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銀河転生伝説

作者:使徒
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第20話 ヴァルハラ星域会戦


ガイエスブルク要塞は陥落し、ラインハルトは要塞へと進駐した。
だが、そこに反乱の首謀者たるブラウンシュバイク公の姿は無かった。

『逃げたか?』と誰もが思ったが、一部の兵たちの証言によるとブラウンシュバイク公は自害し、腹心であるアンスバッハ准将がその遺体を運び出したとのこと。

では、アンスバッハは何処へ消えたのか?

普通に考えて、既に要塞から脱出したと見るべきだろう。
しかし、いったい何処へ行き何をしようというのだ?

一番可能性が高いのはフェザーンである。
せめて、主君の遺体だけは曝されまいとしたのだろうか……。

疑問の種は尽きないが、いずれにせよ勝利は勝利。
兵たちは喜びに酔いしれた。

そんな彼らの元に、一報の電報がもたらされる。

『ハプスブルク大公ニヨル反乱発生、帝都オーディンヲ奪取サレタリ』

今まで、何の動きも見せなかったハプスブルク大公が遂に動く。

戦いは、まだ終わりでは無かった。


* * *


ハプスブルク大公の命を受けた部隊が、リューネブルク中将指揮の下、ラインハルトらに占領された帝都オーディンの主要施設を奪還していく(※その中に痛装甲服を着た装甲擲弾兵たちが混じっていたのは、黒歴史として歴史の闇に葬られた)。

ハプスブルク大公のこの行動に、リヒテンラーデ公らエルウィン・ヨーゼフ派の貴族や中立を宣言していた人物たちの多くが同調した。

いや、彼らは最初から裏で繋がっていたのだ。
今日、この時の為に。
ローエングラム候ラインハルトを追い落とす為に。

・・・・・

ハプスブルク大公アドルフは、帝都オーディンで会見を開いた。

「我々はここに、隠された真実を暴かなくてはならない。諸君らは疑問に思わなかっただろうか? 先日のヴェスターラントの一件での映像、あまりにも鮮明に映り過ぎていることに」

『どういう事だ?』と、この映像を見ていた人々からざわめきが起こる。

「ブラウンシュバイク公は自らの領地であるヴェスターラントに核を撃ち込み、200万の領民を虐殺した。これは許し難い所業だ。しかし、何故その映像が最初から撮られているのだ? ローエングラム候の艦隊が急いで駆け付けたが、間に合わなかった。私はそう聞いた。だが、現実にはこの映像を撮影した艦は間に合っている。いや、映像が攻撃開始直後から撮られていることを考慮すれば、これを撮影した艦はブラウンシュバイク公の艦よりも先にヴェスターラントへ着いていたことになる。このような事が可能なら、少数の高速艦艇を送り込み攻撃を妨害することだって出来たはずだ。つまり、ローエングラム侯はブラウンシュバイク公の核攻撃命令を知りながら、自らの政治喧伝の為に利用したのだ!」

暴かれる真相に、人々は絶句する。

「先年、叛徒共が不届きにも帝国領内へ侵攻してきたとき、ローエングラム元帥は辺境星域の食料物資を引き揚げ、焦土作戦を行った。あの作戦で多くの臣民が飢餓に見舞われ死んでいった。確かに、作戦を認め実行した我々もローエングラム候の共犯と言えよう。だが、叛徒共を撃退した後、辺境星域への何のアフターケアも無いのはどういうことだろうか? 彼が真に平民のことを考えているなら、何故彼は食料を、医療物資を送らない? …………答えは簡単だ、彼にとってそんなことはどうでもよかった。平民とは自分が政権を取るための道具でしかない。そういうことだ」

貴族支配の終焉を感じていた民衆には衝撃の大きい話である。
だが、世の中それほど奇麗で都合良くはない。

「我々は、以前から彼を危険視してきた。これを聞いて貰えば、その理由が分かるだろう」

流されるラインハルト、キルヒアイス、オーベルシュタインの言葉。

それらは、すべて不敬罪に問われてもよい内容であり、帝位簒奪の意思を示すものだった。

「これが奴等の本性。……なるほど、今までは全て奴等の思惑通りに事が運んできた。しかし、これからは違う! 我々は彼による反逆を許さない。私ことハプスブルク大公アドルフはローエングラム侯ラインハルト、ジークフリード・キルヒアイス、パウル・フォン・オーベルシュタインの3名を断罪し、帝国に秩序と繁栄を取り戻す所存である! 手始めに、彼らの爵位及び軍における階級を剥奪することをここに宣言する」

何か話が肥大化しており色々と滅茶苦茶なような気もするが、大貴族でありながら領民からの支持も高いハプスブルク大公がラインハルトの敵に回ったことを明確にしたのは帝国全土に衝撃を与え、大きな波紋を呼んだ。

そして、先の一件の事もあり、ラインハルトの支持率は急速に低下しいった。


<アドルフ>

ラインハルトの支持率急落中www
あいつらテラ涙目w

後は、向こうから殺られにノコノコやってきたのを返り撃ちにするだけだ。

えっ?
決戦を挑まずガイエスブルク要塞に籠城?
出来るわけがない。

先程の演説で、民衆やラインハルト軍の兵たちの間には不信感が広がっている。
これは、此方側に有利な要素はあってもラインハルトとっては不利な要素しか無く、時間と共にそれは決定的になっていく。

ならば、不安が完全に表面化する前に短期決戦を挑んで俺たちを破る。
それしかないだろう。
ビッテンとかそういうの得意そうだし。
ラインハルトも戦うの大好きだろ?

そもそも、グリューネワルト伯爵夫人――アンネローゼはこちらの手の中なのだ。
あのシスコンは死んでも引けんだろう。

それに、万一ガイエスブルクに籠られたところで何の問題も無い。
ガイエスブルクには原作でヤンがやったのと同じ仕掛けを施してあるからな。

合言葉は『ラインハルトm9(^Д^)プギャーw』。

フヒヒ……これで勝つる!


* * *


<ロイエンタール>

「我々は全軍を以ってオーディンへと向かい、逆賊ハプスブルク大公を撃つ!」

「それは無謀です。敵の戦力は我々を上回り、人材面でも優秀な人材が多い。ここはガイエスブルクに籠城なさるのが上策かと」

ハプスブルク大公との決戦を主張するローエングラム侯と、それを反対するオーベルシュタイン。

このままでは勝ち目は薄い。
そう言いたいのだろう、義眼の参謀長閣下は。

確かに、それも一理ある。

だが、帝都オーデインはハプスブルク大公の支配下にあり、グリューネワルト伯爵夫人の安否は不明。
最悪、人質……ということにもなりかねん。
幸い、今敵は何も言って来ないがな。

しかし、いつ何時、何がどうなるかは分からん。
ならば、人質として利用される前に決戦に持ち込みそこでハプスブルク大公を撃つ。
それしか無かろうな。

敵の戦力が多少不透明ではあるが……。

アルテナでのシュターデンの謎の失踪。
キフォイザーでのナトルプの行動。

結局、あれ以降シュターデン、ナトルプ、ドロッセルマイヤーの3名は貴族連合に再合流していない。

おそらく……いや確実に奴等は最初からハプスブルク大公と通じていた。
貴族連合に与したのは、有り余っている艦隊を引き抜くためか。
抜け目のない男だ。

この分だと、シドー大将やリーガン大将辺りも味方に引き込んでいる可能性が高いだろうな。
丁度都合よくキフォイザーで大量の戦利品を得たことだろうし。

俺やミッターマイヤー、ローエングラム侯がハプスブルク大公やナトルプ、シドー、リーガンに劣るとは思わん。

だが、こちらは貴族相手とはいえ連戦で疲れており、相手は無傷。
その上、質で拮抗し数で上回る……か。

「そうもいかん、あの演説によって民衆の私への支持は急速に薄れていっている。他の貴族共の言葉なら何を言おうとこうは為らなかったのだろうが、ヤツだけは別だ。このままでは、我が軍からも離反者が続出するだろう。そうなれば、如何にガイエスブルクに籠ろうと敗北は避けられん。ここは、ハプスブルク大公に決戦を挑み勝利する意外に道は無い!」

我らがローエングラム侯は決戦を選択したようだな。
それも悪くない。

さて、久しぶりの強敵だ。
俺も楽しませてもらおうか。


* * *


――宇宙暦797年/帝国暦488年 9月26日――

ローエングラム、ハプスブルク両陣営は帝都オーディンのあるヴァルハラ星系外縁部において対峙した。

ローエングラム陣営――9個艦隊10万隻。
ハプスブルク陣営――16個艦隊20万隻。

アムリッツァ星域会戦すら上回る、史上最大の会戦が幕を開けた。


先ず、『疾風』の異名を持つ右翼のミッターマイヤー艦隊がハプスブルク軍左翼へ突撃を仕掛けたが、ナトルプ上級大将の艦隊によってその進攻を阻まれる。
ナトルプも機動戦を得意としており、ミッターマイヤーに対するには正に打って付けの人物であった。

次に、左翼のロイエンタール艦隊もハプスブルク軍右翼へと攻撃を仕掛ける。
しかし、ハプスブルク軍の右翼を任されていたメルカッツ上級大将によってその攻撃は阻止された。
ガイエスブルグでの決戦時、一時は自害も考えていたメルカッツであったがシュナイダー少佐による説得もあり、ハプスブルク陣営に合流していたのだ。

その後、他の艦隊も戦闘を開始する。

ラインハルトは最も指揮能力の低いシュターデン艦隊を集中的に狙わせたが、ハプスブルク軍は即座に予備兵力の一部を応援に回す。

アドルフは2倍という戦力差から予備兵力の艦隊を多く裂いており、どこか一つの戦線が崩壊しても即座に補強できる態勢を整えていたのである。

序盤は、数において勝るハプスブルク軍に軍配が上がった。


<アドルフ>

戦闘が始まってから3時間。
未だ戦況に変化はない……が、俺の原作を見た経験談からすれば、そろそろあいつが動くはずだ。

『突撃ー!』

ビッテン率いる黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》が猛攻をかけてくる。

ほらな。

「閣下、どうやら敵はこの段階で切り札を切ってくるようです」

真面目な顔で、参謀長のグライフスが告げる。

まあ、ラインハルトとしては数で圧倒的に劣っている分、せめて流れだけでも掴んでおきたいところだろう。

「前線、突破されました!!」

早くも前線が突破された。
っていうか、さすがに早すぎね?

『猪突猛進こそ我らの本領よ。敵に如何なる奇計奇策があろうとも力で打ち破ってくれるわ』

くくく、猪が何かゴチャゴチャとほざいているが、黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》が突っ込んで来ることなど最初からお見通しなのだよ。
我が領のマッドサイエンティストたちが作った最高傑作をその目に焼き付けるがいい!

「ドーラを出せ、猪は所詮狩りの獲物でしかないということを教えてやるのだ」

超砲艦ドーラの武装はただ一門の艦首砲のみ。
だが、その威力はアースグリム級の艦首大型砲すら遥かに凌ぐ。

ゲルマン砲の拡大発展型のため、一発撃てば艦首ごと艦の前半分が吹き飛んで修理するまで使い物にならなくなるけどな(笑)。
て言うか、それが前提で設計されてる。
反動が凄いから、基本無人操縦だし。

ま、そんなわけで要塞砲にすら匹敵する一撃は使い所さえ間違わなければ大きな武器となるわけだ。

「ドーラ、主砲発射……撃て!」

ドーラから放たれた光がビッテンフェルト艦隊を呑み込む。

お、一気に半分ほど消し飛んだなwww
ビッテン涙目w
黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》恐れるに足らず。

なんかドーラも艦首だけじゃなく艦全体が吹っ飛んで粉々になったように見えるが……そんなの関係ねえ!

敵は混乱状態だ。
この機を逃す手はない。

「ウィルヘルム、ヴィクトリア、ピョートル、カルロス、クイーン・エリザベス、キング・ジョージ、マリア・テレジア、カイザー・カールを前進させ、敵正面に火力を集中させろ!」

高い火力を持つヴィルヘルミナ級戦艦8隻を先頭に猛火を浴びせると、守勢に弱い黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》の艦艇は次々と火達磨になっていく。
見ろ、艦《ふね》がゴミのようだ……あれ? この台詞前にも言ったような……。

ラインハルトが『くっ、ビッテンフェルトは失敗した。よもやあんな隠し玉を持っているとは……』とか言ってるのが目に浮かぶぜぇ。

さて、これからどうする?ラインハル…ト……?

(;つД⊂)ゴシゴシ

(゚Д゚;)あれ?

なんかまだ黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》が突っ込んでくるんですけど。

それに……あれは、ケーニヒス・ティーゲル!!

くそぅ、ビッテンのくせになんてしぶといんだ!!
そういえば、原作でも結局最後まで被弾すらしなかったなケーニヒス・ティーゲル。
何気にあいつ運だけなら銀河一じゃね?

『怯むな、突撃だ!』

ビッテンフェルト中将率いる黒色槍騎兵《シュワルツ・ランツェンレーター》は全艦艇の7割を失いながらも未だ突撃を止めない。

『この気を逃してはなりません。ビッテンフェルト艦隊に続きましょう』

続いて、キルヒアイス艦隊もビッテンフェルトの空けた穴に続く。

こいつら調子に乗りやがって。
だが、俺の切り札がドーラだけだと思うなよ。

「アドミラル・シェーア、アドミラル・グラーフ・シュペーに主砲を撃てと伝えろ」

アドミラル・シェーアとアドミラル・グラーフ・シュペーは、要するにアースグリムの同型艦だ。
つまり、艦首に大型ビーム砲を備えている。
ドーラやゲルマン砲よりは劣るとはいえ、その威力は大きい。
ボロボロのビッテン艦隊を壊滅させ、その後ろにいるキルヒアイス艦隊にも相応の打撃を与えること間違い無しだ。

2本の光が放たれ、またもビッテンフェルト艦隊に直撃する。

勝ったな!

と思ったが、光が多少治まると俺の瞳にあり得ないものが映る。

ケーニヒス・ティーゲル!!!

な、なんだとぉ!!

傷一つ付いて無いケーニヒス・ティーゲルがバルバロッサの目前まで迫る。

「全砲門斉射! あの艦をなんとしても止めるんだ!!」

幾本のビームがケーニヒス・ティーゲルを貫くが、全身から火を吹きながら、それでもケーニヒス・ティーゲルは止まらない!

ちょ、おま、待て!

直後、四方からビームが殺到し、ケーニヒス・ティーゲルが爆沈する。

あ、あぶね~。
今のはホント危なかった。

「閣下、ご無事ですか?」

「バルトハウザー准将か、助かった」

だが、危機はまだ去って無い。
ビッテンの次はキルヒアイスか……。
これだからチートな連中を集めた軍を相手にするのは嫌なんだ。

「閣下、キルヒアイス艦隊が猛攻を仕掛けてきております。ビッテンフェルト艦隊にズタズタに切り裂かれている現状では防ぎきれませんぞ」

「ドイッチェラントとリュッツォーの主砲で砲撃して敵の勢いを削ぎ、その間に態勢を立て直す。そうすれば数で上回るこちらが有利だ」

このドイッチェラントとリュッツォーもアースグリム級の戦艦である。

正確に言うならば、ドイッチェラントとリュッツォーが3、4番艦。
アドミラル・シェーア、アドミラル・グラーフ・シュペーが5、6番艦となっている。
2番艦のアハトアハトと7番艦のスルクフはラインハルトの本隊にお見舞いしてやるために後方で待機中だ。

「主砲、発射!」

ドイッチェラントとリュッツォーより主砲が放たれる。

2本の光がキルヒアイス艦隊を切り裂いた。


* * *


キルヒアイス艦隊の勇戦も所詮は一時的なものでしかなく、アースグリム級の主砲によって勢いが止められると、次第に数の差で劣勢となっていった。

特に、ドイッチェラントとリュッツォーの砲撃は勢いを止めただけでなく一時的に混乱を来たさせ、キルヒアイスが混乱を鎮める前に圧倒的な砲火が前衛部隊に降り注ぐ。

その状態から態勢を立て直したのは、さすがにキルヒアイスと言えよう。

しかし、ハプスブルク艦隊は数の多さを笠に攻め立てる。

ハプスブルク艦隊の猛攻でキルヒアイス艦隊の艦列が僅かに乱れた、まさにその時――バルトハウザー准将率いる300隻程の小艦隊が高速で強襲し、旗艦テューリンゲンを撃沈。

ここに、ラインハルトと共に帝国の簒奪を誓った赤毛の提督はその短い生涯を終えたのであった。

「おのれぇ、よくもキルヒアイスを!」

怒りに燃えるラインハルトは麾下の艦隊を前進させ、ハプスブルク艦隊へ攻勢をかける。
本来なら、実力において圧倒的に勝るラインハルト艦隊が攻め勝ったことだろう。
が、アドルフにラインハルトと正面切って戦う気は無かった。

「アハトアハトとスルクフの主砲をラインハルト艦隊の両翼に打ち込め。その後、突出した本隊に砲火を集中しろ」

アハトアハトとスルクフの主砲が放たれ、ラインハルト艦隊の両翼が砕ける。

これによりラインハルト艦隊の両翼は突撃のタイミングを逃し、本隊だけが突出する形となった。

「敵の砲撃が集中してきます」

「く、いったん後退せよ……」

「敵に態勢を立て直させるな、ファイエル」

アドルフはこの機にラインハルトを撃ってしまうつもりだったが、ラインハルトは陣形を乱さず迅速に後退したため、それを果たすことはできなかった。

「ちっ、しぶとい。そろそろラインハルトの本隊にグスタフの主砲をくらわしてやれ!」

ドーラ級2番艦グスタフの主砲がラインハルト艦隊に狙いを付ける。
そして、グスタフの主砲が火を噴く――はずであったが……。

ドッカ~ン

「あれ? 爆沈したぞグスタフ。それも内側から」

ドーラ級超砲艦2番艦のグスタフは、その主砲を一度も放つことなく、自爆によって宙《そら》に散った。

「くっそ~、艦名をケンプと同じにしたのは失敗だったか? む~……なら、数で押し潰すまでだ。全艦突撃!」

「ほう、そう来るか。護衛艦隊、防御を固めろ」

「下だ!」

この防御を破るのは容易でないと見たアドルフは、下から潜り込むことで旗艦ブリュンヒルトを狙う。

だが……

「俯角30°、2時方向に火線を集中させよ。敵の艦列に穴が空いたら、そこを圧迫して突き崩せ」

ラインハルトは一瞬の内に敵の艦列を維持するポイントを見抜き、そこに攻撃を集中させた。

「うっ、一時後退!」

堪らず、アドルフは後退を命じる。

「(あっ、危ね~。そう言えば原作でもこんなシーンあったし! 確か回廊の戦いでだったか? つーか、あいつが高笑いしている光景がなんかムカツク)」

どうやら、大事なところでミスを犯してしまうのは転生しても変わらなかったようだ。

戦局は消耗戦となりつつあり、数で劣るラインハルト側に焦りが見え始めた……その時。

「後方より敵艦隊出現。 数、60000隻以上!」

「なんだと……!」

それは、ハプスブルク大公の私兵艦隊であった。

総司令官にトルガー・フォン・シドー大将を置き、艦隊司令官にアルフレッド・ガーシュイン中将、ヘルマン・フォン・オットー中将の2名を抜擢。
どちらも正規艦隊の司令艦隊に匹敵する実力者であり、艦隊の練度も正規艦隊に劣らない。

他に、フォーゲル、エルラッハ両中将の指揮する艦隊も交じっている。

フォーゲルとエルラッハは貴族連合軍に加わっていたものの、最終決戦時にこっそり麾下の艦隊を率いて逃亡、ハプスブルク星域へ逃れていた。

もちろん、これはアドルフの指示であり、数だけは無駄にある貴族連合軍の戦力をラインハルトに渡さずに引き抜くのが目的であった。

また、ラインハルト軍に降り注いだ災厄はこれだけでは無かった。

「後方の空間に歪みが発生……質量異常! 天体規模です」

何かがワープアウトしてくる。

「なっ、あれは……」

絶句するラインハルト。
ワープしてきたのは、要塞だった。

「あれは……建造中と報告のあったハプスブルク要塞ですな」

そう、それはハプスブルク領で建造されていたハプスブルク要塞そのものである。
直径60キロ、収容艦艇20000隻はイゼルローン要塞に勝るとも劣らない。

要塞司令官のアフドレアス・ゴシェット中将は、直ちに攻撃命令を下した。

「よし、敵を攻撃する。スターライトブレイカー発射用意!」

主砲にエネルギーが溜められていく。

「照準、敵ローエングラム艦隊」

「照準、ローエングラム艦隊」

「スターライトブレイカー、撃てぇー!」

要塞砲スターライトブレイカーから放たれたピンク色の光が、ラインハルト艦隊の中枢を直撃する。

『姉…上……』

旗艦であるブリュンヒルトを含む数千隻の艦が、一瞬にして消え去った。


* * *


<アドルフ>

「敵旗艦ブリュンヒルト……消滅」

オペレーターが茫然とながら、報告する。

「ハ、ハハハハハハハハハハハハハハ……グェホ…ゲホッ…ゲホ」

や、やべ……笑い過ぎた。
せっかくラインハルトを殺ったのに、笑死なんて洒落にならん。

それにしても、呆気ないな~。
ビッテンのときに比べてめっちゃ呆気ない。

ホントこれでいいの?
って感じだ。

まあ、俺としては楽なほうが良いが。

「敵艦隊に降伏勧告を出せ。これ以上の戦いは無意味だ」

降伏勧告を送ると、ラインハルト軍の各艦隊は抵抗を止め、その場に停止する。
戦いは終わった。

ビッテンが死に、キルヒアイスが死に、ラインハルトとオーベルシュタインが死んだ。

残りの提督たちは俺が有効活用してやろう。

ま、そんなわけでとりあえずは……眠い。
 
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