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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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G編
  第91話:得体の知れない魔法使い

 
前書き
どうも、黒井です。

今回は終始透とクリスサイドの戦いの話になりました。 

 
 ノイズはともかく、メイジの方は一撃で始末すると言う訳にはいかなかったのでどうしても倒すのに時間が掛かってしまう。それでも透は懸命に1人でも多くの米兵を助ける為奮闘していたのだが、敵の割合でメイジの方が多くなると途端に米兵の攻撃は透にも集中してきた。

 それでも魔法使いの鎧は、通常火器で破られるほど脆くはない。現に米兵の攻撃そのものは透に対して然したるダメージを与えてはいなかった。
 だがダメージは無くとも、攻撃のタイミングを潰されたり注意を逸らされてその隙に敵のメイジからの攻撃を受けたりと、戦闘の邪魔を何度もされていた。

 だからと言って反撃する訳にもいかず、透に出来る事はメイジとの戦闘の最中に米兵からの攻撃を防ぐが避ける事だけであった。
 尚悪い事に、透は他のメイジと違い1人赤いマフラーを巻いていた。これが逆に目立ってしまい、米兵からの攻撃を引き寄せている状態の原因となっていたのだ。

 勿論既に二課からは米軍艦隊に対し、赤いマフラーを巻いたメイジは味方である事の通達が行われてはいた。しかしながら、まだ機能している艦隊司令部に対して一つ呼吸した次の瞬間には死んでしまうという状況の末端の兵士達にそれを理解しろと言うのも酷な話。大事な通信であろうともそれを即座に理解する時間は無く、理解出来たものも次の瞬間には命を落とすという状況では透への攻撃を止めさせるのは不可能に近かった。

 今、1人の米兵が目前に迫るメイジに向けアサルトライフルで応戦していた。人間相手なら確実にハチの巣に出来る銃撃を、メイジは障壁も張らず左腕のスクラッチネイルで全て防いでしまう。半狂乱になって撃ち続けるが、彼の努力は無駄に終わり無情にも銃の弾が切れる。
 慌てて弾倉を入れ替えようとするが時既に遅し。米兵に向けて鋭い爪が振り下ろされた。

 あわやと言う所で幸運の女神は彼に微笑んだ。偶然にも踏ん付けた空薬莢が彼の足を滑らせ、転倒した事でギリギリ切り裂かれる事を回避できたのである。その際に持っていたライフルは破壊されてしまったが、命に比べればお釣りが来る位安い。
 しかしまだ首の皮一枚で繋がっただけ。脅威自体が去った訳では無いのだ。

 攻撃を外したメイジは、小さく舌打ちしつつ今度こそ米兵を仕留めようと手に持ったライドスクレイパーで串刺しにしようとする。倒れた状態の米兵にそれを回避するだけの余裕はなく、今度こそ彼は己の死を悟った。

 その瞬間、透が寸でのところでそのライドスクレイパーをカリヴァイオリンで弾き飛ばした。

「「ッ!?」」

 透の行動には、武器を弾かれたメイジだけでなく助けられた米兵も目を見開く。見た目他のメイジとよく似た奴が何故自分を助けるのか分かっていないようだ。
 そんな米兵の驚きを無視して、透は続く攻撃で米兵を攻撃していたメイジを叩きのめした。鋭い連撃がメイジを戦闘不能に追い込む。

「……、……」

 もうどれだけの時間戦い続けているだろうか? 体感では何時間も戦っている様な気がしていたが、透は時間の経過を忘れる程必死に戦っていた。
 実際には戦闘を開始してからまだ数十分も経っていないのだが…………。

 単に激しい戦闘と言うだけでなく、四方八方から攻撃が飛んでくるという状況。しかもその攻撃をしてきている者の内半分に対しては反撃してはならないという制約が、透を精神的にも追い込んでいた。

 その時、透の耳にロケットの噴射音が聞こえてきた。

「ッ!!」

 一瞬クリスのミサイルかと思ったが、音のする方に目を向けるとそこには自分に向かって飛んでくるロケットランチャーの弾頭があった。またしても透を他のメイジと誤認した米兵からのフレンドリーファイアー。
 透は咄嗟に避けようとしたが、今避けると直ぐ近くに居る米兵が流れ弾のロケット弾の爆風に巻き込まれる。避ける訳にはいかないと、透はロケット弾と米兵の間に立ち、障壁を張ってロケット弾を防いだ。

〈バリアー、ナーウ〉

 魔法の障壁は難無くロケット弾を受け止め、透もその背後の米兵も傷付ける事は無かった。そして彼は米兵をロケット弾から守ると、守った米兵を立ち上がらせその場から逃げるよう促した。
 一連の透の行動を目にして、助けられた米兵は目を丸くしつつ促されるままに退避する。

 また1人、何とか助ける事が出来たと安堵の溜め息を吐く透だったが、そこへ数人のメイジが襲い掛かった。

「裏切り者には死を」
「ワイズマン様の為に」

 誰も彼も洗脳されているのか、感情を感じさせない言葉を繰り返しながら透に襲い掛かる。
 既に大分消耗しつつある透は、それでも挫ける事無く自らを奮い立たせた。そこにあるのは、偏に無駄に命を散らす物を1人でも減らしたいという願いのみ。

 その時、透に襲い掛かろうとしていたメイジ達が無数の銃弾を喰らい倒れた。その銃弾は鎧に弾かれる事なく、ダメージとなって次々とメイジ達を打ち倒していった。

「ッ!」

 米兵の攻撃ではない。彼らの攻撃はメイジに衝撃こそ与えどダメージにはなり得ないからだ。

 つまり――――――

「透ッ!」

 透に殺到するメイジに対し、クリスの広範囲に渡る攻撃が炸裂する。個々の能力以上に数で攻めている彼らに対し、クリスのイチイバルによる攻撃は効果覿面だった。

「テメェら、透に近付くんじゃねぇッ!!」
[BILLION MAIDEN]

 回転しながら四方八方にガトリング砲による制圧射撃を行うクリス。反応が遅れたメイジはこの攻撃に倒れ、そうでないメイジも防御に回避と自分を守る行動を余儀なくされた。

「悪い、遅くなった! 大丈夫か透!」
「……」
「おっさんから通信受けてな。流石に透がきつそうだったからやって来たって訳だ」

 本部で透の戦いをモニターしていた弦十郎は、このままでは遅かれ早かれ透が持たないと判断し彼に増援としてクリスを向かわせたのだ。
 未来は現状颯人が足止めしてくれているし、調は見た所戦闘不能。切歌も颯人との戦闘で消耗している上に翼が見張ってくれているので、あちらは余裕があると判断した事も大きい。

 クリスが傍に来てくれた事で、透の心に余裕が生まれた。彼女が傍で歌ってくれているだけで、透は力が湧いてくるような気がした。以前颯人が言っていた、「奏の歌があれば何時でも全開」と言う言葉の意味が今はよく分かる。
 透も、クリスの歌を聴けば疲れも何もかも吹き飛ぶのだ。

 透とクリスが手を取り合い、未だ無数に蔓延るメイジに立ち向かう。

「行くぞ、透!」

 一斉に攻撃してくるメイジ達。それに対しクリスは両手にボウガンを、透はカリヴァイオリンを構えて迎え撃つ。
 基本的にはクリスが攻撃で透が防御を受け持ち、迫るメイジをクリスのアームドギアが撃ち抜き彼女の死角からの攻撃を透が防ぐ。

 次々と立ち位置を変えて戦う2人の動きに、メイジ達は翻弄されその数を次々と減らしていった。




***




 透とクリスの奮闘は当然上空のエアキャリアに居るグレムリンとメデューサの目にも入っていた。
 次々とメイジを倒していく2人を、メデューサは忌々し気に、グレムリンは楽し気に眺めている。

「たった2人を相手に、何をやっている!?」
「ンフフフフフ! いいじゃない、面白くなってきた」

 吐き捨てるメデューサに対し、グレムリンはにやにやと笑うと踵を返した。突然エアキャリアから出ようとする彼に、気付いたメデューサが声を掛けた。

「待て、何処へ行く?」
「ちょ~っと会いたい人が居るから。ついでにあの2人にも挨拶してくるよ」

 それだけ告げると、グレムリンはエアキャリアから出て行った。
 その彼の後姿に、メデューサは小さく鼻を鳴らすのだった。




***




 場面は戻って透とクリスは、その後も順調にメイジを倒していった。透の活躍により米兵が退避させられていた事もあり、更にはクリスが彼と常に行動を共にした事により米兵が透への攻撃を止めてくれた事も大きかった。お陰で邪魔される事なく、目に見える範囲でメイジは全て倒す事が出来た。

「ふぅ……これで全部か?」

 見た所立っているメイジは見当たらない。透はクリスの言葉に頷いて答えた。

「よし、それじゃペテン師達の所に――――」

 こちらが片付いたから、颯人達の元へと戻ろうとするクリス。透もそれに同意しようとしたその時、殺気を感じた透はそちらに向けてカリヴァイオリンを構えて防御の体勢をとった。
 何をとクリスが問う前に、透が攻撃を受け後退りさせられた。

「透ッ!? 何もんだ、テメェッ!!」

 敵の攻撃に吹き飛ばされた透に駆け寄りながら、クリスが新たな敵にアームドギアのボウガンを向ける。

 現れた敵……グレムリンは、生身の状態で武器を向けられているというのに余裕そうな表情を全く崩さない。

 透はグレムリンが只者ではない事を即座に見抜き、立ち上がるとクリスを守るようにしながらカリヴァイオリンを構えた。それだけでクリスもグレムリンに対する警戒を強めた。

 2人から警戒を向けられ、しかしグレムリンは楽しそうに笑っている。

「フフフッ……さぁ、遊ぼうか?」
〈シャバドゥビタッチ、ヘンシーン。チェンジ、ナーウ〉
「変身」

 グレムリンはメイジに変身した。緑色の仮面をした、幹部のメイジだ。両手には透の物とはデザインが違う双剣を持っている。

 睨み合う透・クリスとグレムリン。先に動いたのはグレムリンの方だった。

「ハハッ!」

 いきなり加速するグレムリンに、僅かに反応が遅れるクリス。対して透は素早く反応すると、グレムリンが放つ二刀を受け止めた。

 そのまま始まる激しい剣戟。互いに双剣を武器にした2人の戦いは正に一進一退の攻防を見せた。互いに素早さが持ち味なのか、剣を振るう速度は目にも留まらず目まぐるしく立ち位置を変えるのでクリスは誤射を恐れて援護する事が出来ない。

 そんな中、グレムリンが一旦透から距離を取ると次の瞬間一気に接近して二刀を振るってきた。常人が相手なら反応も出来ない程の速度の攻撃。しかし透にはそのグレムリンの動きが見えていた。

 透は持ち前の反応速度でグレムリンの動きを見て、相手の動きに合わせてカウンターで攻撃を仕掛け――――

「――――えっ!?」

 その瞬間の光景をクリスは信じられなかった。彼女の目から見ても、今の透のカウンターは確実にグレムリンに直撃する筈だった。だが現実には、透の放った一撃はグレムリンの鼻先を掠めるだけで虚空を切り裂くに留めた。

 まさかのミスに、透も一瞬思考が停止してしまう。
 グレムリンはそこを見逃さず、無防備を晒す透に二刀による攻撃を見舞った。

「ッ!?」
「アハハッ!」
「透ッ!?」

 透が攻撃を外した事、直撃を容易く喰らった事が信じられないクリス。

「そらそらッ!」

 それだけでグレムリンの攻撃が終わる訳がない。剣を構え、次なる攻撃を仕掛けるグレムリンを透は迎え撃つ。

 が、そこからの戦闘はほぼグレムリンの独壇場だった。
 とにかく透が攻撃も防御も外しまくるのだ。どう言う訳か、完璧なタイミングで放った筈の攻撃も防御も意味を成さず、隙を晒してグレムリンの攻撃を喰らってしまう。

 グレムリンの一撃を喰らい、透が体勢を崩す。そこにさらに追撃が襲い掛かる。顔面を蹴り飛ばされ、透は堪らず大きく体を仰け反らせた。
 それでも何とか踏ん張り反撃を放つが、そんな攻撃が当たる訳も無く続く蹴りが再び顔面に叩き込まれる。二度も顔面を蹴られ脳を揺さぶられふら付く透に、ダメ押しの三発目の顔面キックが襲い掛かり彼は仰向けに倒れた。

「テメェ、あっち行きやがれッ!!」

 これ以上透をやらせてなるものかと、クリスがガトリング砲でグレムリンを銃撃した。素早く回避したグレムリンはクリスの思惑通り透から離れて行く。そのままグレムリンを追い立てるように撃ち続けたクリスは、奴が透から十分に離れたのを見てスカートパーツからミサイルを発射した。

「いくら素早くても、コイツならッ!!」
[MEGA DETH PARTY]

 無数の小型ミサイルがグレムリンに殺到する。ミサイルは次々とグレムリンが居る場所に命中し爆発し、奴の姿が爆炎と煙で見えなくなった。

「どうだ……?」

 あのタイミングだ。回避など出来る訳がない。一瞬しか見えなかったが、防御したようにも見えない。倒せはしなくても、大きなダメージは与えられた筈だ。

「へへ……どんなもんだ」

 何の動きも無い事に、クリスは安堵の表情を浮かべた。

「うんうん、凄い凄い。他の奴ならただじゃ済まなかったかもね」

 その声が聞こえたのはクリスの耳元からだった。声が聞こえると同時に、背後から腕を回され腹と顎先を撫でられる。

「~~ッ!?!?」

 指先が触れる程度に撫でられただけなのに、クリスは全身の鳥肌が立つのを感じた。くすぐったさよりも悍ましさを感じ、口からは声にならない悲鳴を上げる。

 彼女に迫る危機に、透が己のダメージを無視してグレムリンに斬りかかった。背後からの攻撃だったが、グレムリンは素早くクリスから離れた。

「と、透――!」

 グレムリンに向けカリヴァイオリンの切っ先を向け威嚇する透に庇われ、安堵するクリスは彼の腕をそっと掴んだ。

 クリスを背後に、しかし息を切らせてグレムリンと対峙する透。

 そんな2人、特に自分に向けて畏怖の目を向けるクリスの姿に、グレムリンは仮面の奥で笑みを浮かべていた。 
 

 
後書き
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次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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