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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第4章 姉妹編
  第17話 姉妹

ギルド裏。ここはフェアリーテイルの所有する土地であり、建物もないような広大な平野である。故に、魔導士が戦いや修行をするにはもってこいの場所であった。
そんな場所に、ギルドのほぼ全員が集まっており、何かが始まるのを、今か今かと待ち望んでいた。その正体は、ヒノエとミノトのギルド加入に際し、実力試しということで、エルザvsヒノエ、ラクサスvsミノトの戦いであった。
まずは、先発としてエルザvsヒノエの戦いが始まろうとしていた。
「換装」
エルザがそう呟くと、エルザの身体は光に包まれる。その光が収まると、身体には黒い、それでいて露出部分の多い鎧が換装された。黒羽の鎧であった。
「アレンをもって強いと言わしめるその実力、とくと見せてもらうぞ!」
エルザはサーベルを思わせる剣を、ヒノエに向けて言い放った。
「黒羽の鎧!?エルザ、結構マジだな!」
ナツが興奮したように言葉を発した。
「あらあら、その魔法はアレンさんが使う魔法と同じですね?」
「ああそうだ」
ヒノエのおっとりとした声に、エルザは逆らうように太い声を出す。
「ふふっ!でしたら、私とも同じですね♪…換装」
「なにっ!!」
ヒノエが挑発するようにエルザに言葉を放つと、瞬時に武器を取り出した。
その武器は、百竜弓【有為転変】と呼ばれる弓であった。見ただけで、その性能の高さが分かる代物であった。
「まさか、あなたもザ・ナイトを…」
「ふふっ、奇遇ですね♪こちらは、百竜弓と呼ばれるものです」
エルザの驚きに、ヒノエはおどけて答える。
「エルザやアレンと同じ魔法か…それも相当な弓だぜ、ありゃ…」
「ああ…遠目でもわかるほどだな…」
グレイとリオンが困惑したように言葉を発した。皆、固唾を呑んで見守っていた。
「では、始めましょうか♪」「ああ」
こうして、エルザvsヒノエの手合わせが開始されることとなった。
エルザは、自身の黒羽の鎧の能力と、ヒノエが弓を使うということで、まずは接近を試みた。だが、それをヒノエの矢が妨害してくる。しかも、ヒノエの放つ矢が、想像以上の速度であったため驚く。だが、何とか剣で振り落とすことに成功する。そうしているのも束の間、今度は3本の矢が一斉に正面から襲ってきたため、回避を試みるが、間に合わず、鎧をかすめる。再度驚く。避けきれなかった1本が左肩の鎧を粉々に破壊し、更には羽部分をも貫く。
「なっ!!」
「あら、その鎧、強度は思ったほどなさそうですね♪」
エルザは驚くが、ヒノエの挑発的な言葉に、キッとヒノエを睨む。
「エルザの鎧を砕いた!!」
「…あの姉ちゃん、本当につえーぞ!」
「エルザの鎧をいとも簡単に…あんなのまともに喰らったらただじゃ済まないな…」
ナツ、カナ、ジェラールが驚き、声を発する。その声に呼応するように、ヒノエが一言呟く。
「あら、心配しなくても、きちんと急所は外しますわ♪」
「っく!なめるな!」
エルザは激高したように声を張り、ヒノエに肉薄する。エルザの持つ剣が届く範囲にまで迫った。
「あらっ!」
「はあっ!!」
エルザがその剣をヒノエへと振り下ろすが、ガキンッという音と共に、剣閃が遮られる。ヒノエが、弓の左側部分で、エルザの剣を止め切ったのだ。
「なにっ!」
エルザは、弓という武器の性質上、強度に劣るとみて、弓ごとヒノエを斬ろうと剣を振るった。だが、弓の強度は予想以上に高く、軽々と受け止められてしまった。
「その程度では、この弓は壊せませんよ?♪」
ヒノエは優しく語り掛けるように言うと、エルザの剣を押し返そうと弓に力をこめる。
「くっ!!」
余りの力強さに、エルザは全力で踏ん張る。だが、ヒノエの表情は全く変わっておらず、相変わらずおどけた様子であった。
「んー、これは実践ではありませんし、あまりやりすぎて怪我をさせてもいけませんから、そろそろ終わらせましょうか♪」
「な、なんだと!?」
ヒノエはそう言うと、一瞬表情を消し、思いっきりエルザを剣ごと押し返す。あまりの力に、エルザは後方に投げ飛ばされる。そして、ギルトの壁に激突する。
「ぐはっ!!」
壁へと押し返されたエルザは、痛みに息を漏らすが、それに驚く間もなく、無数の矢がエルザの元へと猛進してきた。
「っ!!」
エルザはその矢を避ける間もなく、気付いた時には「ガガガッ」といた矢が刺さる音が鳴り響く。そして、目を見開く。ヒノエから放たれた矢は、エルザの身体の輪郭を囲むように、綺麗に壁へと突き刺さっていた。そして、更なる驚きがエルザを襲った。自らの身体に肉薄する形で刺さっていた矢に驚いていた隙に、ヒノエがエルザの目の前へと迫っており、至近距離でエルザの頭を狙うように、一本の矢を穿とうとしていた。
「くそっ」
「ごめんなさい、あなたが本気になる前に終わらせてしまいました♪」
そういい終えると、弓の換装を解く。エルザを壁から引きはがそうと、支えるように手を差し伸べた。
「勝者!ヒノエ!!」
マカロフが勝負ありと判断し、勝者を宣言した。
その声と共に、フェアリーテイルのメンバーが歓声を上げる。
「「「「「「「「「「すげー!!」」」」」」」」」」
「あのエルザがあそこまで圧倒されるなんて!最後なんて全然見えなかった!」
「アレンの姉ちゃんってのはだてじゃねーね!漢だ!!」
「いや、違うだろ…」
ルーシィ、エルフマン、ビックスローが興奮したように声を上げた。
他の皆も、動揺し、興奮しきっていた。
エルザは、ヒノエに支えられて、矢の周りから無事に脱出した。
「っ!強いな、あなたは…」
「ふふっ!あなたが私の出方を伺っていたのが分かりましたので、そこを突かせていただきました♪」
エルザは自身の戦闘を見抜かれていたことを知り、思わず笑いが出てしまった。
「そうか、だが、負けは負けだ。素直に認めよう。それに、弓を壊すつもりで剣を振るったのは事実だ。実力不足に変わりはない」
「あらあら、自分に厳しんですわね…♪」
エルザの向上心にヒノエは感心しながら、声を発するが、言葉を一度止める。そして、エルザの耳元で小さく呟く。
「アレンさんにそっくり♪」
「っ///」
ヒノエに耳元でビックリするようなことを呟かれ、エルザは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
ヒノエの勝利に終わった手合わせを見ていたアレンは、ふっと苦笑いを浮かべた。
「さすがに、エルザ一人じゃ荷が重すぎたか…」
「さすが姉さまです。では、次は私の番ですね」
ミノトはそう言うと、ヒノエやエルザと交代するように、広場の真ん中に向かっていった。
それと同時に、アレンの後ろから声を掛けるものがいる。
「アレン、ミノトってのも、ヒノエと同じくらい強いのか?」
声の正体はラクサスであった。真剣な眼差しをアレンへと向ける。
「あー、まあ、相性もあるから何とも言えないが…同じくらいだと思っていいぞ」
「ほう?そりゃ楽しみだな…」
ラクサスはそう言い残し、ミノトと相対するように立つ。
「ラクサス様…でしたね。よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな」
ミノトの淡々としたしゃべりに、ラクサスも感情を込めずに言葉を放った。
「…先に申し上げておきますが、私は姉さまのように器用ではないので、うまく手加減が出来かねます。くれぐれもお気を付けください」
ミノトの言葉に、皆が呆気にとられる。それはそうであろう。ラクサスは、フェアリーテイルにおいて、アレンやギルダーツに次ぐ実力者。に、「気を付けて」とクールに言い放つなど、到底信じられないといった様子であった。
「はっ!上等じゃねえか!弱かったら承知しねえぞ」
ラクサスは体全体にバチバチッと雷を発生させ、威嚇する。
「では…換装」
ミノトの両手に、大きな光が生まれる。
「なっ!…もしかしらと思ったが…あんたも…」
ラクサスが驚きの表情を浮かべる。
「まさか、ミノトさんもザ・ナイトの魔法なの!?」
「ってことは、アレンとヒノエさん3人そろって同じ魔法ってことか…ゾ」
レヴィとソラノが声を上げる。他のメンバーに関しても、同じように驚いている様子であった。だが、それを上回る驚きが、皆を襲うことになる。
ミノトの換装によってもたらされた武器は、巨大な槍と盾であった。ミノトの見た目から想像もつかないような大きな武具に、皆が戸惑いを見せる。
「おいおい、そんなでけえの扱いきれるのか?」
「ご心配なく。ランスの扱いなら、アレン様より上です」
「ほう?そりゃあいい…んじゃ、始めるとするか!」
ラクサスはそう言うと、雷の特性を生かし、超スピードでミノトの後ろを取る。エルザのように様子見はしない、はじめから全力で戦うつもりであった。雷の拳でまずは一撃決めて…と思っていたが、ガンッという音と共に、ラクサスの拳は、その巨大な盾に阻まれる。
「早いですが、想像以上ではありません」
ミノトはそう言い、盾でラクサスの拳を押し戻す。
「っ!なにっ!」
ラクサスは押し戻されたことで、後退し、体勢を整える。
「あ、あのラクサスの攻撃を初手で防いだわ!」
「ラクサスのスピードに対応できるのか…」
ビスカとアルザックが戦いの様子を見て、感想を述べる。あれだけ、大きなランスと盾を装備し、ラクサスの攻撃に対応したその姿は、メンバー全員を驚かせるには十分であった。
「それでは、今度はこちらから参ります」
ミノトは、ランスをラクサスへと向け、攻撃を始めた。これはすごい戦いになると思ったメンバーは息をするのも忘れるくらい、静かに、夢中で見守っていた。

ラクサスとミノトの手合わせ。ラクサスは初手を防がれ、あまつさえ力で押し返されたことに驚きながらも、ミノトの攻撃に警戒をしていた。ランスという武器の性質上。突進してくると考えたラクサスは、ミノトの動きに注意を払う。
ラクサスの予想通り、ミノトは盾を構えつつ、ランスを構え、突進してきた。ここまではラクサスの予想通りであった。だが、予想外のことがあったのだ。そう、早すぎたのだ、突進が。それこそ、自身が雷の力を纏って動くときと同じくらいのスピードであった。思わず目を見開くが、驚いている暇はない。
すでに、ランスの先端がラクサスの胸を捉えようと迫っていた。ラクサスは魔力を解放し、身体をそらして何とかランスを擦れ擦れで避ける。そして、そのままミノトとの距離をとる。驚愕する。
ランスから飛び出した空気の塊といえば伝わるだろうか。それがなんと、ギルドの壁を突き破り、大穴を開けていた。皆も、驚きで口をポカーンと開けている。
「ちょっと、ミノト姉さん。ギルド壊したらダメだろ…」
「も、申し訳ございません…つい…」
アレンは呆れたように声を掛け、ミノトはしょんぼりとした様子それに答える。
「槍が触れてねえのに…壁が…」
「遠距離もいけるのか、あれ…」
ナツとエルフマンが壁に空いた大穴を見て、驚いた様子を見せる。だが、それ以上に、ラクサスは畏怖で冷や汗を流す。
「おいおい、冗談じゃねーぞ…」
先ほどのエルザの鎧を破壊したミノトの弓矢の攻撃とは、比べ物にならない威力のランスの攻撃に、ラクサスは命の危険を感じていた。
「人相手はあまり経験がないもので…やはり加減が難しく…避けてくださりありがとうございます」
ラクサスは、ミノトの発言に、怪訝な表情を浮かべながら、魔力を高める。そうして、一つの魔法を放った。
「レイジングボルト!」
凄まじい魔力を帯びた電撃が、空中を飛翔し、ミノトめがけて襲い掛かる。だが、ミノトはそれを避ける素振りを見せず、盾を構え、受け止める態勢をしていた。ラクサスの雷がミノトの盾に衝突する。だが、雷は盾と衝撃したのと同時に、盾を起点とし、四方へとはじき返される。
「くそっ!これも防がれるのか!」
ラクサスがミノトの盾を突破できないことが分かり、悪態をつく。
「この程度であれば、避ける必要はありませんね」
ミノトは雷が収まるのを確認し、盾を構えなおす。
「そうか…だったら…」
ラクサスは更に膨大な魔力を込める。身体の周りにはバチバチと圧倒的な雷が発生し、一つの魔法を生み出す。
「って、こら!ラクサス!さすがにそれは!」
ミラがラクサスの魔力を見て、驚いた声を上げる。
「…さすがにあれは、防ぎきれないですね」
ミノトは表情を変えずに言葉を発していたが、真剣さがにじみ出ていた。それほどに、警戒すべきということであった。
「雷竜方天戟っ!!」
ラクサスから放たれた魔力は、轟音を発し、地面を抉りながらミノトへと向かっていく。
「雷の槍ですか…なるほど、これは強力ですね」
ミノトは冷静にラクサスを魔法を分析しながら、ランスを構える。
「…でしらた、これはどうでしょう」
ミノトはラクサスの攻撃と相対するように攻撃を放つ。
「スクリュースラスト!」
ミノトのランスから、圧倒的な暴風が放たれる。衝撃。ラクサスとミノトの攻撃が相対すると、押し合うとともに、衝突音が発生する。
「くっ!すげえっ!!」
「あの雷竜方天戟と張り合っているのか…」
「なんて力なの!」
両者の攻撃は、拮抗している様子で、互いにの攻撃は一歩も引かない。
「この魔法と同威力だとっ!?」
ラクサスが悔しそうに呟く。だが、
「…これでは突破は難しそうですね…だったら…」
猪ミノトは再びランスに力を籠める。先ほど放ったスクリュースラストよりも更に凄まじい力を込めているようだった。
「っ!ミノト!!」
「ちょっ!ミノト姉さん!!」
そんなミノトの力に、ヒノエとアレンが驚いた様子で声を上げる。
「スクリュースラスト…【撃龍】!」
先ほどのスクリュースラストを遥かに超える威力の暴風が放たれる。
新たにミノトの放った攻撃は、先に放った自らの攻撃をも飲み込み、ラクサスの魔法を一瞬にして押し返し、打ち消す。
「こ、これはっ!」
圧倒的な攻撃力に、ラクサスは驚きで対処が遅れる。そして、避けきれないと確信し、両手を胸の前でクロスし、攻撃に備えた。だが、その攻撃はラクサスに届くことはなかった。
「ちょっと、ミノト姉さん!ラクサスを殺す気か!?」
ラクサスの前に割って入るように、盾を携えたアレンが立っていた。
「…申し訳ありません。適切に制御ができず…」
ミノトはしょんぼりとした様子でアレンに言葉を掛けた。
「ちっ!余計な事しやがって……、だが、俺の負けだ…」
「ほう?随分素直じゃないか…」
アレンがラクサスを挑発するように言葉を発する。
「あんたが最後の攻撃を防いでくれなかったら、俺はやられてた」
ラクサスの言葉を聞いた、マカロフが、苦笑いをしながら勝者を宣言する。
「勝者!ミノト!!」
ギルド裏の広場に、再度、大きな歓声が上がった。

ヒノエとエルザ、ミノトとラクサスによる手合わせが終わり、皆が酒場で大騒ぎをしていた。
「それにしても、あそこまで強いとはのぅ…さすがはアレンの姉ちゃんだな…」
「2人そろえば、ギルダーツにも勝てるんじゃないか?」
「アレンともいい勝負ができそうだな!」
マカロフの言葉に、エルザ、ナツが続けて答える。
「ふふっ!ありがとうございます♪」
「ですが、姉さまも私も、戦闘はあまり好きではありません」
「あんなに強いのに、もったいないわね…」
ヒノエとミノトの言葉に、ウルティアがどこか残念そうに答える。
「まあ、確かに2人はカムラの里でもハンターじゃなかったからな」
「ハンター?ってたしかアレンもそうなんだよな?」
「ハンターじゃなかったって、2人は一体何をしていたんだ?」
2人の言葉を補うように、アレンが言葉を発すると、グレイとウルティアが疑問を投げかける。
「私たちは、アレンさん含め、ハンターの皆さまのクエスト依頼の仲介をしておりました」
「フェアリーテイルで言うところの、ミラ様の立場ですね…」
その疑問に対し、ヒノエとミノトが優しい口調で答える。
「ミラみたいに受付の仕事をしてたなら、なんでそんなに強いんだい?」
「ふふ、それは私たちも一時期ハンターを目指していた時期がありまして、そのためですね」
「加えて、里を襲ってくるモンスターや竜との戦いでは、私たちも参戦することがありましたので」
カナも同じように疑問を投げ、ヒノエとミノトが答える。
「なるほどな…モンスターやドラゴンと戦ってたなら、その強さも納得だな」
「つまり、必要な時には戦うけど、それ以外は受付をしていたってことか…本当にミラみたいな感じなんだな…」
グレイとカグラが納得したように言葉を発する。
「ええ、ですから、フェアリーテイルにおいても、そのように振舞わせて頂こうかと」
「もちろん、必要があれば戦いますので、ご安心ください」
「まあ、それが姉さん2人にはお似合いですね」
ヒノエとミノトの提案に、アレンが同調を示す。
「ドラゴン⁉なあなあ、お前ら、イグニールがどこにいるか知ってるか?」
竜という名前に、ナツが食いつき、興奮したように2人に詰め寄る。
「んー、イグニールですか?聞いたことのない名前ですね」
「同感です、姉さま。ちなみに、どのような竜なのですか?」
身の覚えのない名前に、2人は頭を悩ませる。
「火の竜だそうだ。リオレウスとは別みたいだぞ。人間の言葉をしゃべれるみたいだし…」
「リオレウス?」
今度は皆が知らない名前に、ガジルが疑問を吐いた。
「俺たちの知る、空の王者と呼ばれる火竜リオレウスだ」
「ん-、リオレウスが喋れるなんて聞いたことはないし、別の火竜のようね…ごめんなさい、お力になれずに」
「はい、姉さま。どうやら、そのようです」
そんな風に、アレン達の知るモンスターや竜を皆に話したり、フェアリーテイルについてヒノエとミノトに教えるなどして、いつも以上に活気に満ちた様子の酒場となっていた。
そんな折に、ヒノエが思い出したように、ミノトに声を掛ける。
「ミノト、今日もあれは準備してあるかしら?そろそろ食べたいわ」
「はい、姉さま。今日も準備しております」
ヒノエの言葉を受け、ミノトは換装の魔法で異空間から白い丸いものが3つついたものがたくさん出てきた。
「これは…団子?」
「ああ、そうか。忘れてたけど、そういえばヒノエ姉さんはうさ団子がないと…」
ミラが興味ありげにそれを見つめながら呟くと、アレンは思い出したかのように言葉を発する。
「うさ団子?」
「ああ、俺たちの里、カムラの里の名物で、姉さんはこれを一日に50本は食べないと満足できないんだ」
「50本って…これ、一つが相当大きい団子なんだけど…」
エルザ、アレン、カグラが、うさ団子についての話を続ける。
「しかも、うさ団子以外にも3食きっちり食べるんだ…なぜ太らないのか本当に謎だ」
「それは…すごい…だゾ」
「びっくりです…」
アレンは少し呆れたように答えると、ソラノとユキノが呆然としながら答えた。
「てか、ミノト姉さん、うさ団子作れたんですか?」
「はい。実は以前、ヨモギちゃんが体調を崩した際に、うさ団子が買えなくなったことがありまして…」
「ああ、なるほど…」
その言葉に、アレンはすべてを悟ったように頷く。恐らく、発狂に近い状態になったのだろう。アレンはそんな様子を思い出し、少しぞわっとしたものの、嬉しそうにうさ団子を頬張っているヒノエの姿を見て、ふっと笑いを漏らした。
 
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