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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga20-C夢の終わり~Grief~

†††Sideなのは†††

ルシル君とアイリが亡くなった。この知らせを聞いたのは、2人が搭乗したはずの船がフェティギアの中央次元港で到着したのに、いつまで経っても2人が船から降りてこないことに不安になっていた頃。本局のクロノ君から、2人の遺体がミッドは西部エルセアで発見されたっていう連絡が入った。

・―・―・回想です・・・・―・―・

ルシル君とアイリが登場している船が到着して、お客さんが続々と降りてくるのを見届けていたんだけど、「あれ?」ってなった。最後と思しきご家族のお客さんが降りて、添乗員の女性が船のハッチを閉めた。だから「え? え?」ってみんなが混乱しだした。

「ちょ、ちょう聞いてくる!」

「私も!」

はやてちゃんとシャルちゃんが駆け出して、添乗員さんにルシル君とアイリが降りていないことを聞きに行った。会話は聞こえないけど、添乗員さんがモニターを展開してからの首の横振りで、ルシル君たちが乗っていないかったことを察するには十分だった。

「ルシルとアイリ乗ってなかった!」

「そもそも本局の時から乗せてへんって話や!」

「はあ!? それどういう意味よ!」

「監視室は、ルシル君とアイリはこの便に乗ってるって・・・」

「しかし監視室も添乗員も嘘を言うわけがない。となれば・・・」

「ルシルがあたしらを騙したってことか・・・!?」

「そんな! どうして!?」

顔を青くして戻って来たシャルちゃんとはやてちゃん。ルシル君たちが船に乗ったと思っていたからフェティギアにまでやって来たのに、それが全部無駄なことだったってことが判ったことで私たちは意気消沈。その現状を生み出したのがルシル君じゃないかって話になって、さらに悲嘆に暮れることに。

「と、とにかく今は、ルシル達の所在を明らかにしないと!」

「まずは一旦輸送車に戻らへん? さすがに私たちが一堂に集まってたら・・・」

周辺のお客さん達が何事かとザワザワしだした。自分で言うのもなんだけど私たちはかなりの有名人。主に戦闘力としてだから、何か重大な事件が起きているのかって不安にさせているみたい。はやてちゃんの提案によって私たちは輸送車に戻った。
改めて本局監視室やルシル君とアイリの端末に通信を繋げる作業に入る。相変わらずルシル君たちの端末には繋がらないけど、監視室は当然だけど普通に繋がった。でも監視室からは、ルシル君たちはフェティギア往きの船に乗ったことは確実だっていう返答のみ。

「あ、クロノから通信だ」

「多分、ルシル君はクロノ君にもメールを送ってるだろうし、それ関連だと思うよ」

「うん。みんな、ちょっと静かにして。はい。フェイト。・・・え? ううん。ずっと端末の電源は入れていたから、今みたいに普通に通信は繋がると思うんだけど・・・。うん、うん。なのは達の端末にも電話やメールを?」

みんなが静まったのを確認してからフェイトちゃんが通信に出た。内容からクロノ君が私たちに何度も連絡を入れたんだけど、どういうわけか繋がらなかったみたい。フェイトちゃんが私たちをチラッと見たから、端末を使っていなかったみんなが一斉に自分の端末を確認して、首を横に振った。私も一度アイリへのコールを中断してからクロノ君からの受信履歴を調べてみたけど、そんな履歴はどこにもなかった。

「なのは達の履歴にもクロノからのものは無かったみたい。・・・じゃあ何時間も私たちと連絡が取れなくなっていたってことだね。ごめん、原因が判らないけど連絡しなくて・・・。それで、何の用だったのかな? 私たちは今、姿を消したルシルとアイリを探しているんだけど、まだ見つけられなくて・・・。だからちょっと忙しいというか・・・ん? みんなも一緒に居るよ? チーム海鳴全員。・・・え? 今いる場所? えっと・・・、あ、うん、判った」

フェイトちゃんが端末を操作すると空間モニターモードになって、私たちの前にモニターが展開された。映るのはもちろんクロノ君なんだけど、目を赤く腫らしているし顔もやつれてる。明らかについさっきまで泣いていたって感じだ。そんなクロノ君を見るのは初めで、家族として一緒に暮らしていたフェイトちゃんとアリシアちゃんも「クロノ・・・!?」って目を見開いて驚いてた。

『で? 君たちは今どこに居るんだ? 見たところ車内・・・輸送車の中か』

私たちの驚きの表情はクロノ君も見て判っていると思うけど、泣き腫らした目を隠すこともなく気丈に振舞っているから私たちも言葉を呑んで、クロノ君にこれまでの私たち行動を伝えた。ルシル君が実はPT事件の際に亡くなったステアちゃんの正体だってことが判って、ルシル君とアイリを追ってフェティギアの中央次元港にまでやって来ていることなどなど。

『そうか。実は僕や母さん、ユーノらスクライア姉弟にも、ルシルからの別れのメールが届いていたんだ。当然君たちにも届いているということは判っていた。・・・フェティギアまで許可なく勝手に出撃していたことには驚いたが、今はそんな無理を通したことに対する責は問わない』

やれやれっていう風に首を横に振って呆れる様は、私たちが知るいつものクロノ君だった。でもすぐに右手で両目を覆って、『そうか。それが君の・・・』って声を震わせた。そして深呼吸を1回。

『ルシルとアイリは居所はこちらで掴んだ。あの2人は君たちの居るフェティギアじゃない、ミット西部エルセア地方で見つかった』

フェティギアじゃなくてミッドに居ることに私たちは「えっ!?」って驚いたけど、シャルちゃんの「一体どうやって!?」って疑問にも同意だ。監視室は隅々まで本局内のカメラの映像を観てもらって、それでやっと探し出した行き先がフェティギア往きの船が停泊している次元港だった。どうやってミッドに行けるっていうんだろう?って疑問が出るのは当たり前だった。

『それについては君たちとこちらのメール内容の差異なんだろうな。僕や母さんのメールの内容に、T.C.のリーダーから呼び出しを受け、プリムスの幻術で行き先を惑わした。転送用のカード型デバイスを受け取り、呼び出し場所のエルセア地方へ向かう、という旨が記されていた』

「T.C.リーダーからの呼び出し? そんなの罠に決まってるじゃねぇかよ!」

「いくらステアの正体云々でみんなから逃げたとしても、アイリと2人きりで会いに行くなんて危険すぎるわ!」

「アイリも融合騎なら、マイスター(ルシル)の無謀をやめさせなきゃダメだろ!」

「見つけたって言ってたけど、まさか大怪我しているのを見つかったってこと!?」

「びょ、病院は!? ケガの程度はどうなの!?」

「待って待って! あれでしょ! 実は、ルシルが勝ったんでしょ!?」

「うん、そうだよね! 辛くも勝利して、倒れているところを発見とか!」

クロノ君の泣き腫らした目、やつれた顔、弱々しい声。ルシル君たちが“T.C.”のリーダーに呼び出されたこと、捕まえたじゃなくて見つかったという言葉。そこまで聞いて、私たちの脳裏に浮かぶのだ不吉な漢字一文字。みんなもその一文字が思い浮かんでいるから、大きな声でそう言って誤魔化すしかないんだきっと・・・。

「それとも姿を確認できただけで逃げられちゃったとか!」

だから私だってそう言った。だけどクロノ君はみんなの言葉に対して小さく首を横に振るだけ。

「ねえ、お願い・・・。お願いだから、そうだって言って・・・。ルシルは、ルシル達はケガだけで済んだって・・・無事だって言って!」

「シャルちゃん・・・」

「・・・ルシルとアイリは、エルセアの無人区画で・・・遺体で発見された」

一瞬シンと静まる車内だけど、次の瞬間には「あああああああああああああああああああああああ!!」シャルちゃんの叫び声と、意識を失った「はやて!」ちゃんの名前を呼ぶヴィータちゃん達の叫び声が響いた。頭の中にルシル君との思い出が走馬灯のように駆け巡って、涙が溢れ出した私は声を上げて泣いた。

・―・―・終わり・―・―・

あの後、本局医務局の遺体安置所を訪れたけど、損傷が酷すぎて見ない方がいいってリンディさんとクロノ君に言われて、私たちはルシル君とアイリの遺体を見ることはなく、翌日には葬儀も済ませた。
ルシル君とアイリの死を聞かされてから1週間。私たちチーム海鳴は、局員最強の一角と謳われるルシル君の殉職という緊急事態を重く見た脅威対策室からの要請で特騎隊に参加することになって、今日も一切動きを見せなくなった“T.C.”を壊滅すべく動いていた。

「残る幹部はガーデンベルグ、そしてリーダーの2人・・・」

ルシル君とアイリの遺体と一緒に、“T.C.”幹部のレオン、プリムス、フォード、アーサーの遺体も発見されていた。遺伝子検査の結果、幹部の4人は現代人じゃなくて過去の人物のクローンであると局は断定した。ルシル君のオリジナルと因縁もあったということも後押しした結果だ。

(ルシル君、アイリ。私たちが必ず、2人の無念を晴らすからね・・・)

†††Sideなのは⇒フォルセティ†††

父さんとアイリお姉ちゃんが亡くなって2週間。父さんとアイリお姉ちゃんの殺害を機に一気に世論で叩かれ始めた“T.C.”のニュースが毎日放映されてる。学院だとクラスメイトやシスター達が僕を気遣ってくれる。そんな中でヴィヴィオ達は普段通りに接してくれるから気が楽だ。

「フォルセティ、一緒に帰ろう!」

「今日もお母様が美味しい夕食を作って待ってくれていますよ」

中等部3年となった僕のクラスメイト、ヴィヴィオとイクスヴェリア――イクスが、僕に声を掛けてくれた。コロナとリオは残念ながら別クラスで、アインハルトさんも卒業してもう学院には居ない。けど2人が同じクラスだったから、僕は救われてる。

「うん、帰ろう!」

鞄を手に取ってヴィヴィオとイクスの元へ。クラスメイトと挨拶を交わしながら教室を出て、「おーい!」って僕たちに手を振る「コロナ、リオ!」と合流。学舎から出ると、視界の端にスッと気配も無く現れる私服姿の大人が2人。ヴィヴィオ達も気付いているけど、目を向けることなくいつも通りにお喋りだ。

(早く捕まればいいのな、キュンナとグレゴールと融合騎・・・)

ヴィヴィオを狙っていた最後の大隊っていう犯罪組織の元幹部の3人が本局から脱走したって話を、教会騎士団幹部のカリムさんに聞いた。そんなわけで3人が逮捕されるまで、ヴィヴィオを陰ながら護衛する騎士が手配された。僕たちを遠巻きに見ている今の大人たちが、その護衛だ。学院に居る間はもちろん、行き帰り、そして自宅を護衛する3チームが存在していて、僕とヴィヴィオは以前みたいにフライハイト邸でお世話になってるから、交代で護衛してくれてる。

「アインハルトさんは、イクスんちで合流だっけ?」

「うん。ノーヴェやミウラさん、ユミナさんと一緒に来てくれるって」

「アインハルトさん、練習試合が近いけどいいのかな・・・?」

「ルーティンを変えると余計に調子が狂うって言ってたもんね、アインハルトさん」

「あー、それ判るかも。いつも通りに過ごした方が力が出るっていうの」

DSAA格闘競技・U19で、ジークさんや番長と今も競い合ってるアインハルトさん。ヴィクターさんやエルスさんはもう20歳以上だからもう別の階級だし、ジークさんも来年で20歳だからU19で戦えるのは今年しかないって焦ってたみたいだけど・・・。でもナカジマジムの仲間として一緒に鍛えることが出来て、アインハルトさんもヴィヴィオ達も嬉しそうだし楽しそうだから、まぁいいか。

「フーカさんは今日・・・」

「リンネさんとお出かけですね」

フーカさんは2年くらい前にナカジマジムの仲間になった選手で、リンネさんはライバルジムの選手だ。フーカさんとリンネさん、それにヴィヴィオ達との間で、ちょっと問題というか事件というか騒ぎがあったけど、今は練習試合や遊べるほど仲が良くなってる。

「おかえり、イクス。ヴィヴィオ、フォルセティ、コロナ、リオも、おかえり」

「「「「ただいま、ルーツィアさん!」」」」

お客用の駐車場で僕たちを出迎えてくれたのはフライハイト家の女中長の1人、ルーツィアさん。双子の妹でもう1人の女中長であるルーツィエは、養子としてフライハイト家に引き取られたから、シャルさんや、同じように養子として迎えられたイクス、セイン、オットー、ディードのお姉さんでもある。

「あれ? オットーとディードではなかったのです?」

首を傾げたイクスにルーツィアさんは「イリスから迎えに来るように言われてね」って苦笑いで答えた。朝起きてご飯を頂いていた時、オットーとディードが今日の送り迎え兼護衛って挨拶してたっけ。シャルさんからの指示ならしょうがないかな~。

「シャルさん・・・。ルシルさんのお葬式以来逢って――ご、ごめんフォルセティ!」

コロナがそこまで言うと、ハッとして僕に謝った。コロナも普段通りに過ごそうとしてくれてるけど、やっぱり父さんの話題になるとハッとして謝るってことがある。だから僕はいつも通りに「大丈夫、大丈夫だよ」ってコロナに微笑みかけた。

「父さんが亡くなったと聞いたあの日、僕はいっぱい泣いた。悲しむのはそれだけで十分だったんだ。セインテストの宿願。父さんが近い内に亡くなるのは判っていたし、だから覚悟もしていたし・・・――」

父さんとアイリお姉ちゃんが亡くなったその日、2人からメールを貰ってた。

――フォルセティ。突然で本当に申し訳ないが、父さんとアイリはこれから、セインテストの宿願を果たすべく最後の戦いに臨むことになった。勝敗にかかわらず父さんは生きては戻って来られない。アイリは可能な限り帰らせるつもりだが・・・。
いつも仕事で家を空けてばかりで、父としてお前には何もしてやれなかったと思う。ごめんな、フォルセティ。そんなダメな俺から頼み事なんてとは思うだろうし、家族想いな優しいお前なら頼むまでもないだろうが、母さんを、はやてを支えてあげてほしい。
最後に。セインテストの宿願は必ず俺の代で終わらせる。だから安心して、お前はお前の人生を歩み、幸せになってほしい。それが、ダメな父親の俺の願いだ。これまでありがとう、愛している、フォルセティ――

――やっほー、フォルセティ♪ うーん、お別れになるかもしれないし、帰れるかもしれないし、どう言えばいいのかな~? アイリお姉ちゃんはこれから、マイスターと一緒にバトってきます! 相手はめっちゃ強いから、アイリお姉ちゃんもどうなるか判らないの。フォルセティが大きくなるのを見守っていきたいけど、ごめんね? アイリお姉ちゃんは、女としての幸せを、融合騎としての存在意義を選びました。もし生きて帰ってきたらフォルセティに、アイリお姉ちゃんを叱る権利を贈呈します! えっと、それまでバイバイ。大好きだよ、フォルセティ――

父さんもアイリお姉ちゃんも帰ってこなかった。メールだったけど僕のことを想ってくれてるってことを伝えてくれたから、もう・・・。

「お葬式の時、ヴィヴィオとコロナが僕を抱きしめて一緒に泣いてくれたから」

「「フォルセティ・・・」」

父さんとアイリお姉ちゃんが納められた柩が埋められるとき、父さんとアイリお姉ちゃんを心配させたくなくて泣かないように耐えてた。でもそんな僕に気付いたヴィヴィオとコロナが両側から、泣いていいんだよ、男の子だからって我慢しなくていいんだよ、って言って僕を抱きしめてくれた。だから僕は耐え切れなくなって、ヴィヴィオ達と一緒に大きな声で泣いた。

「だから大丈夫なんだ」

そう言って普通に笑って見せると、ヴィヴィオ達も安心して笑い返してくれた。そんな僕の頭をルーツィアさんが撫でて、「えらいえらい。格好いいね」って褒めてくれた。
それから僕たちはルーツィアさんの運転する車でフライハイト邸まで帰った。家の地下には広い駐車場があって、ある車を見たルーツィアさんが「イリス達はもう帰って来てるみたい」って言った。みんなと一緒に屋敷に入ったところで、なんか怒鳴り声のようなものが応接室から聞こえてきた。

「キルシュブリューテを持ち出して何をする気なの!?」

「決まってるでしょ! ルシルとアイリを殺した連中の首を刎ね飛ばす!」

「何を馬鹿なことを! 公務員が堂々と殺人宣言など!」

「だって!」

「ルシル君とアイリちゃんも、あなたに殺人を犯させてまで敵を討てなんて絶対に思わないわ!」

「けどアイツら! ルシルとアイリを、わたし達に見せられないほどにしたってクロノは言ってた! あのクロノですら2人の遺体を見て後悔したって! そんなに酷く損傷させたんだよ! 許せるわけない! ルシル達が望まなくても、わたしは許さない! 必ず見つけ出してころ――」

「いい加減にしなさい! 犯罪者に命で償わせようとしない! 逮捕して、裁判にかけて、そしてしっかりと罪を償わせなさい! それが嫌だと言うなら知りません、この家から出て行きなさい!」

「~~~~~~っ!!」

シャルさんとマリアンネさんの言い争いがピタっと止まったかと思えば、ルーツィアさんが別の部屋に入るように無言で手招きしたから、僕たちは慌ててその部屋に入った。ほぼ同時にシャルさんの涙声な「わからず屋!」っていう怒鳴り声が聞こえて、応接室のドアが勢いよく開いた音がした。

「「シャルお嬢様!」」

「放っておきなさい、オットー、ディード。・・・はぁ。気持ちは解らないわけではないの。私だってルシル君のこと好きだったし、イリスのお婿さんになってほしいなって思っていた。それが惨たらしく殺されたと言うんだもの。ショックだったわ。でも、愛娘を殺人者にするわけにはいかないのよ。いくら相手が犯罪者で殺人犯だったとしても・・・」

「「お気持ちお察しします」」

「今は私の娘として接してほしいわ」

「「はい。お母様」」

ルーティアさんが部屋のドアを開けて、「行きましょう」って促したから僕たちは部屋の外に出て、応接室のマリアンネさん達に挨拶するべく向かった。ドアが開いていたからすぐに僕たちに気付いたマリアンネさんが「あら! おかえりなさい、イクス、ヴィヴィオちゃん、フォルセティ君、コロナちゃん、リオちゃん!」って笑顔で出迎えてくれた。

「ただいま、母様」

「「「「ただいま、マリアンネさん!」」」」

「「おかえりなさい、お嬢様方」」

オットーとディードにも「ただいま!」って挨拶を返して、マリアンネさんの指示でお茶を淹れに行った2人を見送った僕たちは、促されるままにソファに座った。ちなみにルーツィアさんは、後で合流するアインハルトさんやミウラと一緒に食べられるようにお菓子を作りに行ってる。

「フォルセティ君。はやてちゃ――お母様のご様子はどう? お仕事は休んでいると聞いているけど・・・」

「お葬式の後からずっと寝込んでます」

「そう・・・。うちの娘よりルシル君との付き合いが長く深いものね」

シャマルお姉ちゃんの話だと、母さんは心を病んでしまった、ということだ。父さんとアイリお姉ちゃんが亡くなってしまう原因を生み出したのは自分だって責め続けてるって。

(ごめん、父さん。僕じゃ母さんを支えきれないかも・・・)

母さんは僕を見ると、何度も泣きながら謝るし、僕を父さんと見間違えて押し倒されたこともあった。その時はアインスお姉ちゃんやリインお姉ちゃんに助けられて大丈夫だったけど・・・。僕は僕だって父さんは言ってくれたけど、母さんを支えるにはやっぱり・・・。
それからアインハルトさんとミウラが合流するまで、僕は母さんを元気づける方法を考えていた。
 
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