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大阪のたんころりん

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第三章

「大坂の陣で」
「この辺りも戦場だったかしら」
「大坂の南の方で死んだのよね」
「平野の方でしょ、あの人が亡くなったの」
「そうだったかしら」
「そうじゃないの?それに幸村さんは化けて出ないでしょ」
 それならとだ、母は娘に真面目に話した。
「あの人は」
「そうかしら」
「あれだけの人は神様になってるわよ」
「化けて出るどころか」
「物凄く立派な人だから」
「お母さん幸村さん好きなの」
「大好きよ、ああしたタイプは最高の人でしょ」
 母は娘にこう返した。
「そりゃお父さんと好きで結婚したけれど」
「幸村さんはなのね」
「理想のタイプよ、だからあんたも結婚するならね」
「幸村さんみたいな人となの」
「結婚しなさいね」
「あんな凄い人今もいるかしら」
 そもそもとだ、真由は一緒に柿を食べる母に眉を曇らせて返した。
「果たして」
「いないかも知れないわね、それであんな立派な人はね」
「化けて出ないの」
「神様になってるわよ」
 母は娘に主観で答えた。
「だからね」
「あの人じゃないのね」
「何でも頭だけの妖怪でね」
「頭だけなの」
「魔の中に柿の実を撒くらしいのよ」
「柿って」
「ええ、変な妖怪よね」 
 母は柿を食べながらどうかという顔で言った。
「どうも」
「それってまさか」
 真由は母のその話を聞いて言った。
「たんころりんじゃないかしら」
「たんころりん?」
「この前叔父さんがうちに来た時にお話してくれたの」
「その妖怪のことを」
「ええ、柿の実をたべないでずっとほったらかしにしたらなるって」
「そうした妖怪がいるの」
「それじゃないかしら」
 自分も柿を食べつつ言った。
「まさか」
「そんな妖怪がいるのね」
「そうじゃないかしら」
「変な妖怪もいるわね」
「妖怪も色々だから」
 それでというのだ。
「そうした妖怪もいるみたいよ」
「そうなのね」
「ええ、ちょっと叔父さんにお話してみるわね」
 母から見れば兄にあたる彼にというのだ。
「そうしてみるわね」
「ええ、じゃあね」
「今日にでも携帯で聞いてみるから」
 こう言ってだ、真由は実際に夜に叔父に携帯で母から聞いた話をそのまま話した、すると叔父は携帯の向こうから答えた。
「それは間違いないな」
「たんころりんなの」
「ああ、もうな」
「そうなのね」
「じゃあその撒いてる柿を拾って全部食うって言ったらな」
 それでというのだ。 
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