、それでもナツの表情に変わりはなく、じーっとルーシィのパンツを眺めているような視線を崩さない。
「あんたはいつまでパンツ見てんのよっ!!」
「なにかたりねぇ…」
「あ?」
「仕事量だ」
「なんで一番壊してるあんたがさぼってんのよ」
「真面目にやれ」
ルーシィ、ナツ、グレイ、エルザ、ウルティア、カグラが会話を繰り広げる。
「んー…」
「ナツさん、マフラーじゃありませんか?」
「それだ!上に置いてきちまったか…今日は朝からボーっとしてたからなー…」
ジュビアの言葉に、ナツは思い出したように声を上げた。ナツが頭を掻きながら言葉を続けると、ナツの右の首元に傷があるのをルーシィが発見する。
「ん?…前から気になってたんだけど、ナツのその傷ってなんの傷?」
「そういやおれもしらねーな」
「気付いたらついてたわよね」
「私も知らないな…」
「ナツ、もしかして話せないこと?」
ルーシィの疑問に、グレイ、ミラ、エルザ、ハッピーが口を開く。ハッピーの言葉を皮切りに、ナツは思い出したくない過去を思い出したようにしゃがみこんで震え始める。
「お、思い出したくもねー…」
「ナツさんが沈んでる…」
ナツのそんな様子を見て、ウェンディが驚きを見せる。
「あいつは悪魔だー…俺はあんな恐ろしいやつにはあったことがねー…」
「なに!?」
「ナツがビビるほどの奴だと!!」
「そんなことが…」
「それって…あ…」
ナツのこれまでにない様子に、エルザ、グレイ、ミラ、ルーシィが驚きの様子を見せる。そんな風に驚いていたメンバーであったが、その拍子に梯子に上っていたルーシィが体制を崩し、梯子ごと落下してしまう。
「ルーシィ!危ない!」
「キャーッ!!」
ハッピーの言葉と共に、ルーシィの悲鳴が轟く中、皆がルーシィを支えようとスライディングをかましながら支えようとする。
そのかいあってか、ルーシィが地面と衝撃することは避けられたが、皆が折り重なり、饅頭のような様相を見せる。その衝撃で一冊の本が棚から落下し、開いた状態で地面に落下する。と同時に、その本が眩い紫色の光を発する。
「な、なんだ!」
「本が…」
「光ってます!」
グレイ、エルザ、ウェンディが口々にそれを確認すると、倉庫全体がその光に包まれ、その場にいる全員が悲鳴をあげるに至った。

本の光が徐々に薄まっていくのを見たナツ達は、次第に周りの状況を認識するに至る。
「なんだったんだ、一体…」
「ん?」
「あれ?」
「私たち、なぜ外にいるのでしょう…」
カグラ、グレイ、ルーシィ、ジュビアが先ほどまでいた倉庫から急に外にいることに驚きの声を上げるが、その後すぐにハッピーが叫んだことにより、その考えは消し飛ぶことになる。
「それだけじゃないよ!見て!!」
ハッピーはギルドの方へと皆の意識を向けさせる。そして、皆がギルドの方へ視線を移すと更なる衝撃が待っていた。
「ギ、ギルドが昔に戻ってる!!」
「ど、どうなってんだ…一体…」
「これは…」
「この本のせいなのか…」
ナツ、グレイ、ウルティア、エルザが狼狽したように声を発した。そんな風に驚いていると、昔のギルドの入り口から、3人の人影が歩み寄ってくるのが分かった。
「誰かでてきた!」
「ん?」
「一先ず隠れるぞ」
ルーシィがそれに気づき、ナツが誰か確認しようとするが、カグラの提案もあり、皆がギルドの正面にある資材置き場に身をひそめる。
そうしてギルドの入り口をジーッと眺めていると、先ほどの3人の人影の顔が見えてきた。なんと、子ども時代のエルザ、ナツ、グレイの姿であった。
どうやら、ギルド前で勝負をしようとしているらしく、子ナツと子グレイが子エルザに殴り掛かるが子エルザの圧勝という結果で終わる。そんな様子を見ていたナツ達が呆然とそれを見ていた。
「な、なにこれ…」
「小さいエルザさんに…ナツさんにグレイさん…」
「子どものグレイ様…とっても可愛いですわ…」
「これ、もしかして私たち…」
「過去の世界に来たってこと?」
「ま、まさかそんなことが…」
ルーシィ、ウェンディ、ジュビア、ミラ、ウルティア、カグラが口々に小さく呟く。
「どうした?もう終わりか?」
地面に伏してぴくぴく震えている子ナツと子グレイに、子エルザが挑発するように言葉を発する。
「過去…そんなまさか…」
「本当に過去の世界ってことー!」
ルーシィとハッピーが驚愕の表情を浮かべる。しかし、そんな驚きをかき消すような声が響く。
「「小さい俺に何しやがる!エルザ!!」」
「えー!もう順応してる!!」
ナツとグレイがエルザに食って掛かり、それにルーシィがツッコミを入れるが、エルザはそれを気に留めることなく子ナツたちを眺めている。
「あら、どうしたのエルザ?」
「大丈夫?」
ミラとウルティアが心配そうにエルザを眺めている。すると、エルザは頬に赤みを浮かべながら言葉を発した。
「私はこの日を覚えているぞ。立て、立ち上がるんだ。幼い私がこの直後に言う言葉だ。そして…」
それを聞いたナツとグレイは、同じように頬を赤らめて様子を伺う。だが、それはナツとグレイの想像していたものとは違い、思いっきり蹴りをかまし、2人をどつく様な言い回しであった。「全然イントネーションが違うだろ!!」とエルザにツッコミを入れる2人に、エルザは「むぅ…」と少し反省したような表情を見せる。だが、その直後にエルザは更に顔を赤らめる。
「違うんだ…大事なのはここからで…」
エルザが少しもじもじして見せると、ギルドから1人の人影が出てくる。その人物は子エルザの後ろに回ると、コツンと頭をこづいてきた。
「ほれ、エルザ。あんまり2人いじめてやるな、可哀そうだろ」
「だ、だって…」
子エルザはその人物を見ると、先ほどまでの威勢のよさはどこへやら…。恋する乙女のような表情と声になっていた。
そんな様子を見ていた現代組も目を見開いて驚く。
「おい、あれって…」
「アレン…だよな?」
「うっそ…わっか…」
「か、かっこいいね。シャルル」
「悪くないわね…」
「グレイ様を気遣うアレンさん…素敵ですわ…」
「あらあら、若々しいわね…」
「か、かっこいいな…」
「間違いないわね…」
「あれが若いころのアレンなのか…」
ナツ、グレイ、ルーシィ、ウェンディ、シャルル、ジュビア、ミラ、カグラ、ウルティア、ハッピーが口々に呟く。
「ケーキなら俺が買ってやるから、そう怒るな」
「ほ、ほんと!!やったー!…でも、ケーキを食べたのは許せない!」
アレンの慰めを受け入れつつも、子エルザは子ナツと子グレイをキッと睨むつける。そんな睨みに、2人はビクッと身体を震わせながらも、反論する。
「お、俺は食ってねーよ、アレン」
「俺もだ、アレンさん」
子ナツと子グレイは子エルザに睨み返すように詰め寄る。
「ほれ!まーた喧嘩始まるだろうが…それに、ケーキを食ったのは多分別の奴だ」
「そ、それは誰なんだ?」
アレンはエルザの問いかけに答えるように、ギルドの入り口に向けて声を張り上げる。
「おい!!ミラ!!!こっちこい!!!!」
その声に、現代ミラがビクッと身体を震わせる。
「あ、あたしじゃないよね…」
「そういえば、犯人はお前だったな、ミラ!」
「やだー、昔のことじゃない」
エルザが不穏な空気を醸し出すが、ミラが宥めつつ事の経緯を見守る。
「な、なんだよ、アレンさん…そんな大きい声で…」
怒号の如き声で呼ばれた子ミラは少し怯えた様子でギルドから出てくる。
「あー、やっぱり昔のミラさんってあんな感じだったんだ…」
「今と全く違いますね…」
ルーシィとウェンディが少し引き気味に子ミラを見つめる。
「あら、そんなことないわよ」
「「「「「「「「「「いや、ある」」」」」」」」」
「ううー…」
全員から完璧な否定を受け、ミラはポロポロと涙を流す。すると、アレンがミラの額にデコピンをして声を掛ける。
「お前だろ、エルザのケーキ勝手に食ったのは」
「いてっ…わ、わるかったよ…」
アレンにデコピンされた子ミラは、少し顔を赤らめ、額を擦りながら呟く。
「謝るのは俺じゃないだろ?」
「…悪かった、エルザ」
アレンの言葉に、渋々といった様子で子ミラは子エルザに謝罪する。
「んで、エルザ。お前はナツとグレイに謝んないとな?」
「うっ…その、疑って悪かった…」
エルザも、アレンに言われ、気恥ずかしそうに呟く。
「ほら!だから言ったろ!!俺じゃねーって…いって!!」
子ナツが子エルザに詰め寄るが、アレンの軽い拳骨がその言葉を止める。
「お前も素直にいいよっていえねーのか」
「だってよ!…わかったよ、許してやんよ」
「もういいぜ、俺も」
子ナツは悔しそうに、子グレイは特に気にしてなさそうにエルザの謝罪を受け入れる。その様子を見て、アレンは4人の頭をくしゃっと強めに撫でる。
「良し、んじゃ仲直りも済んだし、皆でケーキ買いに…うおっ!」
アレンの言葉は、ギルドから飛び出してきた小さな影2つによって遮られる。
「エルザやミラだけずるい!私も行く!」
「私もケーキ食べたいよ、アレンさん!」
登場を果たしたのは、子ウルティアと子カグラであった。その登場を機に、現代のウルティアとカグラが口をポカーンと開けて固まる。
「お2人は、幼少期の頃の方がアレンさんに積極的だったんですね」
「カグラさん、とても小さくて可愛いですね…」
ジュビアとウェンディの言葉に、2人は顔を真っ赤にして言い訳を口にする。
「い、いや、ほら、当時は小さかったし…」
「その、恥じらいがあまりなかったというか…」
「ふふっ!嘘ばっかり…」
「「あんたには言われたくないわ!ミラ!!」」
2人はミラにからかわれたことで、激高して声を上げる。
「ってちょっと、そんな大きな声出したら…やばっ、伏せて伏せて!」
余りにも大きな声であったため、過去のアレンに気付かれそうになり、思わず身を隠す。アレンはこっちを不思議そうに見つめているが、子エルザ達にケーキを急かされたために、特に見つかることなくその場をやり過ごす。
「あ、危なかったわね…」
「アレンさんのことになると周りが見えなくなるのは、皆さんの悪い癖ですね…」
「…それ、そのまま主語をグレイにしてお返しするわ」
ルーシィがホッとしているのも束の間、ジュビアとウルティアの攻防が始まる。
「そこまでだ!呑気に観察している場合ではないぞ…急ぎ元の世界に戻る方法を探さねば…」
エルザが真剣な表情で答えるが、ナツとグレイは知ったことないような様子であった。
「なーんで、いいじゃん別に。面白そうだからもう少し見ていこうぜ」
「そいつはいい」
そんな2人の様子に、ウルティアが呆れた様子で口を開く。
「バカッ…タイムパラドックスという言葉を知らないの?」
「タイムパラドックス?」
「確か、過去は現代に影響を与えるっていうものよね?」
「過去で何かをしたことで、未来が変わってしまう、というものね」
「逆説の理論ね…」
「もしここが、本当に過去の世界だとしたら、私たちが何かをしたことで未来が変わってしまうということか」
ハッピーが首を傾げると、ウルティア、ミラ、シャルル、カグラがそれぞれ口々に言葉を発する。そうしてあからさまに何かをやらかしそうな2人にエルザは声を掛ける。
「いいか、ナツ、グレイ…ッ!」
だが、そこにはすでに2人の姿はなく、ぽっかりと空間が開いていた。
「もういないし!!」
「あ、あらあら…ハッピーまで…」
ルーシィとミラが呆れた様子で口を開く。他のメンバーも、開いた口が塞がらない様子であった。
「なっ…あのバカ…」
「ここまでばかだったとは…」
ウルティアとカグラが額に怒りのマークを浮かばせながらピクピクと震えている。
「ルーシィ、ジュビア、ウェンディ、シャルルはあいつらを探してくるんだ!残りは私と一緒に本の解読だ!」
そうして、皆はそれぞれに過去の世界での捜索と解読に乗り出した。

ナツとグレイ含め、捜索隊と解読隊はもしもの時のために変装をして行動を始めた。ナツとグレイは現代である784年にはすでになかった川の土手の上で喧嘩を始める。それと相対するように、子ナツと子グレイも川の土手の下で喧嘩を始める。喧嘩の行方は、先に現代のナツとグレイが、子ナツと子グレイのどちらが勝つのかという論争に変わり、2人の喧嘩の行方を見届ける形となった。子ナツも子グレイもどちらも拮抗した戦いを見せていたが、僅差でグレイが勝利することとなり、子ナツは土手下で気絶、ナツは土手上で放心状態となった。そんなナツを放るようにして、グレイとハッピーはエルザ達の元へと戻っていった。

エルザ達は、魔導書『メモリーデイズ』という本の解析に成功した。この本、開いたときに一番思い出そうとした時代へと飛ぶ魔導書であった。この778年の時代に飛んだのは、ナツが首の傷を思い出そうとしていたことがその所作である。そして、本来この魔法は思い出した本人のみに有効であったが、饅頭のように重なり合っている状況下では、皆がナツに触れている状態であったがために、関係のないエルザ達まで巻き込まれたという形となった。
そして、この魔導書の有効時間は6時間であり、これを過ぎると強制的に魔導書の魔法が発動し、現代へ強制的に帰ることとなる。しかし、その時に帰れるのは本人だけであり、他のものは魔導書の発動の瞬間にナツに触れていなければ帰れないというものであった。
そのため、グレイとハッピーと合流したエルザ達は、急ぎナツのいる川の土手へと向かっていた。

ナツは、子どもの自分が負けたことが受け入れられず、土手下で伸びている子ども時代の自分を叩き起こし、グレイを追いかけるように怒号を飛ばす。子ナツはそんなナツの怒号に目を覚ますが、ナツも先ほどまでグレイと殴り合っていたこともあり、顔がパンパンに張れていたために、悪魔のような形相となっていた。子ナツは恐怖で魔法を用いてナツを攻撃するが、子ナツの攻撃はナツに簡単にあしらわれ、その衝撃によって自身の首を傷つけてしまう結果となった。そう、つまり、ナツの首の傷、引いては恐ろしい悪魔とは自分自身であり、傷をつけたのは未来の自分だったのだ。そのことに気付いたナツは、謎の納得感を得ていたが、後ろから鬼の形相で走ってくるエルザ達によってその思考が停止する。子ナツは、自分の名前を叫びながら迫ってくる珍妙な集団に更なる恐怖を覚え、マフラーを拾い上げて逃走する。エルザ達はナツに襲い掛かるようにして乗りかかる。これで魔導書が発動すれば無事に現代に帰れる…はずであったが…。

エルザ達は、ナツに覆いかぶさった後、数秒の沈黙の後、時代の変化が訪れないことに、疑問の様子を浮かべていた。皆で顔を見合わせるが、特に変化はない。そんな折、エルザの顔が青白くなっているのを見る。
「す、すまん。焦っていたせいで、魔導書を…落としてしまった…」
エルザの言葉に、皆の顔が驚愕に包まれる。
「ちょ、ちょっと!魔導書が近くになかったら、いくらナツに触れてても意味ないじゃない!」
「なにしてんだ!エルザ!!」
「どうするんですかー」
ウルティア、グレイ、ウェンディが抗議の声を上げたその時、後ろから男の声が聞こえた。
「落し物はこれだろ?エルザ」
エルザは名前を呼ばれたため、後ろを振り向く。すると、自分の方に向かって魔導書が降ってくるのが見えた。
「おおっ!これだ!どこの誰だか知らんがたす…」
エルザはその人物の顔を見て、目を見開く。他のメンバーも驚いた様子であった。
「ほう?やっぱりエルザ達だったのか…さしずめ、未来から来たってところかな?」
「「「「「「「「「ア…アレン(さん)…」」」」」」」」」」
アレンは名前を呼ばれるのと同時に、土手を駆け下りながらエルザ達の元へと向かっていく。
「ははっ!なんだ、一丁前に呼び捨てで呼ぶようになったのか?」
アレンの言葉に、ウルティアが言い訳するように口を開いた。
「な、何のことかしら…私たちはあんたの知ってる…」
「ばーか、俺がお前らのことわからないとでも思ってんのか?エルザに、ミラ、カグラ、ウルティ、ナツ、グレイ…金髪の女の子と、青髪くるくるの子と小さい青髪と猫2匹は知らんけど、まあ、さしずめ未来のフェアリーテイルの仲間だろ?…紋章も入ってるし…」
アレンの言葉に、ウルティアは打つ手なしと言った様子で言葉を詰まらせる。そんな様子を察したエルザが、意を決してアレンに声を掛ける。
「そうだ。私たちはこの時代から7年後のフェアリーテイルから来た」
「あら、バレちゃったわね」
「はぁ、さすがアレン、敵わないな」
エルザの言葉に、ミラとカグラ諦めて肯定する。
「ほう?7年前か…なるほどな。まあ、その魔導書があれば無事に帰れるんだろ?」
「ああ、感謝する」
エルザは短くアレンに呟くと、アレンがふっと笑いを浮かべる。そんなアレンの様子に、エルザは怪訝な様子を浮かべる。
「な、何がおかしい?」
「いや、やっぱりエルザはエルザだなと…。しかし、7年で男連中はこんなにかっこよくなって、女連中はこんなに可愛くなってると来たもんだ。未来の俺が羨ましいな。ああ、もちろん、今の…あーと、子ども時代のお前らも大好きだけどな。未来のお前ら、特に女連中は子どもとして見れないくらい成長しちまうんだな」
アレンは嬉しそうに笑いかけて、皆を見つめる。そんな言葉を掛けられたナツとグレイは感動で頬を緩め、女連中は嬉しさと恥ずかしさで顔を真っ赤に染める。
「そ、それを…未来で行って欲しい…」
「女として見てくれている…ということか…」
ウルティアとカグラが聞こえないくらいの小さな声で呟く。
「あー、でもあれか、今の俺が27歳だから、7年後って言うと20歳手前くらいだろ?歳が実際よりも7年分近くなってるから恋愛対象として見れてるってだけかな?…まあ、よくわからねーが。…それに、もう一つ嬉しい情報があった」
先のアレンの言葉による感動と嬉しさで、全く言葉が入ってこない6人と、アレンの若かりし頃の姿に見惚れている3人と2匹であったが、次の言葉に一気に現実に引き戻される。
「俺の姿を見て、そこまで驚かないってことは、7年後も俺は無事に生きてるってことだな…。これで心置きなく、明日から100年クエストと黒龍討伐に迎えるってもんだ!」
アレンの言葉を聞き、その場にいるもの全員がひゅっと息を漏らす。そう、7年後、現代から来た11人は知っているからだ。これから、アレンがどのような道を歩むのか。だからこそ、聡明であるエルザが、タイムパラドックスという危険性を忘れてしまうくらいに狼狽して口を開いた。もしかしたら、今ここで未来のアレンに起こることを話せば、それを防げるのではないかと、そう思ってしまった。
「ア…アレン!違うんだ!アレンは黒龍と戦って…」「エルザ!!!!」
エルザの言葉は、ウルティアの怒号によってかき消される。
「ッ!気持ちはわかるけど、ダメよ…。もしかしたら、歴史が変わっちゃうかもしれない…」
ウルティアの言葉に、エルザだけでなく、皆が苦悶の表情を見せる。そんな様子を見ていたアレンは、何かを察したように微笑を浮かべる。
「なるほど…どうやら、無事は無事でも、紆余曲折…あったみたいだな…」
アレンの言葉に、皆の苦悶の表情は更に深みを増す。だが、アレンはそれを覆すようにケラケラと笑う。
「なるほどな!ここで未来のお前らに忠告されたから、未来の俺は無事に帰れたってわけか…未来の俺は無事だが、無事じゃない…。それを今俺はここで知れた。知れなかったら、本当に死んじまってたかもな、未来の俺は…。命の恩人だな、お前たちは」
アレンの言葉に、皆が目を見開く。それと同時に、魔導書が光出す。皆は慌てた様子でナツの身体の一部に触れる。
「今日、ここで未来のお前らと会えてよかった…。未来の俺によろしくな…」
アレンの言葉に、皆がうっすらと涙を浮かべる。喜びの涙であろうか…何の涙なのかはわからなかったが、知らずと心は満たされていた。そんななか、ミラが小さくアレンへと呟いた。
「黒竜に…空に…用心して…」
そう言い残して、ミラたち未来人は現代に戻っていった。
眩い紫色の光が消えたとき、アレンは魔導書が地面へと落下するのを見る。そして、あることに気付く。
「なるほど…ここで俺が魔導書を拾って、ギルドの倉庫かなんかにおいておくと、今から7年後にエルザ達が過去に飛ぶってことか…。よくできてるな…」
アレンは魔導書をゆっくりと拾い上げ、フェアリーテイルへと向かって歩き出した。

無事に現代へと戻ってきたエルザ達は、自身らに起こった出来事をギルドの皆に報告した。最初は中々信じてもらえなかったが、アレンと接触した話をしたことで、「7年前なら、アレンが覚えてるんじゃねーか!」という話になり、そこにタイミングよくアレンが登場したこともあり、アレンに問いただすこととなった。そこでアレンが、「ああ、覚えてるぞ。最初はエルザ達が急に大きくなったっと思ったからびっくりしたぜ!確かあれは…100年クエストに行く前日だったかな?」と、エルザ達が事の経緯を話してもいないのに全く同じ回答をしたことで、皆が信じるに至った。
その後、過去のアレンの発言もあり、少しでも女として見て貰えてると知ったエルザ達は、アレンに対するスキンシップがより増したことは言うまでもないだろう。
 
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