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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その二十八

「しかしその敗戦から多くのものを学んだ筈だ」
「今のままでは連合に勝てない」
「技術でも国力でも」
「あの国の圧倒的な力の前では」
「一旦戦争になれば」
「そうだ、我々は大きく劣っている」
 連合と比べてというのだ。
「このことを認識してだ」
「敗戦から復興し」
「そして発展に向かい」
「技術も国力も備えようとしている」
「それが今の我々ですね」
「勝てないなら勝てる様になることだ」
 モンサルヴァートがここで言ったことは実に明快だった。
「その力を備えることだ」
「そういうことですね」
「内政、そして技術革新と新天地への進出によって」
「その力を備えることですね」
「そうだ、欧州は確かに大航海時代で発展した」
 この時代からはじまったというのだ。
「新天地から多くの富を手に入れた」
「そして産業革命を迎え」
「一気に発展しましたね」
「そのうえで世界を指導するまでになった」
「まさにそこからでしたね」
「それまで技術もだ」
 大航海時代までの欧州の技術はというのだ。
「些細なものだったな」
「アラブや中華と比べれば」
「実に粗末なものでした」
「とかくあらゆる技術がそうでした」
「我々のものは粗末でした」
「それが変わった、ルネサンスと共にだ」
 実はこの時代は大航海時代と重なっているのだ、コロンブスのアメリカ大陸発見は一四五三年だがダ=ヴィンチやミケランジェロの活躍はそれよりも何十年も後なのだ。
「あの頃は芸術だけでなく技術も変わったが」
「そこからでしたね」
「我々は大いに変わったので」
「それで、ですね」
「我々は大航海時代も迎える」
「ではルネサンスもでしょうか」
「技術的にはそうなるだろう」
 モンサルヴァートは技術としてルネサンスを語った。
「残念だが私は絵画や彫刻には疎い」
「ダ=ヴィンチやミケランジェロは」
「そちらはですか」
「名前と代表作は見てもいるが」
 それでもというのだ。
「私は軍人だ、芸術家でも学者でもない」
「だからですか」
「そこまではご存知でない」
「そうなのですね」
「そうだ、しかし技術なら言える」
 そちらの分野ではというのだ。
「我々は今マウリアから技術を得ている」
「ルネサンスの欧州がそうだった様に」
「あの時欧州はアラブやビザンツから技術を得ましたが」
 コンスタンティノープル陥落とそれに伴うビザンツ帝国滅亡で欧州に亡命した者達によってである。
「その時と同じく」
「マウリアからですね」
「技術を手に入れ」
「そしてそのうえで」
「大海原を踏破し」
「富を手に入れるのですね」
「それをはじめるのだ」
 これからはというのだ。
「我々はな、だからだ」
「建造する艦艇もですね」
「大海原を越えるものにする」
「そして暗黒宙域の先に辿り着き」
「遂にはですね」
「我々は連合を凌駕するのが目標だが」
 ギルフォードの戦略だ、彼にとっては百年かさらに先まで見据えて考えることは当然のことであるのだ。 
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