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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その四十

「まさに」
「そうなるな、では頼む」
「それでは」
 タンホイザーはモンサルヴァートに頷いて応えた。
「その様にします、アッディーン大統領の様に戦います」
「それで頼む、それとだが」
 ここでまた話を変えたモンサルヴァートだった。
「遂にサハラで統一の為の戦争がはじまったな」
「こちらに向かう車中で聞きました」
 タンホイザーはモンサルヴァートに答えた。
「両国の宣戦布告を」
「そうか、それでどう思う」
「どちらが勝つか、ですね」
「卿はな」
「予測がつきません」
 タンホイザーはこう答えた。
「私には」
「そうか、卿もか」
「はい、あまりにもです」
「両者が強いからだな」
「確かに国力はオムダーマンが倍近いです」
 そこまでの差があるというのだ。
「それだけ見ればオムダーマン有利ですが」
「有利は有利でもだな」
「それだけで勝てるものではありません」
「それが戦争だな」
「はい」
 まさにとだ、タンホイザーはまた答えた。
「ですからどちらが勝つかといいますと」
「はっきりとは言えないな」
「国力が有利で敗れた例は幾らでもあります」 
 それこそ戦史上枚挙暇がない、タンホイザーもこのことは熟知しているのだ。伊達にエウロパ元帥宇宙艦隊司令長官にまでなった訳ではない。
「サハラでは特に」
「そのうえ将帥が優れていてもな」
 国力だけでなくだ。
「敗れた事例は多いな」
「僅かな綻びがあり」
「その綻びを衝かれてな」
「敗れた事例は多いです」
「だからだな」
「どちらとも言えません、この戦いは名将同士の戦いです」
 アッディーン、そしてシャイターンとのだ。
「名将と名将がぶつかり」
「そしてだな」
「激しい戦いになるのは間違いないですが」
「そこでだな」
「どちらかに綻びがありです」
「そこに相手が気付いて攻めればな」
「戦局が決定しますが」
 国力に関係なくというのだ。
「しかしです」
「どちらに綻びが生じるかはな」
「わかりません」
「だからだな」
「私は言えません、ですが綻びがありです」
「そこに相手が気付けばだな」
「そこで決まる戦いです」
 それが今はじまった戦いだというのだ。
「まさにその時に」
「オムダーマンでもティムールでもだな」
「それで勝敗が決します」
「そうか、卿もそうした結論か」
「閣下もですね」
「私にも言えない」
 オムダーマンが勝つかティムールが勝つかということはというのだ。
「この戦いは将と将の戦いだが」
「国力よりも」
「双方が拮抗しているからな」
「どうにも言えません」
「若し二人のうちどちらかが少しでも劣っていればな」
「そこが狙い目になりました」
「そうだな、軍人としての資質はな」
 尚政治家としての資質は謀略ならばシャイターン、政策ならばアッディーンの方がやや上ではと言われている。尚アッディーンが謀略の類を使ったことはない。 
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