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学園黙示録 Highschool Of The Dead ~壊れた世界と紅の狼~

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人のモノは勝手に触れるべからず

 
前書き
暑いですねー。
水分補給はしっかりしましょう!

 

 
~真紅狼side~
俺達はなんとか学校を脱出することを出来たが、その代わりバスの中では小者(しどう)がピーチクパーチクうるせぇ。


「麗、大丈夫か?」
「なんで、あんな奴を乗せたのよ! 絶対に後悔するわよ!?」
「俺に言うなよ。だがまぁ、邪魔になりそうなら………生贄兼囮にでも使うか」


そんときは拘束してから、道路に転がせばいい。
<奴等>が進行の邪魔をしているとか言う時に。
邪魔な奴も片付けることが出来て、<奴等>もおびき出すことが出来る。
まさに一石二鳥。


「真紅狼って、時折り黒いよね」
「失礼な。生き延びるための手段だと言ってくれ」
「ハイハイ」


俺と麗が小者の扱いを決定したところで、その小者がこちらにやってきた。


「私達を助けてくれて、有難うございます。リーダーは………蒼騎くんかな?」
「俺達は生き残るために、チームを組んだに過ぎない。それにこんな時だけ“くん”づけを止めろや、カス野郎」
「真紅狼、今のはちょっと失礼でしょ! ………ぷっ!」
「おっと、そうだったな。つい本音を言ってしまった。こりゃ失敬」


麗の窘めを受けてとぼけたフリして、謝る俺。
その言動に麗、孝、沙耶、耕太、毒島先輩、鞠川先生は笑うのを堪えていた。
鞠川先生はバスを止めて笑っていた。


「キ、キミは結構ストレートなんですね…………」
「あ、この態度を取る相手は基本的に大っ嫌いな奴か殺したくてしょうがない奴しかいないんですよwww」


俺は副声音で『さっさと逝けや、カス野郎』と言ってやった。
小者の表情はあまり変わっていないが、確実にキレてるな………。
こめかみがピクピク動いてる。
すると、小者の後ろに居る角田が声を荒上げて、乱入して来た。


「さっきから蒼騎! テメェ、うぜぇんだよ!!」
「俺がお前に何したよ、角田?」
「うるせぇ! だいたい、なんで俺達がテメェ等の行動に付き合わなければならないんだよ!! 学校で立て籠れば助かるかもしんねぇだろ!? それに小室達の親捜しに付き合う義理はねぇ!!」


その言葉を聞いた時、麗が握っている棒が軋んだ。
麗がそいつに向かって、棒術を叩きだそうとしたところを俺は左手で制止させた。
麗は、驚いた表情でこちらを見ていたが、俺の右手に何があるのかを見た瞬間、落ち着いてくれた。


「……それでは、キミは何がしたいんだ?」


毒島先輩が静かに訊ねると男は俺の方に指を差して、大声で怒鳴る。


「俺はコイツが気に入らねぇ!!」
「怒鳴ってるばっかりじゃ、女にモテないぞ? ヒステリックな男は嫌われるからな」


この一言で再び、笑いに堪える六人。


「おい……真紅狼……くくっ! 一々笑わせるな、堪えるのが辛い。……ぶぶっ!」


孝は、必死に口元を押さえていたが笑い声は漏れていた。
みんなツボにハマりすぎ。
小バカにされるのが耐えきれなくなったのか、俺の方に向かって殴りに来た角田。俺が“真紅の執行者”を抜こうとした時、それよりも早く麗が迎撃に出ていた。


「はぁっ!」


ドンッ!


イイ感じに角田の身体が麗が持っている棒の先端にクリーンヒットし、嗚咽を吐いていた。
その後、麗は「最低!」と角田に吐き捨てた。


「麗、助かったが、少しはいいとこ見せたかったのによ」
「いらないお世話だったかしら?」
「いんや、結構嬉しいかな。だいたい、たかだかジョークを真に受けんなよ? この先、生きていけないよ、オマエ? それにな、喧嘩吹っ掛ける時は、相手の実力や装備を見とかないと、返り討ちに遭うぞ?」


俺は、右手に“真紅の執行者”、左手に“深蒼の断罪者”を構える。
小者と角田は後ずさる。
平野は興味津津にこの長銃を見ていた。


「蒼騎! ナニソレ?! 見たことない銃だけど、特注!?」
「おう。俺がデザインして創った特注の長銃だ。手甲弾からマグナムまで撃てる弾を選ばない特注長銃だ」
「蒼騎くん、キミは暴力で私達を支配しようと言うのですか!? そんなことをしても………」
「はぁ? 何言ってんの、オマエ? 俺はただ、そこに転がってるド阿呆とお前はちょっと自分の立場を再確認しろよ、どっちが有利でどっちが不利かを。バカでも分かる構図なんだよ、お解り?」


そう言って、俺は銃をホルスターに戻すと小者がここぞとばかりに大きく出てきた。


「こんな風にリーダーが要れば、先程の様な状況にはなりません! 私が、この私が皆さんを確実に生き残らせて見せましょう!!」


小者の言葉に感銘したのか、一人、また一人と拍手しながら立ちあがった。
………コイツ、殺そうかな、ガチで。
すると、耐えきれなくなったのか麗は一人飛びだして行ってしまった。


「おい、麗!?」
「こんな奴が一緒なんて絶対に嫌よ!!」


俺は追い掛けて、麗を引き留める。


「街まで我慢すりゃいいじゃねぇか。そこからは奴を追いだしてしまえば………」
「だから、言ったじゃない!! 絶対後悔するって!!」


涙を浮かべて、こっちを睨んでくる。
どう答えようか、迷っていた時、右側から暴走している市内バスが高速で俺と麗の元に突っ込んできたのが見えたので、俺は麗を抱え込んでトンネルの中に飛びこんだ。


ガシャンッ!
キキィーーーーーーー!!


「ちょっ、真紅狼///!?」
「くそっ! 間に合え!!」


市内バスは横転しながら、俺達に迫って来たがなんとかトンネル内に逃げ込むことが出来、市内バスはトンネルの入り口で引っかかりそのままそこで爆発した。


ドォォォォン!!
パチ………パチ………!


「無事か、麗!?」
「あ、有難う/// ………真紅狼」
「おう。しかし、コイツはヤバいな」
「え?」


麗は不思議そうに市内バスを覗くと、<奴等>で溢れかえってることに気が付いたらしい。


『蒼騎くん、大事ないか!!』
『真紅狼! 麗! 無事か!?』


向こう側から、毒島先輩と孝が声を掛けてくる。


「こっちは無事だが、危機は下がっちゃいねぇ!! どこかで落ちあう事にしようぜ!!」
『なら、東署に七時だ、真紅狼!! それが無理なら、明日の朝の七時、もしくは夜の七時に東署で!!』
「分かった、七時だな!! 死ぬなよ、孝!!」
『真紅狼、お前もな!!』


市内バスから外に這い出る様に<奴等>が出てくる。
全身火だるまになってるが、微妙に動いていた。


「麗、走れるか?」
「ええ、行きましょ!」


バチンッ!


「ヤベ! 走るぞ、麗!!」


炎上したバスが一際大きな音を立てたのを聞いた俺は麗の腕を引きながらトンネル内を抜け出し、お互い落ち合う場所に向かう事にした。
~真紅狼side out~


~毒島side~
私達が蒼騎くん達と別れてから、紫藤先生は邪魔者がいなくなったのをいいことに私達の後ろでオカルトみじた洗脳を始めていた。


「まったく熱心なことだな」
「紫藤の奴、蒼騎と宮本が居なくなってから調子乗ってるわね。………どこかで、私達も連中と別れた方がいいわね」
「高城さん。東署に行くためには歩くよりかは、断然バスの方が早いですよ?」
「だから、近くまで来たらバスを降りればいいことでしょ! このデブチン!!」
「そう言えば、小室くん。宮本くんの御両親は警察関係者とかかね? 東署を待ち合わせにするってことは………」
「え? ええ、麗の親父さんは床主の公安なんですよ。その為か、親父さんから銃槍術を習っているから、あんな動きが出来るんです。毒島先輩の御両親はどこに?」
「私は母を亡くしていてね。父は地方に住んでいる。だからまぁ、心配は一応してるが剣道を教えてくれたのが父だから、<奴等>には負けんだろう」
「平野くんはどうなのかね?」
「僕は両親が共に働いてるんですよ。父は宝石店で働いているんで、海外で宝石の買い付けで母はファッションデザイナーなんで、ほとんど会社にいるんです」


こ、これが、俗に言う“完璧の家族構成”ってやつなのか、初めて聞くとなんか凄い様に思えるな。
そう言えば、彼なら知ってるかもしれないな。


「小室くんは、蒼騎くんの事について何か知ってるかね?」
「真紅狼ですか? そうですね………一か月前に転校してきて、すぐに俺と気が合ってから、その後は麗や永にも気が合っていき、転校してから四日でほとんど一緒にいましたね。まぁ、アイツは聞き上手なんで愚痴ってた時は結構世話になってましたよ」
「どうせ、アンタの事だから、宮本のこととかでしょ?」
「うっ! ま、まぁ、そうなんだけどよ。麗の相手もしていたらしいし………」
「ああ、だから、アンタたちの仲が最近穏やかだったのね? 蒼騎がアンタ達二人の愚痴を聞いていたから」


すると、運転中の鞠川先生が話の内容を聞いていたのか、口を出してきた。


「だから、蒼騎くんがたまーに保健室に来ていたのね~~」
「「へ?」」
「どういうことですか、鞠川校医?」
「蒼騎くん、授業をサボってたまに保健室に来てたのよ~~。『惚気聞かされたんで、頭をスッキリさせる為にも寝かせてください』ってね」
「俺は惚気のつもりじゃなかったんですが………」
「もちろん、私も理由を聞いてみたわよ~~? そしたらね、『互いの事を嫌っている癖して、愚痴の裏には未練が残ってるなんて惚気以外ないですよ。それにそんなにも未練が残っているなら、もっと互いの事を知るべきだと思いますがね』って言ってから、寝ちゃったのよ」
「色々と規格外な男だな、蒼騎くんは」
「本当ですよね、こんな状態でも冷静に対処したり………」
「一人で何体も<奴等>を殺してきたり………」


私達は、彼を思い浮かべてから溜息を吐いた。


「まぁ、彼なら澄ました顔で宮本くんと共に東署に向かっているだろう」
「ですよね………」


私達は明るい話題を話しながら、東署に向かったが御別橋はすでに封鎖されていて予想外の足止めを食らってしまった。
~毒島side out~


~麗side~
真紅狼に助けてもらってから、妙にドキドキしてる。


「………い?」


真紅狼は自分勝手と言うか、こう………人を突き離しながらも何かと世話を焼いてくるし………


「………い、麗!」
「ふぁっ、ふぁい!?」
「おーい、大丈夫か? というか、何今の返事?」


真紅狼の顔が近くに合って、心拍数が上がる。
私は自然と顔が紅くなっていった。


「おいおい、顔が赤いぞ? 本当に大丈夫か?」
「べ、別に何でもないわ!!」
「さて、東署まで距離があるし歩きじゃ、明日の七時までには間に合わねぇな。麗、その辺にバイクとか大型スクーターはあるか?」
「ちょっと待って。私の見える範囲では……………! ねぇ、真紅狼、アレ乗れるかしら?」


私が見た先には黒い大型のスクーターが目に映った。
真紅狼はそのスクーターまで向かい、損傷の確認を行っていた。


「キーは刺さってるし、ガソリンもあるし問題は………って!!」


すると真紅狼は急に倒れ込んだ。


「ガァアアアアアッ!!」
「この……っ!」
「真紅狼?!」


背後からやってきた<奴等>が真紅狼を襲ってきた。


「し、真紅狼!?」
「大丈夫だ、ちょっと下がってろ! この死人風情が………ゲート・オブ・バビロンッ!!」


ビュンッ………!!


真紅狼は何かを呟いた後、真紅狼と<奴等>の間の空間から剣が生えて、<奴等>の頭を貫いて、動きを止めた。
その後、真紅狼は死体に戻った<奴等>を蹴っ飛ばした。


「真紅狼……………アナタ、本当に“人間”なの?」
「………ま、あんな現象見せちまったら、そう訊ねるよな。OK、分かった。俺の正体をバラそう。だが、移動しながらだな。麗、後ろに乗りな」
「ええ」


真紅狼は大型スクーターのエンジンを掛けて、私を後ろに乗せて東署に向かい最中に自分の正体を打ち明けてくれた。
~麗side out~


~真紅狼side~
襲われてから、移動してる間にすっかりと夜を迎え、<奴等>と遭遇しない様にバイクを走らせる。


「さて、俺の正体なんだがな。まず一つ言っておくことがある」
「なによ?」
「俺はこの世界の人間じゃなくて、別の世界からやってきた人間だ」
「……冗談でしょ?」
「これが大マジだ。麗は“転生”って信じるか?」
「“転生”って一度死んで、新しい命として生き還るっていう…………あの?」
「ああ。俺はさぁ、俺の出生に問題があったらしくてな、俺が生まれた世界では異端児らしいので神自ら俺を殺したんだよ。その後、別の世界なら問題はないって言われた後、色々あって、この世界に転生したんだよ」
「………じゃあ、真紅狼は一度死んでるの?」
「まぁ、そうだな。あ、でも、今の俺はちゃんと生きてるからな? <奴等>と……………………」


俺はそこで口を噤んだ。
<奴等>と一緒にするなと言っても、存在が存在だし、同等と見られても仕方がないか。


「どうしたの?」
「いや、<奴等>と一緒にするなって言っても俺も<奴等>と似たような存在だし、そう思われても仕方がないかな。って思ってさ」
「そう思うなら、なんで真紅狼は私を助けたのよ? <奴等>と似たような存在なら、私を助けずむしろ仲間を増やす行為を行うハズでしょ?」


そう言って、麗はさらに密着して来た。


「それに私ね…………………………真紅狼のことが好きになっちゃった♪」
「………………はぁっ?!」
「最初は、永を殺して嫌いだったけど……………。世界がこんなになって来てから私、自分を支えられなくなってきてたの。でも、そんな時、近くに居てくれて何かと私のことをサポートしてくれたのが、真紅狼だった。今じゃ、真紅狼がいないと……………!」


そう言って麗は一度言葉を途切れさせた後、再び口を開けて言葉を発した。


「いえ、違うわ。真紅狼なしじゃあ、もう生きていけないの! だから、真紅狼……………いなくならないで!!」
「………これって、傍から見たら“一途の女が必死に男を引き留めてる”図にしか見えないよな? しかも、前半部分はプロポーズにしか聞こえないし」
「どうして真紅狼はシリアスな空気をブチ壊すのよ?」
「俺にシリアスは似合わねぇから。………まぁ、別に俺でお前を支えられることが出来るなら構わないけどよ。孝も居ただろ?」
「孝は自分のことばっかりで気が利かないし、その上、怒りっぽくて………」


あー、この話題は地雷だな。
ま、それなりにフォローは入れておくか。


「麗。あのな、男ってのはさ、自分の事を褒められるのは嬉しいんだけどよ、他の男との比較は結構キツイんだよ。だからさ、少しは孝のことも思ってやってくれないか?」
「真紅狼もそうなの?」
「まぁ、俺はある程度の事は受け流せることが出来るけど、酷ければ俺もちょっとな」
「フフッ♪ 大丈夫よ、真紅狼にはやらないわ。やるのは孝だけ」


孝ェ………。
お前は麗に何をやったら、ここまでになるんだ?


「………っと、話が逸れたな。どこまで話したっけ?」
「んーっと……確か………真紅狼が神様に殺されて、私達の世界に転生した所まで」
「オーライ。そんで、転生するときにランダムに能力を付加されるんだけど、今回は前見せた“鋼糸”、先程見せた力とあと永を殺した時の体術とか色々と付いたらしい」


本当の事は伏せておいた方がいいな。
そこはさほど重要でもないし。


「さっきのアレはなんなの?」
「………人類最古の英雄王、ギルガメッシュが生前集めた名剣、魔剣、聖剣、聖槍、短剣などに武具を収めた異空間。それが“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”。先程見せたの槍は、その空間から射出させたのさ」


すると、麗は黙ってしまった。


「え、じゃ、じゃあ、キングアーサーが持っていた聖剣、エクスカリバーとかもあるわけ?!」
「おう、あるぞ。謂わずと言われた“星の聖剣”であり、“約束された勝利の(エクスカリバー)”も持ってる。あとは各神話の英雄や反英雄の武具を持ってるな」
「それって射出だけじゃなくても扱えるの?」
「もちろんだ。ただ、麗達が扱うには難しいかもしれないな」
「何故?」
「武器と言っても、その格は神話級クラスだ。武器から発せられるオーラや威圧感でまともに扱えるか怪しいんだよ」
「ふ~ん。この話は皆にも話すの?」
「どうしようかね。話してもいいが、混乱が起きることだけは避けたいね。まぁ、時期を見計らって話すさ」
「私はどんな時でも真紅狼側に付くから、安心してちょうだい」
「そりゃ、心強いね」


その時、メーターにランプが付いた。


「む………」
「どうしたの?」
「ガソリンが無くなってきたな。給油しないとダメだな」
「あそこに、スタンドがあるわ!」


麗が指を差した先には、周りに<奴等>がいないスタンドだった。
俺はそちらにハンドルを切り、バイクを止める。


「っと、金が足りないから、レジぶっ壊すか。麗、ココに居てくれ。何かあったら叫べ」
「分かったわ」


俺は、店内に入っていった時、一つ思い出した。
アレ? 確かこのイベントって、麗が襲われなかったっけ?
そんな疑問が頭の中を支配しながら、レジを勢いよく壊す。


ガッシャーーン!


生まれて初めてレジを壊したな。
この世界に母さんがいたら、間違いなくアイアンクローが炸裂してるだろうな。
つーか、もしかしたら死ぬかもしれん。
レジの中からプチ強奪して戻ろうとした時、悲鳴が聞こえた。


「キャアアアアアアアアアアッッ!!」


麗の悲鳴だったので、駆けつけてみると予想通り暴漢に身柄確保されてました。
ああ、やっぱりかー!


「麗を離してもらおうか?」
「うるせぇ! その右手に持ってる短刀を捨てろや!!」
「なぁ………」
「うるせぇって言ってんだろうが!! それともこの女が殺されてぇのか? ああ!??」
「待て待て、少し落ち着こうぜ?」


俺が落ち着かせようとすると、男の拘束が弱まった瞬間、麗が男を突き離してこちらに走ったが男は麗の髪を強引に掴み、再度拘束された。


「おっと、逃がしはしねぇよ。ヒヒ……、しかもこの姉ちゃん、スゲェおっぱいだな」
「ひっ! い、いやぁ!!」


男は何度も何度も麗のおっぱいを揉み砕いた。


「給油しろや!」
「………………」


男に従い、給油を始めた。
その間も穢れた手付きで麗の身体を触り続ける。
せいぜい、余生を楽しめ。
給油が終わり次第、貴様の命はねぇ。


「………………(ガコン」
「給油が終わったなら、その武器を捨てて行けよ!!」
「ああ。捨てるからちょっと待て」


俺は“七ツ夜”を目の前に落とす。
“七ツ夜”は回転するように、ゆっくりと地面に落ちていく。
その様子を男は眺めていて、俺から視線が外れていた。


「じゃあな……………ゲス野郎!! 蹴り穿つ!!」


――閃走・一鹿――


落ちている“七ツ夜”の底を水平に蹴り飛ばし、そのまま距離を詰める。
男と麗の目には一瞬の出来事でしか見えない。
蹴り飛ばされた“七ツ夜”は男の右腿に刺さり、男の顔が苦痛に変わり、拘束が弱まる。
その隙に麗を確保し、俺は真紅の執行者を引き抜く。


ズンッ!


「ぐぇ!」
「よくも俺の女を穢しやがったな、ゲス野郎(ガシャコン!」
「待て、この距離で撃ったら引火するぞ!?」
「しねぇよ、バカ」


ダンッ!


右肩を撃ち抜いた。
男は撃たれた反動で後ろに吹き飛ぶ。
そして……………


「ぎゃああああああ、血! 血がぁああああああ!」
「よく聞け、ゲス野郎。麗は、俺だけが穢していい女なんだよ。分かるか? 髪の毛、血、柔肌、艶姿まで全部俺のモンだ。それをテメェみたいな脂ぎったゲスが触れちゃいけないんだよ、オラ、返事!」
「血、血ィィいいいい!!」


男はいまだに血を流してることにしか頭が回っていなかった。
音を響かせたのでそろそろ寄って来るだろうし、逃げる準備をする。
その前に、男の足に刺さってる“七ツ夜”をわざと抉るように引き抜く。


「ぎゃあああ、痛い! 痛いッ!」


麗は男の前に立ち、激怒していた。


「よくも…………!」
「麗、行こうぜ」
「でも………!」
「<奴等>がやって来てるんだ。俺達が殺らなくても<奴等>が処理してくれる。それでも報いたいなら、ほれ」


俺は真紅の執行者を麗に渡した。


「左肩をブチ抜け」
「……………ええ!」


麗は躊躇わず引き金を引いていた。
すげーな、アイツ。


ダンッ!


「ひぃ!! 痛い! 痛いィィィィィ!!」
「大丈夫か?」
「あとでマッサージしてくれない、主に胸を中心的に」
「アウトに近い台詞だぞ、それ………」
「だってぇ、さっき真紅狼が言った言葉を聞いてから、ますます真紅狼の事が好きになっちゃった♪」
「いや、あの状況じゃ誰でも言うと思うけど………。取り敢えず、行くか」
「うん♪」


俺が大型スクーターのエンジンを掛けると、ゲス野郎は声を上げる。


「オ、オイ、俺を置いて行っちまうのかよ!?」
「知るか、ボケ。テメェが<奴等>になろうが俺にとってはどうでもいい。お前の命なんか、そこらへんに転がっている有象無象と一緒なんだよ。それに本来なら下半身を銃創だらけにしてやるつもりだったが、ちょうどいい処刑方法があるし、自動でやってくれるから、そちらに任せよう。………じゃあな、ゲス野郎、せいぜい余生を楽しみながら、絶望を味わえ」


俺はそこから見向きもせずに、ガソリンスタンドを出た。
その後、ガソリンスタンドからは、醜い悲鳴が聞こえた。


「絶叫まで汚ないな」
「本当ね」


麗は相変わらずぎゅーと背中に抱きついてきてる。
俺達は御別橋と向かった。
~真紅狼side out~


あちらは大丈夫かねぇ………? 
 

 
後書き
よっしゃー、麗を落としたぞーー!!

最近、アホ毛のある子は可愛いと思えてきた作者です。
まぁ、それでも選別はしますが………


あ、話は変わるんですが、皆様は一話一話が長く感じますか?
もし、感じるのであれば、もう少し短めに創ろうと思っています。
 
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