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星河の覇皇

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第七十六部第二章 戦闘開始その三十九

「だからだ、私も覚悟している」
「その時が来ることも」
「そのこともですね」
「そしてそのうえで、ですね」
「戦われていますね」
「そうだ」
 アッディーンの返事は明瞭だった、そこに隠しているものは何もなかった。
「また戦場に立つ、若し何かあればだ」
「それまでのことですね」
「その時は」
「戦場で倒れても」
「それでもですね」
「アッラーのご加護がなくなったのだ」
 その時はというのだ。
「そうなる、戦死すればな。だが」
「戦死すればそれでオムダーマンは終わりです」
「そして敗北をされるおつもりはないですね」
「だからですね」
「戦死されるおつもりはないですね」
「私はアッラーのご加護を信じている」
 これがアッディーンの返答だった。
「そして私の勝利もだ」
「だからこそあの艦ですね」
「あの艦を開発、建造されたのですね」
「艦隊にも配備した」
「左様ですね」
「全ては勝利の為だ」
 まさにその為だというのだ。
「だからこそ配備したしだ」
「使われますね」
「その時が来れば」
「切り札として切られる」
「そうされますね」
「その時を待っている」
 まさにという返事だった。
「私はな、シャイターン主席も容易に戦死なぞしない」
「ですね、あの方もです」
「アッラーのご加護があります」
「英雄には必ずアッラーのご加護はあります」
「それ故にですね」
「あの方もまた」
「彼の旗艦は被弾していない」
 シャハラザードはというのだ、非常に多くの至近でのビームやミサイル、魚雷が通ったがだ。これはアッディーンが乗るアリーもそうだった。
「それを見るとだ」
「そう容易にはですね」
「あの御仁も戦死なぞしませんね」
「最前線で采配を執り生きています」
「それを見ますと」
「だからだ、私もそう容易に死なず彼もだ」
 シャイターン、彼もというのだ。
「ここで戦死するとは考えないことだ」
「そうしてですね」
「時を待つ」
「あの艦を投入する時を」
「その時を」
「そうする、敵が持っていないカードがあれば」
 アッディーンはトランプ、この時代ではサハラでも遊ばれているこのカードでの遊びに例えて話した。遊びは時として文明を超える。
「それを切るだ」
「問題は切る時ですね」
「その時を見極めることですね」
「そのうえでカードを切る」
「それが重要ですね」
「そういうことだ、カードはあるのだ」
 既にというのだ。
「ならばだ」
「使うべき時に」
「まさに一瞬の時にですね」
「そのカードを切り」
「そして勝敗を決するのですね」
「この戦いは」
「情報は徹底的に隠蔽してある」
 ティムールの実に細部まで網を張っている諜報網からもだ、それこそオムダーマンのかつての首都、サハラの西の端にあるアスランの針が落ちる音すら瞬時にサマルカンドまで届くと言われているそれからだ。これにはアッディーンもオムダーマン国防省も相当な注意を払ってきたのだ。その結果のことだ。 
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