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星河の覇皇

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第七十六部第二章 戦闘開始その十四

「損害も敗れる方が三割を超える前にです」
「退いてだ」
「それで終わりですね」
「そうだ、しかし名将同士が争うとな」
「今の様にですね」
「恐ろしい損害が出てだ」
「そしてそのうえで」
「この様にさらに続く」
 損害はここで四割五分を超えた、両軍共。
「双方が力尽きるまでだ」
「共倒れ、いや」
「そうだ、互いに戦う力が完全になくなるまでだ」
「行われますね」
「それで引き分けとなるだろう」
 今の戦いはというのだ。
「やがてな、だが問題はだ」
「戦闘が終わるまでにですね」
「我々の損害がどれだけになるか」
「それが問題ですね」
「名将同士の戦いは獅子同士の戦いだ」
 こうも言った分艦隊司令だった。
「獅子と獅子は争わないな」
「何故争わないのかですね」
「それは互いに強いことを知っているのだ」
「獅子はただ強いだけではないですからね」
「聡明な獣でもある」
「だからこそ百獣の王ですね」
「そして百獣の王同士が争うとだ」
 聡明であるが故にお互いが強いことをわかっていてその為に互いに争うことがないライオン同士がである。
「どうなるかだ」
「どちらかが死ぬか」
「どちらかが力尽きるまで戦うか」
「どちらかですね」
「そうだ、この場合どちらも死なない」
 オムダーマンもティムールもだ。
「そうなるとだ」
「力尽きるまで、ですか」
「戦いとなる、川中島の様に」
 その時の武田軍と上杉軍の様にだ。
「まさにな、ただな」
「ただ?」
「川中島では多くの将兵が倒れたが」 
 それでもというのだ。
「互いの総大将は負傷しながらもな」
「生き残っていますね」
「上杉謙信は一騎で敵の本陣に切り込んだという」
 これは伝説だと言われている、しかし上杉謙信がそうした行動を普通に取る人物であったことは確かだったらしい。
「そして武田信玄と一騎打ちをしたが」
「両者は生き残っていますか」
「私は思う」
 こう前置きもして話した。
「戦場で倒れる将はそこまでだ」
「アッラーの守護がない」
「そうした将だ、しかしだ」
「アッディーン大統領は違いますか」
「あの方にはアッラーの加護があるな」
「はい」
 幕僚も確信を以て答えた。
「間違いなく」
「ならばだ、あの方は生き残られてだ」
「そしてですか」
「おそらくシャイターン主席もだ」
 対する彼もというのだ。
「まだだ」
「アッラーの加護を受けていますか」
「これだけの戦いはそうでないと出来ない」
 イスラム独特のあまりにも強烈な運命論、人の運命さえ全てアッラーが司っているという考えからの言葉だ。
「だからだ」
「今回の戦闘では」
「死なない」
 アッディーンもシャイターンもというのだ。 
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