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学園黙示録 Highschool Of The Dead ~壊れた世界と紅の狼~

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学校脱出

~真紅狼side~
俺が天文台の上で小室達を待ってると、一匹ほどいつの間にか彷徨っていたので、鋼糸を展開して首を吹き飛ばした。


ブシャッ!


首が取れて、血が勢いよく噴き出ると思っていたがそうはならなかったことで残念だった。


「アレ、血が吹き出ないのかよ。残念」


しかし、小室達遅ぇなぁ。
どっかでトラブったか?
そんなことを思っていたら、屋上の扉が勢いよく開けられて、小室達が居た。


『真紅狼!』
「おう、こっちこっち。む! 後ろから<奴等>が来てんぞ! 援護してやるから、さっさと来い!!」


小室達が入ってきた屋上の入り口から雪崩出てくるように、<奴等>が『あ”ー』とか『かぁ”ー』とかよくわからん叫び声を上げながら小室達を追って来ていた。
俺は、両腰のホルスターから“真紅の執行者”と“深蒼の断罪者”を引き抜き、スライドを引き、薬室に薬莢が入った事を確認した後、引き金を引く。


ダダダダダダダンッ!!


二つの銃口が火を噴き、銃弾の嵐をまき散らした。
全弾、<奴等>の頭を貫いて、十分の距離が取れた所で銃撃をやめた。
必要以上の銃撃音は<奴等>を引き付ける要因になってしまうしな。
俺が軽く駆逐している間に、小室達はこちらにやってきていた。


「孝、バリケードを創れ!」
「作ったが、固定するもんがない!!」
「孝、セロテープを使え!! セロテープは強度が高い!!」
「永、セロテープを!!」
「ああ。……ッ!」


孝が手すりとテーブルの足をセロテープでガッチリと巻き付けて固定し終わった。


「三人とも無事………とは言い難いか」


俺は永の腕を見た。
見事に腕の肉が噛み千切れていた。


「永、お前がこの後どんな状態になるか、ここまで来る間に見てきたな?」
「ああ………! ガハッ!」


永は血を吐き出しながらもこちらを見ていた。
俺は懐から“七ツ夜”と彫られている短刀を取り出した。
その姿を見た麗は俺と永の間に立ち塞がる。


「待って、真紅狼! 永は……永は<奴等>にはならないわ!!」
「そりゃ無理な話だ。<奴等>に噛まれたら、治る方法はない。あるとしたら、あんな姿になる前に自害することぐらいだ」
「でも………! 「ああ、そうだな」………孝!?」
「麗だって見てきただろう。<奴等>に噛まれた以上、どんなに抗っても無理だってことを」


永は苦しみながらもバリケード側に立ったので、俺はその反対側に立つ。


「永、俺はこれからお前を生かしたいが為に殺す」
「ああ………、俺を“人”として殺してくれ。あんな化物の姿になる前に」
「真紅狼! 待tt………孝!?」


麗は未だに永が助かるということを信じていた為か、俺を止めようと動くがそれを孝が引きとめた。


「お前の決意は素晴らしい。故に俺も最高の(わざ)でお前を送ってやろう」


俺は天高く短刀を掲げた。


「――――――――――――極死」


短刀を相手の首元に腕を撓らせながら、投げつけて俺は永の頭に手を置いて…………………………。


「―――――――――――――七夜!!」


永の首を捩じ斬った。
その時、捩じ斬る瞬間、永の口から「麗を頼む」という言葉を聞きとった。


「受け取れよ、永。アンタへの手向けの花(・)」


麗は永の姿を見て、崩れ落ちていた。
俺は捩じ斬った首を胴体の元に戻してやり、近くにあったタオル被せてやった。
さて、これからメンバーの回収にまわんねぇとなぁ。
~真紅狼side out~


~孝side~
真紅狼が永を殺した時に、聞こえた言葉……………。


『受け取れよ、永。アンタへの手向けの花(・)』


その“手向けの花”の意味はおそらく、『人として殺した』という意味なのだと俺は感じ取った。


「麗、大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・」


返答がない。
そっとしておくべきか。
真紅狼の元に向かい、今後の予定について相談した。


「真紅狼」
「おう、なんだ? 孝」
「今後どうすんだ?」
「取り敢えず、まだ生き残りが居るかもしれないから、助け出して脱出ってところぐらいだな」


真紅狼は下の様子を覗きながら、話す。
俺は疑問に思っていた事を一つ尋ねる。


「真紅狼、お前はこの事態を予測していたんじゃないだろうな?」
「どうしてそう思う?」
「お前が最初に言った言葉……………『最大級の災厄』ってのはまさしくコレの事だ」
「お前も見ただろうが、教師の腕を噛み千切った所を。その状況を見て、考えられる未来を何本か見立てたら、これに行きあたったんだよ。だいたいな、人が人の肉を噛み千切る時点で異常事態だろ?」


確かに、誰がどう見ても異常事態には違いない。


「………だからって、永を殺さなくてもいいじゃない! もしかしたら、治るかも………「なら、お前はあのまま永を化物にさせたかったのか?」………うっ!」


麗が口を開き、真紅狼を責めようとしたが真紅狼はそれ以上の事実で麗の口を黙らせた。


「永をあのままにして、そこで人を喰らうような化物にしたかったのか? 俺だったら、友として、人としてあそこで命を断ってやった方がまだアイツの意志を無駄にせずに出来たがな。麗、お前はそれすら無駄にさせるつもりか?」
「そ、それは……………」
「それじゃあ、アイツが浮かばれないだろうが。アイツの決意ある死を無駄にするな」
「…………ゴメン」
「別にいいさ。誰だってこんな状況下だ。狂いたくもなる」


真紅狼は子供をあやすかのように麗を説き伏せた。


「ねぇ、これからどうするの?」
「まぁ、駐車場に俺の車があるなら、それに乗っていきたかったんだが………。無い物をねだってもしょうがない。だから、学園駐車場で動かせるのがあればそれに乗って脱出ってのもアリだが、まずは生存者がいるかもしれないし、それの探索及び脱出だな」
「「真紅狼って運転出来んの?!」」
「なんで、そんなところで驚くんだよ?」
「「いやだって………」」


誰だって驚くと思う。
まだ17歳なのに、車を持ってること自体何かがおかしい。


「真紅狼の車の車種は?」
「BMWのX3。色は黒」
「………もしかして、真紅狼ってお金持ち?」
「まぁ、それに近いかな? “蛇の道は蛇”っていうだろ? そんな感じだからあまり聞くな」


あぁ、なるほど、そういうこと。


「それじゃあ、一息付いたら、生存者を捜索しつつ駐車場に向かおう」
「おう」
「ええ」


僕たちは、身支度を整えた後、学校を脱出することに決めた。
~小室side out~


~真紅狼side~
俺達は取り敢えずバリケードで突っ掛かっている<奴等>にバリケードごと蹴り飛ばした。


「オラァ!」


ガッシャン!!
グチャチャチャ………!!!


蹴り飛ばして、テーブルをサーフィンの板代わりにして滑り降りた。
その際に下敷きになった<奴等>は圧殺され、血溜まりを創っていた。
おお、グロい。
孝達も足元見ながら階段を下りてきた後、屋上の入り口まで見通した。
屋上には、多数の<奴等>がこちらに向かって来る。


「孝、麗、覚悟はいいな? アレはもう“人”じゃねぇ、“モノ”と思って容赦なく(ころ)せ!!」
「ああ!」
「ええ!」
「そんじゃ、行くぞ!!」


俺達は進行に邪魔する奴らだけ叩き潰しながら進み、途中で校医の鞠川静香校医と三年の剣道部主将、毒島冴子先輩と合流した。


「生存者は二人ですか?」
「ああ。キミは?」
「二年の蒼騎真紅狼です」
「同じく宮本麗です」
「小室孝です」
「ああ、自己紹介有難う。私は三年の毒島冴子だ。こちらは皆も世話になってる鞠川校医だが、知ってるからいいかな」
「先輩達は、これからどこへ?」
「鞠川校医の車のキーが職員室にあるらしくてな、職員室に取りに行く最中だが、着いてくるかい?」
「奇遇ですね、俺達も動かせる車があるならそれに乗って脱出しようかと思ってたんですよ」


孝が俺の代わりに毒島先輩と話す。
俺は周囲の気配を探る。
こういう時って常に周囲を探っていた方が、生き残りやすいんだよね。
なんでか知らないけど………。
俺が後方を確認している時、何故か麗が俺のコートを掴んでいた。


「麗、なんで俺のコートを掴んでんの?」
「えっ? あっ、その………」
「………不安か?」
「いや………………うん、不安。無事に生き延びられるか」
「安心しろ、命を賭けて護ってやるよ」
「それ、フラグになりそうだわ」
「フラグになっても、その程度(・・)じゃ俺は殺せねぇな」


俺は、そういうフラグを片っ端からへし折ってきたしねぇ。


「おーい、真紅狼、麗。行くz………『きゃああああああっ!!』………悲鳴ってことは………!?」


孝が話し終わった瞬間、奥から悲鳴が響き渡った。
俺達は急いで駆け寄ると、メガネを掛けてどこか偉そうな女が簡易ドリルを<奴等>の腹に刺して、血が吹き出させ浴びながらも抵抗していた。
そして、その悲鳴に聞いた<奴等>が左右から四体ずつ襲い掛かってきたので、毒島先輩、孝、麗は交戦しようとするところを俺は止めた。


「毒島先輩、左をお願いしま………「俺一人で十分だ」………真紅狼?!」


俺が一歩前に出て、左手の薬指をほんの僅か動かす。
それだけで数百万本の目に見えない鋼糸が動かせるが、今回は二、三本を使用し一瞬でこの場に居る<奴等>の首に巻き付けて、そのまま絞めつけて首を吹き飛ばした。


「ま、こんなところか」
「………蒼騎くん、キミは一体何者だ?」
「質問の意図が分かりませんよ、毒島先輩?」
「先程の技はなんだ? いきなり、<奴等>の身体が浮かび上がったと思ったら、次は首が吹き飛ぶ。人間が出来るような技じゃない」
「答えるにしても、ここよりも職員室に入りましょうや、ここに居たら<奴等>の格好の餌食だぜ?」


俺達は、職員室に入り。
気休め程度にしかならないが、鍵を閉めた。
そして全員が一息ついた後、俺を見てくる。


「さて、蒼騎くん。先程の答えを聞かせてもらえるだろうか?」
「こんなに早くバラす事になるとは、先程の行為は失敗だったかな? おとなしく、孝達に任せりゃよかったな」
「……どういうことなの、真紅狼?」


麗は困惑した表情で訊ねてくる。
さぁて、どこまでバラしてどれぐらいの嘘を混ぜ合わせようかな。
もうちょっと先の方でバラしたいんだよね、そっちの方が俺に得があるし。
そうだな、こういう設定で行くか。


「まぁ、そうだな。俺はちょっとばっかり特殊な人間とでも言っておきましょうか」
「………特殊な人間?」
「ええ。先程、俺が使った武器は“鋼糸”と言いまして、“剄”という力を使うんですよ」
『“剄”?』
「よく、映画で出てくる中国拳法の八極拳とかに使われるヤツ?」
「そうだ、麗。その解釈で間違ってない。で、その“剄”を使って“鋼糸”を操ってたんですよ」
「その“鋼糸”ってやつを私達に見せてくれないか?」
「え? 目の前にありますけど?」


麗達は周りを見渡すが、怪訝そうな表情を見せる。


「なんもないわよ?」
「ああ、すまん。つい癖で、消してるんだった。発光させるからちょっと待ってくれ」


俺は見えるように剄を流し込んだ。
すると、職員室が黄金に包まれた。


「こ、これが………キミの言う“鋼糸”かね?」
「そうですよ。ちなみにたった一本でも鋼鉄の壁を簡単に裁断出来ますんで、触れない方がいいですよ。人間の首を斬るなんて豆腐を斬るようにサクッ!といけますから。しかも伸縮自在で知覚機能もあるんでこの状況下では便利だと思いますけど?」
「どこまで伸ばすことが出来るんだ、それ?」
「さぁ?」
「さぁって、アンタ舐めてんの!?」
「そう、甲高い声を出すなよ、高城。やろうと思えば、床主市全体を囲むことぐらい出来ると思うが、メンドイんでやりたくねぇな。まぁ、あくまで基準として50km圏内なら簡単に伸ばせるな」


それを聞いて、皆は愕然としてる。
そりゃそーだ。俺一人で<奴等>を駆逐出来る状態だしな。
でも、釘刺しておかないと。


「あ、でも、反動として三日間はまともに動かせなくなるんで、気を付けた方がいいぞ? 時折り、休むことが出来るなら、反動の方はないがな」
「なんでそんな風になるんだ?」
「孝、あのな、特殊な人間って言ってもな、俺も食事とかしないとマズイだろーが」


これを聞いた六人は、何かを納得したような表情をしていた。
オイコラ、なんだその表情は?


「ちょっと今、俺の事を軽く化物扱いしたろ?」
「「「「なんのことやら?」」」」
「よし、喧嘩売ってんだな? 表出ろ、<奴等>諸共潰してやっから」


咄嗟に視線を外したのは麗、孝、先程合流した高城と平野だった。
毒島先輩と鞠川先生は素で納得しているかのように見えたので除外した。
孝は何か話題をずらそうとして、おもむろにテレビを付けて、ニュース番組のチャンネルを付けた。


『――――ここで中継に回してみましょう。伊藤さん?』
『はい、現場の伊藤です。現在、警察関係者の方たちが対応してますが………あ、ちょっと待ってください。え、いや、いやぁぁぁああああああっっーーーー!! ……ザァァァァァ』
『……これからはスタジオだけでニュースの方を逐一ご報告します』


そして、テレビを消した。


「イイ感じにカオスになってきたな」
「どこがよ!? むしろ最悪じゃない!! 報道ですら目の前の事態に目を背けているのよ、真実を教えず、嘘の情報ばっか教えて………」
「だが、人が人を喰うなんて情報を流したって、9割の人間は信じないだろうよ。『明日になればまたいつもの日常が戻って来る』と信じる奴の方が多いだろうよ。問題は食い止める方法がないってことだな」
「ええ、感染大災害(パンデミック)よ、しかも非常に性質が悪い」
「………止める方法がないのか!?」
「あると言えばあるんだが、それがなぁ………」


感染者を全員殺すことだが。
現在の状況下じゃ、無理に近い。
なんせ、片っ端から噛まれて、止めようにも止まらん状況なんだよね。
生存者も<奴等>もまるごと殺していいのであれば、止まる可能性はあるけど。


「じゃあ、これは中世紀に起きた黒死病みたいなモノなのね?」
「鞠川先生、よく知ってますね?」
「これでも校医よ~」
「その時はどれぐらいの被害だったんだ?」
「あの時は、ヨーロッパの全体人口の三分の一が死者に変わったわ。だけど、急に黒死病が消えて被害が収まったのよ」
「なんで?」
「感染出来る人間がいなくなったから! 感染者がいなくなれば、自然に病原体も消えたの」


孝達はこの状況下を高城に詳しく教えてもらっていた。
その間も俺は外の状況を確認した。
ほとんど、<奴等>だらけだな。
さっさと、移動しないと厄介だ。
すると、毒島先輩が様子を見に来た。


「どうだい、外の様子は?」
「最悪です。まだ悲鳴が聞こえていた方がマシですかね」
「移動は早くした方がいいかい?」
「出来れば………家から、車持ってくりゃよかったな」
「運転も出来るなんて、後は何が出来るんだい?」
「隠密行動に銃撃戦、家事洗濯はそれなりに出来ますよ。一人ぐらいしなんで」
「あっ、すまないことを聞いたな」
「別にいいです。さて、そろそろ脱出すんぞ、面倒になってきた」
「どうすんのよ?」
「マイクロバスがあるから、アレに乗れたら勝ち。乗れなければ負け。シンプルな理由だろ?」


全員はその理由を聞いて笑っていた。
俺達は職員室を音も立てず出ていき、途中で襲われていた生存者を数人助けた後、玄関口までやってきたがそこにはアホみたいに<奴等が>群がっていた。


「真紅狼」
「あいよ」


孝の合図で、俺は鋼糸を動かし<奴等>の首を吹き飛ばす。


「排除完了」
「良し、全員音を立てずに行くぞ」
「連中は音に反応するから、気をつけなさい」


先頭を孝と毒島先輩が率先し、その後麗、平野と続いていき、最後に俺が出ていく瞬間、俺の前でさすまたを大事そうに持っている男子生徒が、不注意で手すりと接触した。


カァァァァン!!


「走れーー!!」
「小室、なんで大声出すのよ! そのままやりすごせば………!!」
「無理だな、高城。結構鳴り響いた!」
「真紅狼の言う通りよ!!」


鋼糸で前方にいる<奴等>の首を吹き飛ばしていく。


「すごい………」
「感心してる暇があるなら、さっさと走れ、バカ共が!」


俺の前では先程助けた他の生徒がすでに<奴等>に捕まって、見事に喰われていた。
喰われながらも必死に俺に助けを求めていたが、俺は左腰の“深蒼の断罪者”を抜いて、頭を撃ち抜いた。


ダンッ!


俺は一瞥してから、マイクロバスに乗り込んだ。
その後、紫藤とその他大勢を孝と毒島先輩が見つけ、全員を乗せるようにするが麗はその事に大反対していたが、結局乗せることとなった。
~真紅狼side out~


俺、アイツ、嫌いなんだよなぁ。
小者っぷりで。 
 

 
後書き
あ、落とすヒロインはすでに決定済みです。

ちょっと面白おかしく原作は弄りますがね。
ところで、どうして幼馴染の三人は名前が漢字で書くと、一文字しかないんですかね?
超不思議。 
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