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子沢山も大変

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第二章

 それから一年後だった。
「えっ、また出来たのか」
「ああ、そうなんだよ」
「今度は双子か」
「そうなんだよ、今かみさん家で育児してるけれどな」
 塩見は宮本に同窓会の場で話した。
「また妊娠してな」
「今度は双子か」
「どっちも女の子だってさ」
「そうか、じゃあお前子供五人か」
「いいよな、俺一人っ子だったから子沢山の家庭に憧れてたんだよ」
「だからか」
「嬉しいぜ、かみさんも子沢山はいいことだって言ってるしな」
 夏奈にしてもというのだ。
「目指せマリア=テレジアでな」
「十六人だな」
「もっともっと子供作ってくぜ」
「家計大丈夫か?」
「ああ、俺はやり手だからな」  
「給料は高いんだな」
「そうさ、だからもっと子供作っていって育てていくな」
 宮本にビールを飲みつつ陽気に話した、そして今度は双子の女の子が無事産まれたと彼に連絡することになった。
 だが三年後休日自宅のスーパーに生活用品や自分の夕食の材料を買いに行った宮本はレジで夏奈を見た、見れば。
 夏奈は随分やつれてしおれた感じになっていた、明らかに疲れきっていた。それで彼は彼女に驚いて声をかけた。
「おい、身体大丈夫か?」
「あっ、久し振り。私今ここで働いてるの」
「パートはいいけれどえらく疲れてるな」
 今は客がいない時間帯で実際にいないので話をすることにして尋ねた。
「どうしたんだ」
「いや、育児がね」
「五人か」
「今度六人目生まれるの、それで生活費の為にね」
「働いてるんだな」
「いや、うちの人も頑張ってるけれど」
「六人だとか」
 宮本もすぐに察した。
「家計が大変か」
「それは大丈夫なの、うちの人収入はいいから」
「あいつやり手だしな」
「管理職にもなったしね」
「それで余計にか」
「ええ、けれどね」
 夏奈はここでこう言った。
「子供達の将来のことも考えてね、お家も買おうってなったし」
「家か」
「車だって大きいのに買い替えて」
「そのこともあるか」
「それで私もこうしてね」
「パートしてるのか」
「前からこのお仕事よ、子供出来て復職したの」
 そうだったというのだ。
「それで働きながら育児してね」
「頑張ってるんだな」
「お家と車のこともあってね、ただ子育てもしてるでしょ」
「それでか」
「ええ、流石に疲れてるって言ったらね」
 目に光はある、だが疲れきった顔で笑って話した。
「やっぱりね」
「疲れてるんだな」
「それは否定出来ないわね」 
 その疲れきった顔で笑って話した、この時宮本はやっぱり子沢山だと大変だなと感じる位だったが。
 たまたま職場の銀行に来た塩見、夏奈と同じくやつれきっている彼を見て言った。
「奥さんと同じだな」
「かみさんに疲れてるって言ったよな」
「ああ、それでお前もな」
「五人まだ小さいし六人目出来てな」
「その子達の為に家と車を買うんだよな」
「その為に頑張ってるからな」
 それでというのだ。 
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