星河の覇皇
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第八十一部第一章 全戦線でその六十二
「まともなことにはならない」
「到底ですね」
「そうだ、だからだ」
「あなたは今宵も」
「風呂に入りだ」
「ゆっくりと眠られますね」
「ベッドの中でな」
そこでというのだ。
「そうする」
「それも朝まで」
「そうだ、毎朝身体を動かしているが」
官邸のトレーニングルームでそうしているのだ、これは運動による体調管理と体力育成そしてストレス解消の為だ。
「それとだ」
「そうしたこともですね」
「していく、ではな」
「お風呂に」
「入ってくる」
「では私も」
妻は微笑んで夫に申し出た。
「宜しいでしょうか」
「細君も入るか」
「実はお待ちしていました」
微笑んだままでだった、妻は夫にこうも言った。
「この時を」
「そうしていてくれたか」
「旦那様と、と思いまして」
「そうか、ではな」
「これよりですね」
「共に入ろう」
微笑んでだった、ギルフォードは妻に答えた。
「待っていてくれたのならな」
「それでは」
「一人より二人だ」
ギルフォードはあらためて言った。
「一人でいると如何な英傑でもな」
「癒されないですね」
「ナポレオンにはジョゼフィーヌがいた」
六歳年上のこの妻がというのだ。
「彼はこの妻がいてこそだった」
「そう言われていますね」
「英雄になれた」
「そして離縁してから」
「没落した」
こう言われている、ナポレオンにとってジョゼフィーヌは幸運をもたらす女神であったとこの時代でも言われているのだ。
「そしてヒトラーはな」
「家庭自体がですね」
「なかった」
エヴァ=ブラウンという愛人はいたが彼女のことは側近達ですら知らなかった者がいた程のことだった。
「身内贔屓もなかったがな」
「それでもですね」
「とかく家庭とは無縁だった」
「その為でしたね」
「そこでの癒しはなかった、だが」
「旦那様は」
「細君がいてだ」
そしてというのだ。
「子供達がいる」
「家庭があるので」
「そこで癒しがある、やはりな」
「家庭はですね」
「全ての基本だ」
「だから旦那様は政策としても」
「家庭を第一に置いてだ」
そうしてというのだ。
「エウロパという国家を考えている」
「家庭ですね」
「家庭は人を癒しだ」
そしてというのだ。
「倫理や教育の基礎ともなる」
「家庭の教育ですね」
「これは非常に重要だ」
「だからこそですね」
「そうだ」
まさにと言うのだった。
「私は家庭を重視している」
「そうですね」
「私自身がそうだからな」
「では」
「今の私は総統ではない」
「家庭人ですね」
「私人だ」
その立場になっているというのだ。
「だからだ」
「これより」
「共に風呂に入ろう」
「わかりました」
「家の者達はいい」
使用人達はというのだ。
「特にな」
「私達だけで、ですね」
「夜遅い」
もう日付が変わっている、そうした時間だ。
「だからな」
「当直がいても」
「彼等もな、夜はな」
深夜はというのだ。
「出来るだけ何もない方がいい」
「だからですね」
「私達二人だけでだ」
「これよりですね」
「お風呂に入り」
「共に楽しもう」
こう話してだった、ギルフォードは家庭で妻との時間を楽しんだ。そうして公務への英気を養うのだった。
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