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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga17-B侵撃のT.C.~2nd wave~

†††Sideイリス†††

局員の魔力を吸収するっていう特殊な猫の捕獲任務でファストラウムを訪れたわたし達は、成猫だって思っていた猫が実は仔猫で、そんな仔猫6匹の親らしき巨大猫と対峙していた。2階建ての一軒家と同じくらいの大きさな親猫(オスかメスかは判らない)はシャァー!って威嚇して、わたし達を見学してた民間人が悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

「ねえ。これ、戦っていいんだよね・・・?」

「いやぁ、どうだろ~」

「とりあえず閉じ込める! 一方通行(サンダルフォン)の聖域!」

セラティナが桃色に輝く結界で親猫を閉じ込めた。親猫は苛立たし気に結界の内壁をチラッと見て、目にも止まらない猫パンチを1発。結界はそれで破壊されてしまった。強固な結界を力ずくで粉砕する猫パンチ。普通サイズなら受けてもいいけど、あのサイズは無理、うん死ぬね。

「にゃあああああああ!!」

親猫が大きな声で鳴くと、仔猫を解放するためにわたし達に向かって飛び掛かって来た。すぐにその場からバラバラに散開して回避。

「セラティナ、とにかく公園全体に結界を張って民間人の進入封じ! セレスは凍結封印を! わたしとミヤビで引き付ける!」

「「「了解!」」」

――多層封獄結界(パーガトリー・アークケイジ)――

公園全体を結界で覆って、民間人への被害を抑える。わたしは“キルシュブリューテ”を起動して、ミヤビは「地鬼形態顕現!」って、機動力を犠牲に膂力と防御力が最高の地鬼へとモードチェンジ。そして大きな口を開けて迫ってきた親猫の口の両端を「ふんっ!」と両手で受け止めた。

「仔猫たちを巻き込まないように・・・!」

――雪風の凍牢(ベンティスカ・セリャド)――

親猫を閉じ込めるように球状の吹雪が発生。地鬼モードのミヤビはその発生速度から逃れられないだろうから、閃駆を使ったわたしがミヤビを肩に担ぐようにして離脱した。

「あ、ダメっぽい」

吹雪に呑まれた親猫だったけど、セレスの言う通り親猫は吹雪を食い破って「シャー!」怒りの声を上げながらセレスに襲い掛かった。わたしとミヤビでセレスと親猫の間に割り込み、盾としての役割を果たすべく、「ごめんね!」と謝ってからの・・・

「風牙烈風刃!」

風圧の壁をアッパーのように放って、親猫の顎を打ち上げた。親猫は宙で一回転してうつ伏せで地面に落下。顔を上げる前にミヤビは親猫の鼻を両手で掴んで、「ふんっ!」全力で押さえ付けた。親猫の巨体と力強さを持ってすれば普通の魔導師や騎士なら力ずくで吹っ飛ばせるだろうけど、ミヤビは普通じゃない。

「そのまま押さえておいて!」

――小型運搬領域(スモール・キャリアー)――

親猫が四角い結界に閉じ込められると、結界がゆっくり収縮を開始。そして一抱えほどの大きさにまで小さくなった。セラティナの腕に抱かれてる仔猫が暴れるけど、セラティナの方が力が強いから脱出は出来そうにない。

「さすがにここまで圧縮されたら力ずくでの結界破壊は無理でしょ」

親猫が抵抗できないよう腕1本動かせないほどの狭さの結界。しかも舌で舐められないように顔をお腹に来るように蹲らせてる。あとは仔猫たちが一斉に群がって来ないことを祈るしかない。

「こちらイリス。ルシル班、そっちの状況は?」

『3匹目が突然方向転換した。場所は――』

親猫の確保を知らせるためにルシルに通信を入れた。そんなルシルから伝えられた場所っていうのが「ここ?」だってことが判った。この猫たちは普通の動物じゃない。親猫の危機を察知したとすれば、助けるために集まるのも道理。だから「ルシル! 急いで合流して!」って、親猫が現れたこと、その親猫を捕まえたこと、仔猫たちが親猫を助けるためにこの公園に集まっているかもしれないことを大急ぎで伝えた。

『了解した! すぐに向かう!』

ルシルとの通信を切って、わたし達は親猫を閉じ込める結界の四方に立って周囲を警戒。仔猫の足の速さは魔導師の高速移動魔法と遜色ないレベルだ。どこに他の仔猫が居るか判らないけど、場所を定めればすぐにでも到着するはず。

「・・・来た!」

わたしとは正反対の方角を警戒してるセレスが叫んで、ミヤビも「来ました!」と教えてくれた。さらにセラティナ、わたしの真正面からも仔猫が「来た!」のを確認した。でもすでに地面はセレスの魔法で凍結されてるから、「おお、氷上のダンスだ」ってわたしはツルツル滑る仔猫を見る。体勢を立て直されるよりも早く「バインド!」を発動。体を曲げられないようにピンっとした体勢になるように捕縛した。これでバインドを舐めて消される心配はない。

「割とあっさり片付いたね」

「えっと、1匹、2匹、3、4、5。うん、5匹」

「ルシル副隊長のチームが捕まえた仔猫を合わせれば6匹ですね」

「親猫も捕獲できたし、任務は完了だね」

あとはこの猫たちを研究機関まで無事に連れて行けば本当に任務完了だ。とりあえず仔猫たちを1ヵ所に集めて、でも互いのバインドを舐めないように距離も開けて、ルシル達を待とう。それから3分としないうちに『これより結界に入る。撃つなよ?』ってルシルから通信が入ったから、「いつでもどうぞ!」って迎え入れる。ルシルとアイリとルミナとクラリスの4人が結界の中ににゅっと入ってきた。そんな4人に手を振ろうとしたら・・・

「イリス!」

「上だ!!」

ルミナとルシルの叫びにわたし達は考えるより早く前に向かって跳んだ。同時に頭上からゾッとするような気配がして、一直線に何か落ちてきたのが背中越しに判った。着地からすぐさま反転して、何が落ちてきたのかを確認した。

「首無し騎士・・・!?」

「デ、デュラハン!?」

「すごい! 初めて見た!!」

「本当に首ないんだ! 断面図、首の断面図見たい!」

そこに居たのは、物語などでよく見られる首の無い騎士デュラハンだった。全身鎧を纏った体は3mくらいあって、右手の剣もそれくらいの長さ、左手の円い盾はその半分くらいの大きさ。そんなデュラハンの剣は、親猫を閉じ込めていた結界の上面に突き刺さっていて、よく見ればその刃は親猫をも貫いてた。

「な・・・!?」

「何してんの!?」

「ルシル! 治癒術式を!」

結界が音を立てて割れ始めて、親猫から剣が引き抜かれると噴水のように血が噴き出した。6匹の仔猫たちが一斉に悲痛な鳴き声を上げた。今にも死にそうな親猫の元にルシルが駆けだそうとした時、「案ずるな。死ぬわけではない」って渋い声が聞こえた。周囲を警戒する前にわたしはその声の主が誰か判った。

「デュラハンの声・・・!」

「あ、顔! 顔がある!」

アイリがそう言って指を差した。デュラハンは物語だと自分の頭を脇に抱えるようにして持ってる。でも目の前のデュラハンは頭を持ってないから、そういうタイプなんだって思ってたけど違った。このデュラハンはなんと「剣の柄にある!」タイプだった。顔まで完全に覆うフルフェイスの兜を装着してるから素顔は判らないけど、声からしてきっとイケメンだ。

「どういうこと!?」

「それは、我の頭がなぜ剣に埋め込まれているか、という問いか?」

「ふざけるなぁぁぁぁーーーー!!」

怒声を上げて真っ先に突っ込んで行ったのは「クラリス!」だった。クラリスは召喚士だから動物への愛情は人一倍深い。でもだからって、あんな正体不明な存在を相手に怒りで突っ込むなんて自殺行為だ。ルシルがすぐに「魔術でフォロー!」って指示を出した。

「また・・・私は・・・」

駆け出そうとしてたルミナが踏みとどまった。この中で魔術を使えないのはルミナ(アイリもそうだけど、ルシルとのユニゾンすれば扱えるようになる)だけだから、魔術師が相手となると途端に戦力外になっちゃう。悔しそうにしてるルミナに声を掛けたいけど、今はクラリスをなんとかしないと。

「フェアシュテルケン・ガンツ!」

「なんと無謀な突進か!」

“シュトルムシュタール”全体に魔力付加しての攻撃力上昇の魔術を発動したクラリスに、デュラハンは頭のある大剣を持つ右腕を水平に振り上げて、クラリスが間合いに入ったことで一気に薙ぎ払った。でも大剣はクラリスに当たることなく空振り。クラリスはというと「遅すぎるんだけど」って嘆息。あの子は大剣の腹に立っていて、デュラハンが行動に入る前に腹を駆け抜けた。

「せぇぇぇぇい!!」

振り下ろした“シュトルムシュタール”の金棒がデュラハンの顔面に直撃。派手な金属音が轟いたけど、「怒りに任せたにしては随分と軽い!」ってデュラハンは高笑いしながら大剣を振るって、クラリスを引き離した。

制圧せし氷狼(インバシオン・ローボ)!」

セレスが氷の狼を20頭と作り出してデュラハンへと殺到させる。デュラハンは大剣と大盾で斬ったり殴ったりして狼を粉砕。

「無詠唱で威力は落ちるが、飽和攻撃で攻めればどうとでもなる。宝竜の抱擁(コード・ファフニール)!」

ルシルの炎、氷、雷、風、光×2、影、岩、水の龍が襲い掛かり、デュラハンは回避行動に移った。水の龍は酸で出来てるみたいで、飛び散らせてる水滴が地面に落ちるとジュッと音を立てる。デュラハンは特に酸の龍を警戒していて、必死に回避してる。

多殻結界(マルチプル・シェル)!」

そこにセラティナの結界だ。小さなキューブ状の結界が連続でデュラハンの体の至る所に発生して、触れた部位をその場に固定してく。だけどデュラハンは「ふん! ふん! ふん!」って力ずくで結界から逃れてく。

「猫が・・・!」

その最中、親猫や仔猫たちがすぅっと音もなく消滅した。これは「召喚獣・・・!」が召喚解除された際の現象だ。

「ようやくか。死ぬわけではないという我の言葉に対しての、なぜ、の答えはそれだ。我とは違って仕事も満足に果たせない役立たずの畜生の正体は召喚獣。貴様らに捕獲されるわけにはいかんのでな。我が召喚主が召喚を解除する前に、任務失敗の責を問うための意味を含めての始末だ」

「よーく解った。つまりお前の任務を失敗させれば、あの親猫のように串刺しにされても文句はないわけだ」

クラリスが余計に殺気立っちゃった。デュラハンの言葉を信じるならアイツも同じ召喚主によって召喚された召喚獣。うーん、同じ召喚獣でもこの違い。まぁ猫と首無し騎士のどちらが可愛いか問われたら、猫だって即答するけどね。

「待てクラリス! 君はナデシコの召喚を! 嫌な予感がする。セレス、セラティナは俺と飽和攻撃を続行! シャルとミヤビも適度に攻撃に参加! 新手が現れる可能性があるため、周囲警戒を優先! アイリ、ユニゾンだ! ルミナは俺のところに来てくれ!」

「・・・むぅ。了解」

「「「了解!」」」

「ヤヴォール!」

「? 了解」

そこからはセレスの氷狼、ルシルの龍群、セラティナの結界と順番に発動されて、わたしも絶対切断効果を持った魔力の刃、「飛刃・一閃!」を放ったり、ミヤビも炎鬼モードになって、拳の形をした炎の砲弾「業火拳衝!」を両手から連続発射したりして、もうリンチみたいになっちゃってる。

「ええい! チマチマとタチの悪い攻撃をしおって! 持っている武器を見る限り、貴様らも騎士であろう! 」

キレ気味なデュラハンはそう叫ぶけど、わたし達はそれを無視して攻撃を続ける。ルシルもルミナと何かを話しながらも攻撃を続行。おっと、デュラハンが体勢を崩したよ。ほんのわずかな隙だったけど、セラティナの多数結界で体勢が崩れた状態でその場で固定された。このままトドメを差してやろうとしたとき・・・。

「オクスタン・・・ズィィィィガァァァァーーーー!!」

自分の体を固定してるセラティナの結界を身を捩るだけで破壊するデュラハンの元に、ルミナがひとり突っ込んで行った。わたし達の飽和攻撃が途切れてる今、結界からも自由になったら面倒・・・でもないか。上半身だけ自由になったデュラハンは「来るがいい!」って、突っ込んでくるルミナに向かってまずは盾パンチ。

「せい!」

ルミナの左拳が盾と激突して、バキッと盾から音が。続けて右拳が盾に打ち付けられて、それで盾が真っ二つに割られた。デュラハンが「貴様!」って大剣を振るったけど、ルミナのアッパーによって大剣は空に弾き飛ばされた。

「しまった・・・!」

「もう私は戦力外じゃ、役立たずじゃない!」

デュラハンの懐に入り込んだルミナは、ジャンプしてからの上段後ろ回し蹴りをアイツの腹に打ち込んだ。今までならルミナが弾かれて終わりだったけど、今回はデュラハンの方が「むごぉ!」って地面に轍を作りながら蹴っ飛ばされた。

「内容は知らないけど、お前の任務は失敗したみたいね」

宙を舞う大剣に向かってそう言ったクラリスは今、召喚した九尾の狐ナデシコの頭に上に立っていて、「串刺しじゃないけどいいよね?」って、振り上げてた“シュトルムシュタール”を振り下ろした。それを合図にナデシコも振り上げた右前脚を勢いよく振り下ろし、バチン!と大剣を叩き落とした。ナデシコの前脚はそのまま落下する大剣を地面に叩き付けた。さらに前脚から炎が噴き出して追撃。

「あ、倒れた」

デュラハンの体が膝をつき、ドォーンと大きな音を立ててうつ伏せで倒れた。かと思えば、そのまま猫たちと同じように音もなくスゥっと消えていった。偉そうなことを言いながらも猫に比べれば雑魚も雑魚だったデュラハンの消滅を確認して、わたし達はホッと一息。

「ルシルぅ~~♪」

満面の笑みを浮かべながらルシルの元に駆け寄ってくルミナ。そしてそのままの勢いで「ありがと~~!」ってルシルにハグして、ルシルの頭を胸に抱えながらクルクル回る。ハグくらいならまだ許そう。だけどルシルの顔を自分の胸に抱えることは許さん。それが許されてるのは、わたしかトリシュかはやて、あとアイリだけだ。

「これ以上のライバル増加は許さ~~~ん!!」

ルミナとルシルを引き剝がすために突撃。そんなわたしの様子にルミナは「ごめん、ごめん♪」って謝って、ルシルをようやく解放した。

「いやだって嬉しかったんだよ。私の分解スキルは魔術に対して何の意味も無い力だったから、イリス達が魔術でT.C.と戦っているのを見守ることしか出来ないことがどれだけ悔しくて、辛かったか。そんな嫌な気持からようやく解放された! ルシルが解放してくれた! ならそのお礼に、私の胸に顔を埋めさせてもよく――」

「ない! よくない! その発想はない!」

「ダメ? 私に出来るお礼って体しかないんだけど」

「そんなわけないでしょうが! もっとこう、手料理とか肩を揉んであげるとか、健全なお礼の仕方があるでしょ!・・・って、これも体か。じゃなくて! ルミナはお礼しなくていいの! わたしが代わりにしてあげるから!」

ルミナは自分の胸を触りながらそんなことを言い出すものだから、わたしは首を横に振って反論。そうだ、部隊長であり幼馴染でもあるわたしが代わりにお礼してもいいんじゃん。
そんなわたしとルミナの会話を余所に、クラリスがルシルに「ルミナの胸、どうだった?」なんて聞いてるし。ルシルもまさかそんな質問されるなんて思いもしなかっただろうから、「はい?」って目を丸くしてる。ちなみにミヤビは顔を真っ赤にして明後日の方を向いてる。

(ごめんね、馬鹿な先輩たちで・・・)

大切な後輩であるミヤビのことを考えたら一気に冷静になれた。まったく、まだ仕事中なのにわたし達は何をやってるんだか。

「でもさ、イリス。これ見て。ルシルがくれた神器」

ルミナが首に掛けた紐に繋がれた蒼い指輪を胸元から取り出した。一目で判る。神器だ。わたし達の視線が指輪からルシルに移る。ルシルは「デスクワークの日々の中で鍛えに鍛えた、俺の作る最後の神器、ヒミンバルだ」って苦笑い。

「「「「最後・・・?」」」」

「レーゼフェアには左目の視力を奪われ、リアンシェルトには複製能力の発動を封じられた」

ルシルは前々から複製スキルが使えない原因に頭を悩ませてたけど、レーゼフェアの前例があるからスキル使用不能もリアンシェルトが原因だって結論を出したみたい。それはともかく最後っていうのが判らないから、ミヤビを除くわたし達は首を傾げた。

「複製能力があればこの程度の神器、1週間も掛からず作成できるんだがな。こんな簡単な物ですら10ヵ月も掛かった。他の神器なんて作ろうとしたら何年かかるか。さすがに俺もそんなに長くは生きていないだろうしな。だから最後の作品だ」

それからルシルは、指輪型神器“ヒミンバル”はまだ未完成で、本来ならどれだけ能力を使用してもルミナの魔力に神秘を付加できるはずだったみたい。だけど自分は役立たずだってヘコんでるルミナを可哀相に思って、未完成の状態で神器として起動したそうだ。

「じゃあルミナ。ヒミンバルの欠点のおさらいだ。デメリットをきちんと理解していれば、よほどのことがない限りは君の力になり続ける」

「あ、うん。未完成であるヒミンバルの神秘付加時間は、最大で4320時間――4ヵ月。そこから先は魔術師に神秘の含まれた魔力を充填してもらう必要がある」

「そう。4ヵ月でT.C.との戦いが終われば必要なくなるだろうが、それ以上の期間になるなら俺たちの誰かに頼んでくれ」

「ん。ありがと、ルシル。大切に使わせてもらうよ」

向かい合って笑みを浮かべるルシルとルミナ。羨ましいな~なんて思ってると、通信が入ったことを知らせるコール音が鳴り響いた。すぐに「こちらイリス」と応じた。

『部隊長。アコース監察官から通信が入りました』

「繋げて」

『フライハイト二佐。そちらの状況はモニターしていたから、こちらでファストラウム地上本部に連絡しておいた。だから今すぐ第4管理世界カルナログへ向かってほしい。あちらの首都にも猫たちが出現した』

ロッサの話に「な・・・?」って驚いたわたし達。いやだって猫たちの召喚が解除されてからまだ30分も経ってない。世界を隔てての遠距離召喚が出来るのか、それとも召喚してすぐにアラントスに渡ったのか。どちらにしてもここファストラウムでの猫騒動は完全に終わったんだ。

「了解。すぐに向かいます。全騎、シャーリーンに帰艦する!」

セラティナに結界を解除してもらって、すぐに軌道上に停泊してるシャーリーンへ転送してもらった。ファストラウムからカルナログなら転送できる距離。“T.C.”の召喚主がどういう理由でこんな騒ぎを起こしてるのか判らないけど、少なくとも1時間で猫たちの召喚を解くことはないはず。ファストラウムでも数日間と騒動を起こしていたし。

『部隊長。カルナログに出現した猫たちの映像が本部より送られてきました』

「こっちのモニターに映して」

エントランスに待機したままでその映像を見ることに。展開された巨大モニターにはファストラウムで追いかけっこをした猫たちはもちろん、親猫の健在も確認できた。すでに本局から各地上本部に猫騒動の情報が回ってるみたいで、カルナログの首都防衛隊も頑張ってる。

「ん? ブリッジ。30秒ほど巻き戻してスロー再生を頼む」

『了解です』

ルシルが指示を出すと、映像が指示通りに巻き戻ってスローで再生スタート。モニターを注視してたルシルが、「止めてくれ!」ってある場面になったところで指示。そこは普通のストリートで、首都防衛隊員と猫の追いかけっこを何事か?って見てる民間人たちが映ってる。

「コイツも転生していたのか・・・」

「コイツ? この茶髪の男の人?」

「転生っていうことは、ルシルのオリジナルやシャルロッテ様たちと関わりがある・・・?」

「ああ。オリジナルからすれば敵で、騎士シャルロッテからすれば味方だった男。当時の召喚魔術師の頂点に立っていた大魔術師、召喚王アーサー・ブラック・セダンだ」 
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