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大阪のたんころりん

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第一章

                大阪のたんころりん
 内川真由は高校三年生、受験生である。背は一四二センチ程で中学生に見える童顔だ。楚々とした目と小さな唇、白く顎が尖った顔立ちは整っているが年齢より幼く見える。
 端が少し癖になっている黒髪を腰まで伸ばして左右に水色のリボンを付けて飾っている。小柄で童顔だが胸はかなりある。
 その真由に奈良県で農家をしている叔父の里見喜朗は大阪の東住吉区にある彼女の家に来た時に言った。
「真由ちゃんは柿好きだからね」
「だからですか」
「うん、また持ってきたよ」
「有り難うございます、私本当に柿好きで」
 真由は柿をどっさりと持ってきた叔父、がっしりした体格で一八〇近い背で岩みたいな四角い顔の彼に笑顔で話した。
「他の果物も好きでよく食べてますけれど」
「柿がだね」
「秋はそれが一番ですね」 
 笑顔で言うのだった。
「それに梨も好きですけれど」
「柿の方がだね」
「本当に」
「うちは柿農家だからね」
 長男なので家業を継いでそれをしているのだ,だが真由の母が大阪に仕事に出てそこで嫁いで真由が生まれたのだ。
「だからだよ」
「それで、ですね」
「訳ありで売りに出せない柿も多くてね」
 このことは苦笑いで話した。
「それでそうした柿は安売りに出したりね」
「うちに持って来てくれるんですね」
「捨てるのは嫌だからね」
「勿体ないですよね」
「そうだよね。それにね」
 叔父は早速柿を食べはじめた真由にこうも話した。
「柿はずっと放っておくとよくないからね」
「熟れ過ぎて腐りますね」
「いや、それもあるけれど」
「まだ何かあるんですか」
「柿は放っておくとよくないんだ」
「腐る以外にですか」
「仙台の方の話だけれど」
 宮城県のそちらのというのだ、東北最大の都市でもある。
「妖怪になるっていうんだよ」
「妖怪ですか」
「そうなんだよ」
「あの、妖怪っていいますと」
 真由は叔父に怪訝な顔になって話した、自分で柿を切って食べているが皮はそのままだ。真由は皮ごと食べる派なのだ。
「私の学校では」
「ああ、真由ちゃん八条学園だったね」
「今高等部にいて」
「大学もだね」
「エスカレーターで」
 それでというのだ。
「行かせてもらうつもりですが」
「やっぱり勉強しないとね」
「それでしてます、文学部に行くつもりです」
「文学なんだ」
「源氏物語が好きですから」 
 だからだというのだ。
「そちらを学びたくて」
「そうなんだね」
「ですから勉強も頑張っています」
「是非合格してね」
「そのつもりです」
「じゃあ栄養つけないと駄目だし」
 それならとだ、叔父は姪に話した。
「柿はね」
「どんどん食べていいですね」
「身体冷やすけれど」
 このことはよくないがというのだ。
「栄養も豊富だからね」
「頂きます」
「そうしてね、それで妖怪にね」
「柿はなりますか」
「あまり放っておくとね」
「そうなんですね、私の通ってる学校ですが」
 真由は話をそちらに戻した。 
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