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星河の覇皇

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第七十七部第四章 二度目の引き分けその六十

「凄いことになるんだよ」
「テレビ一つがエウロパにとってはオーバーテクノロジーですか」
「車だってな、そしてな」
「それにですか」
「ああ、マウリアの技術がエウロパじゃ最先端でな」
 連合から見れば遥かにローテクのこの国のものでもというのだ。
「そしてな」
「こちらの最新技術はオーパーツですか」
「そんな代物だよ、けれど技術はな」
「追いつこうとしたら数百年の開きも」
「数十年でだ」
 僅かこれだけでというのだ。
「追いつけるな」
「現に色々な国がそうしてきましたしね」
「かつてイギリスは世界の最先端技術を持っていた」
 産業革命の時だ、この時イギリスは世界の技術の先頭にあった。
「しかし色々な国に追いつかれたな」
「挙句には追い抜かれましたね」
「そうなった、フランスやドイツに追いつかれ」
「アメリカには追い抜かれましたね」
「そして気付けば欧州全体がな」
「世界の技術の最先端でなくなっていましたね」
「そんなものだ、技術は何百年の開きがあろうとも」
 それだけのものがあってもというのだ。
「言ってるだけでな」
「数十年で追いつけますね」
「だからマウリアにはな」
「これからもですね」
「気をつけることだ」
 くれぐれもというのだ。
「さもないとな」
「エウロパにもですね」
「追いつかれてな」
「追い抜かれますね」
「こっちはどんどん技術革新をしていってな」
「エウロパへの技術流出はですね」
「防ぐべきだが技術はな」
 これはというと、とだ。少佐は中尉に難しい顔で話した。
「わかるだろ」
「ええ、連合では常ですからね」
「何処かが最先端技術を開発して独占しようとしてもな」
「すぐに他の誰かが開発するか盗んで」
「独占出来なくなってな」
「連合中に広まりますね」
「技術の流出を止めるなんてな」
 このことはというのだ、この時代でもよく言われていることだが。
「相手が鎖国をしている国でないとな」
「流れてですね」
「その国のものになるからな」
「今までエウロパに流れなかったのが不思議ですね」
「あれだろ、エウロパもそれ程欲しがってなくてな」
「マウリアも流すつもりもなかった」
「連合はエウロパと対立していても外に向けられる力なんてなかったしな」
 その力とは何かもだ、少佐は話した。
「中央政府軍がな」
「統一政府が直接動かせる軍隊が」
「それが出来てエウロパにも勝った」
「連合には外に向ける力が出来てエウロパは負けた分傾いた」
「力のバランスが連合に大きく傾いたと見てな」
 それでというのだ。
「エウロパも技術を求めてな」
「国力回復と発展の為に」
「そしてマウリアもな」
 彼等にしてもというのだ。
「エウロパに力をつけさせて連合との勢力均衡の為にも」
「エウロパに連合の技術を渡しますか」
「ついでに自分達のものにもしてな」
「やれやれですね、今後このことは問題になりますね」
「そうだろうな、しかしマウリアの尻尾を掴むことは」
 今回を見てわかる通りにとだ、少佐は中尉に言葉の中にこのニュアンスも込めてそのうえで話した。
「かなり難しいだろうな」
「厄介な相手ですね」
「食えない相手だな」
「今回のことといい」
「全くだ」
 少佐はこう言て今は苦い顔になった、そうして今は大使館に戻ることを考えていた。そこでの美酒美食のことを。 
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