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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第7幕)

 
前書き
リュカ伝の世界では
1ゴールド = 100円 です。
1シルバー = 1円   です。
因みにシルバーは原作には無い通貨単位です。 

 
(グランバニア:ナハト・クナイペ)
リュカSIDE

23時を少し回った頃、目的の店“ナハト・クナイペ”に到着した。
レクルトとピエッサちゃんがデートしてた“マーレ・パラシオ”を出たのが20時30分頃……

何でこんなに時間が空いたのには訳がある。
このナイトバーは、高級店で結構人気なのだ。
そこで弾き語りを披露するアイリーンちゃんに仕事の依頼話をする……閉店間際に伺った方が店には迷惑を掛けないだろうと俺なりに気を遣ったのだ。

なのでルーラを使えば一瞬だったのだが、敢えて歩いて港地区から中央西地区まで歩いたのだ。
途中、可愛い女の子が客引きをしているキャバクラに入りそうになったが、『30(ゴールド)ポッキリ』との言葉に、19(ゴールド)しか持ってない事実を思い知らされ断念した。
ふぅ……夜の繁華街は誘惑がいっぱいだぜぇ!

さて……俺の冒険譚は置いといて、早速店に入ろう。
この店は0時に閉店で、23時30分にラストオーダーになる。
そんなタイミングでの来店客……受付のウェイトレスは良い顔をしてない気がする。

まぁこの店は音楽を聴くのがメインの店で、ステージ以外はかなり薄暗くなっており、ウェイトレスの表情も気の所為……もしくは見間違いかもしれない。
でも好都合だ。俺が王様だって気付かれてないからね。

俺は『端っこの席がいいな』と告げると、軽く会釈して席へ案内された。
ホント端っこだった。
店の出入り口はよく見えるが、ステージは柱が邪魔して半分見えない。ウケるぅ~。

席は2人用の小さなテーブル。
そのテーブルの上に、ほんのり灯るキャンドルが1本。
辛うじてメニューが見える様にしてある。

他の席を見ても同じで、客の顔は余り見えない。
俺は子供の頃から冒険をしてたし、奴隷時代にも暗闇で動ける様に鍛錬してきたから、この程度の明かりでも表情を見ることが出来るけど、他の人間(店員or客)には判らないだろう。

取り敢えず何かを頼まないと拙そうなので、メニューを覗き込む。
最初(はなっ)から酒は頼む気が無かったが、高額なことに驚く。
ブランデー1杯が15(ゴールド)って如何言う事よ!?

これはアレだな……
各種飲み物も食べ物も、音楽の視聴料が加算されてるんだ。
なんせメインが音楽のナイトバーだからね。

そんな訳で一番安いソフトドリンクを探す。
在るには在るのだが、それでも高い。
この店で一番安いオレンジジュースが6(ゴールド)って……!

「あ~……オレンジジュースをひとつ」
「畏まりました」
薄暗くて客から表情が見えないと思ってるのか、あからさまに嫌な顔をされた。ウケるぅ~。

因みに、今弾き語りをしてるのはアイリーン・アウラーだ。
このまま閉店まで演奏してるのか判らんが、今呼び出す訳にはいかないな。
(ゴールド)のオレンジジュースをチビチビやりながら待つとしよう。

そんなことを考えてると早速6(ゴールド)のオレンジジュースが席に届いた。
運んできたウェイトレスの表情は相変わらずだ。
そういう顔なのか? 笑顔なら可愛いのに。

早速6(ゴールド)のオレンジジュースを飲んでみる。
……美味いな!
(ゴールド)は伊達じゃない。

とはいえチビチビ飲むことに変わりない。
彼女(アイリーン)の仕事終わりはまだ先だろうから、6(ゴールド)もするオレンジジュースをガバガバ飲んではいられない。だって19(ゴールド)しか持ってないのだもの!

さて……飲み物の方で楽しめないのなら、音楽の方で楽しむしかない。
俺は6(ゴールド)のオレンジジュースを少し口に含んでは彼女(アイリーン)の演奏と歌声に耳を傾ける。

披露してる曲は以前からこの国で流行ってる曲であったり、学友が作った曲を許可を得て演奏しているのだったり様々だが、自身が作った曲で無いことをアピールしている。
相当あの事件が堪えたのだろう。

だが彼女(アイリーン)はこれで良いのだと思う。
才能が無い訳ではない。
無から作り出せないだけで、既存の名曲をこの上なく見事に表現できるのだ。

俺は彼女(アイリーン)の事を女版ウルフだと思っている。
アイツも自身の想像力で絵は描けないし、新たな計画などを思いつくことはない。優秀な記憶力から導き出して表現しているだけだ。

そういう意味で彼女(アイリーン)は一度聴いた曲は完璧に再現できるし、一度憶えたテクニックはミスること無く完璧に披露できるのだ。
正直言って羨ましい能力だし、作詞作曲が出来ないからと言って潰して良い才能ではない。

かなりの美人だしスタイルも良いし、正直なとこ口説きたい。
彼女(アイリーン)も以前の事件で俺に好意を持ってるのは自惚れでは無く確かだし、ちょっと口説いたら間違いなく落とせるだろう。

だが今回は自重しなければならない。
何故ならば、彼女(アイリーン)の才能を潰してはならないからだ。
天才と言える彼女(アイリーン)の才能は伸ばすべきなのだよ!

仮に口説いて王様の愛人になってしまったら、音楽に詳しくない者達は彼女(アイリーン)の才能に気付くことはなくなるだろう。
『王様の愛人だから活躍できてるんだ』と理解しようとせずに思考を止めてしまうだろう。

それだけは避けねばならない。
後ろ髪が引っこ抜かれる勢いで引かれるが、俺は彼女(アイリーン)に手を出してはいけない。
こんな美人が傍に居るのにぃ(泣)

俺のこの悲しみを知ってか知らずか、例のウェイトレスが近付いてきた。
何だろう……“もっと高い物を頼め”と催促だろうか?
表情は同じで不機嫌そうだ。

「ラストオーダーです」
ああ……もうそんな時間か。
彼女(アイリーン)の演奏が見事で気付かなかった。

「あ~……じゃぁもう一杯オレンジジュースを」
「……畏まりました」
凄い顔された。身分をバラしたら如何(どん)な態度に豹変するだろうか?(笑)

今ラストオーダーと言うことは、閉店まで30分。
俺の予想では閉店ギリギリまで演奏することはないと思ってる。
客に『もう終わりだから帰れ』と促す為に、そろそろ演奏も終わるだろう。

店の思惑よりも()を早く帰らせたい先程のウェイトレスが、最初のオーダーの時よりも早くオレンジジュースを運んできた。
因みに我慢できなかったのか、俺の席に近付く遙か前の段階ではブツブツと「貧乏人は早く帰れ!」と愚痴ってるのが聞こえたね。本人は聞こえてないと思ってるのだろう。ウケるぅ~。

「ねぇ君……」
「……はい」
俺は用事があって不機嫌ウェイトレスが戻る前に呼び止める。

「今ステージで曲を披露してる彼女に、終わったらで良いから僕の席に来る様に伝えて」
「……そういうサービスは行ってません」
サービスって(笑)

「別に彼女を金で買おうって事じゃないんだ」
「……しかし」
「兎も角、伝えるだけ伝えてよ。来るか来ないかは彼女の意思なんだし」
「……分かりました」

納得はしてないが、金払いの悪い客の相手はしたくないらしく、早々に立ち去る為に願いを聞き入れてくれた。
後は彼女(アイリーン)次第。
もし来なかったら彼女(アイリーン)に協力を仰ぐのは止めておこう。

愛人にしなくても、王様の周囲で働いてる噂が立てば、彼女(アイリーン)の才能を評価しなくなるかもしれないしね。
またピエッサちゃんに手伝って貰って、新たな才能を芸高校(芸術高等学校)で発掘しよう。

そんな事を考えてると、彼女(アイリーン)は演奏を終わらせて、客達から溢れんばかりの拍手喝采を受けていた。
勿論俺も拍手したよ。力一杯。

客からの拍手を受けた彼女(アイリーン)は深々とお辞儀をしてステージから控え室へと帰っていった。
あの不機嫌ウェイトレスは、俺からの依頼を遂行する為に、彼女(アイリーン)の後を追い控え室の方へと向かっていく。これで君を責めることは無いよ。

ステージでの演奏も終わり、この店のメインイベントが終了したことで、客の大半が席を立った。
そして金を払いゾロゾロと店から出て行く。
残った客は、まだ余韻に浸ってたり、まだ飲み物が残ってる者ばかりだ。早く帰れば良いのに。

暫くして店員(ウェイターやウェイトレス)が待機してる場所に不機嫌ウェイトレスと一緒にアイリーンが現れた。
不機嫌ウェイトレスがこちらを指さし「あの金持って無さそうなオッサン」と言っている。“オッサン”じゃねーし!

アイリーンは不機嫌ウェイトレスが指さす方を凝視して俺が誰なのか確認している。
店内は薄暗いままなので、あの位置からでは誰だか判らないだろう。
このままでは警戒して席までは来ないかもしれない。

俺はテーブルに設置されているキャンドルを手に取り、顔の位置まで持ち上げて彼女(アイリーン)からも認識しやすくする。
すると……

「陛下!!」
と大声で叫びダッシュでこちらに向かってきた。
店員も残ってた客らも、一斉に俺のことを見る。

おや? 失敗したかもしれん。

リュカSIDE END



 
 

 
後書き
一応断っておきますが、
アイリーン・アウラーは
リュカさんの好みにドストライクです。 
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