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大阪のたんころりん

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第二章

「妖怪とか幽霊のお話が多くて」
「それでなんだね」
「私も信じてます、学校で妖怪や幽霊見た人多くて」
「そうなんだね」
「それで柿が妖怪になるんですね」
 真由は怪訝な顔で言った。
「そうなんですね」
「たんころりんっていうんだ」
「たんころりんですか」
「実際にそれになってね」
 それでというのだ。
「色々するみたいだからね」
「柿はほったらかしにしたらよくないんですね」
「うん、真由ちゃんは柿があったら全部食べてくれるから関係ないけれどね」
「だって美味しいですから」
 即答であった。
「ですから」
「残さないんだね」
「大抵熟れはじめる前に食べます」
 好きであれば食べるからだ。
「食べた分は勉強してテニスして」
「部活テニス部だからだね」
「太らない様にしています」
 カロリーを消費してというのだ。
「そうしてます」
「いいことだね、ただね」
「柿はほったらかしにしないことですね」
「全部食べることが大事だよ」
「妖怪になるから」
「そうです、そこは気をつけていこうね」
「わかりました」
 麻友は家に来た叔父に答えた。
「そのことは。あと叔父さん今日どうしてこっちに来てるんですか?」
「奈良からここにまでだね」
「東住吉まで」
「仕事でね」
「それで、ですか」
「たまたま来たんだよ、だから柿を直接持ってきたんだ」
 普段は段ボールに詰めて配送で送って来るのだ、それで麻友はいつも秋は柿を毎日の様に食べている。
「大阪の仕入れ先の人と仕入れる量のことでね」
「お話するんですか」
「だから大阪に来てね」
「届けてくれたんですね」
「そうなんだ、ちょっと寄ってね」
「そうだったんですね、有り難うございます」
 真由は叔父ににこりと笑って礼を述べた、もう柿は食べ終えていてお茶を飲んでそちらの味も楽しんでいる。
「わざわざ持って来てくれて」
「ついでだからね」
「いいですか」
「お礼はね、ただ柿はね」
「残さずですね」
「食べる様にしてね、真由ちゃんは大丈夫でも」
 柿が大好きでいつも残さないがというのだ。
「このことは覚えておいてね」
「わかりました」 
 真由は頷いてお茶を飲んだ、そうしてだった。
 叔父が送ってくれた柿を毎日食べていった、そうしつつ受験勉強を頑張り大学は推薦入試で合格した、それでだった。
 肩の荷が下りたと思ったがここで。
 家で笑顔で柿を食べている時に母に言われた。
「何か近所のスーパーで変な噂があるわ」
「変な?」
「ええ、お化けが出るらしいのよ」
「そうなの」
「あんたの学校にはそうしたお話多いけれど」 
 母もこのことは知っていた、それで言うのだった。
「この辺りにもあるのね、そんなお話が」
「真田幸村さんの幽霊とか?」
 真由は母に少し考えてから話した。 
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