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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その六

「わかる前にです」
「兵役が終わるんだな」
「もう少しなんですよ、本当に」
「それで終わったらか」
「はい、後は」
 先程話した様にと言うのだった。
「大学に行きます、兵役で結構金も溜まったし」
「生活費にするか?」
「学費は親が出してくれますけれど」
「一人暮らしするんだな」
「そうするつもりなんて」
 それでというのだ。
「生活費はです」
「自分で稼いでか」
「その足しにです」
「兵役の時の金も使うか」
「そうします、丁度よかったですよ」 
 ハルークもモニターに映る自軍を見ている、だがそれでも彼には自軍の状況のことはわからなかった。
「兵役は」
「金のことでか」
「あと自分の欲しい資格の勉強も出来ましたし」
「兵役の仕事でか?」
「はい」
 まさにそれでというのだ。
「これは偶然でしたが」
「そうだったのか」
「実は俺船のエンジニアになりたくて」
「ああ、船か」
「いや、幸い徴兵に合格して」
 オムダーマンは徴兵制といっても実質的に選抜徴兵制だ、これはティムールでもそうだしこれまでのサハラの殆どの国がそうだった、人類は二十世紀末から軍隊についてはそのハイテク化から予算は多く必要になっていたが人員自体はそれ程必要にならなくなっていたのだ、それでサハラ各国も実質は選抜徴兵制なのだ。
「それでなんですよ」
「こうして艦艇に入ってか」
「学べています」
「そうなんだな」
「そうです、ですから」
 それでというのだ。
「よかったです」
「そうか、じゃあな」
「大学に行きましたら」
「今のことを活かしてか」
「資格を取って」 
 その大学でだ。
「卒業したらです」
「その資格を活かしてだな」
「生活していきます」
「そうか、頑張れよ」
「そうしていきます」 
 ハルークは笑ってアブクールに話した。
「是非」
「そしてその為にはな」
「勝つことですね」
「いやいや、勝っても死ぬ時は死ぬだろ」
 アブクールは笑ってハルークに返した。
「国が勝ってもその下では、ってあるだろ」
「多くの戦死者がですね」
「戦争ってのは勝っても死ぬし負けても死ぬんだよ」
「死ぬ時はですか」
「そして天国に行くさ」 
 イスラムではジハード、聖戦で死ねば確実に天国に行くとされている。この時代のサハラでは全ての戦争がジハードと言われるので戦死者は確実に天国に行くとされそれは信仰的に素晴らしいこととされている。
 しかしだ、アブクールはこのことも踏まえてハルークに話したのだ。
「けれどまだ天国に行きたくないだろ、御前は」
「はい、この世でしたいことがまだ一杯あります」
 ハクールもこう答える。
「その大学に行って資格取ってそれで働いていきたいですし」
「結婚もしてな」
「子供も持ちたいです」
「俺はあれだ、曹長になりたいんだよ」
「曹長ですか」
「ああ、もっとな」
「士官じゃないんですね」
 そちらはとだ、ハルークは聞き返した。 
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