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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その十二

「実際全然勉強出来なかったぜ」
「そうでしたか」
「御前の高校偏差値どれ位だった」
「五十でしたけれど」
「普通だな、しかしな」
「その普通がですか」
「俺は到底なくてな」
 学力として、というのだ。
「高校卒業の時に徴兵の話が来てそれならって思ってだよ」
「ご自身で志願されて」
「それでだよ」
「軍隊に入ったんだよ」
 入隊試験を受けてというのだ。
「それで一般だけ合格してな」
「今に至りますか」
「下手したら俺の頭だとな」
 自分で振り返っての言葉だ。
「三十でも兵長だったかもな」
「三十で、ですか」
「そうだよ、二等兵一等兵上等兵からな」
「兵長になられて」
「万年兵長だったかもな」
 笑ってハーディンに話した。
「もう十年位はな」
「敵艦を沈めていないと」
「それ位兵長やっててな」
「それでやっと、ですか」
「伍長だったかもな」
 こう言うのだった。
「三十過ぎてな」
「そういう人もいますね」
「いるだろ、軍隊では」
「はい、俺も見ました」
「俺もそうなっていたかもな」
「軍曹なんてですか」
「とてもだったかもな、サハラにいるからな」
 戦乱の絶えないこの地域に生まれ育って軍隊にいるからだというのだ。
「戦場に出る機会があって敵艦も沈められて」
「そうしてですね」
「軍曹になれたんだよ」
「若し連合とかに生まれたら」
「それこそな」
 その時のことも話すアブクールだった。
「俺は実際に万年兵長だったな」
「あそこにいたらですか」
「まああそこは就職も多いからな」 
 就職口、それがだ。
「他の仕事になってたかも知れないがな」
「それでもですね」
「軍隊に入ったらな」
「万年兵長ですか」
「結婚しても兵隊だとな」
 立場が不安定なこの職業ならというのだ。
「三十六になっても下士官になれないでな」
「そこで切られて」
「終わりだからな」
 兵士でいられるには年齢制限がある、これはサハラでもそうであるし連合軍でも同じことである。無論他の国の軍隊でもだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「三十六でどうなるか」
 最後まで下士官になれなくてだ。
「路頭に迷ってたかもな」
「そこまでの人実際にいます?」
 ハルークはコーヒーを飲みつつアブクールにいぶかしむ顔で尋ねた。
「軍隊に」
「三十六まで兵隊で切られる人か」
「はい、実際に」
「そういえばいないな」
 いぶかしむ顔でだ、アブクールはハルークに答えた。
「三十過ぎの兵長は結構いるけれどな」
「それでもですよね」
「三十六になるまで兵長はな」
「いないですか」
「三十四まではいたぜ」
 そこまでの年齢はというのだ。 
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