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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その五

「そう言われるだろ」
「はい、よく言われますね」
「弱い敵にもそうなんだ」
 こうした話は戦史上枚挙に暇がない、寡兵や弱敵と侮って油断していて敗れた軍は古来より実に多い。
「相手を侮ったらその時点で負ける」
「油断もしたらですね」
「そこで負けるからな」
「だからだ、それでな」
「ここはですね」
「油断はするな、配置に就いている間は気を張ってだ」
 つまり起きていてというのだ。
「そうしてだ」
「そのうえで、ですね」
「敵が来たら報告だ」
 その姿を見ればというのだ。
「その時はな」
「そうします」
「勿論俺も」
 ハルークに続いてハーディンも言って来た。
「任せて下さい」
「頼むぞ、俺だってな」
 アブクールは自分の話もしてきた。
「気を張らないとな」
「駄目ですよね」
「やっぱり」
「そうだよ、本当にな」
 油断すればというのだ。
「そう思うとそれだけでな」
「油断出来なくて、ですね」
「コーヒーを飲むんですね」
「そうだよ、コーヒーだって飲んでな」 
 そうしてというのだ。
「いざって時はやってやるさ」
「魚雷撃ちますか」
「ティムール軍に対して」
「そうしてやる、うちの魚雷は強いんだ」
 アブクールはこのことにも自信があった、実際にオムダーマン軍の魚雷は強力なことで知られている。
「その魚雷をだ」
「敵に撃ち込んでやりますか」
「そして撃沈だ」
 そうしてやるというのだ、ここでハーディンは居住区に入ってそこで自分達が飲むコーヒーや紅茶を煎れてお菓子も出した。
 彼がそうしている間だ、アブクールはハルークに話しつつモニターを観てだった。そうしてこう彼に話した。
「なあ、何かな」
「何かありました?」
「いや、モニターに移る俺達の艦隊はな」
 それの話をするのだった。
「随分と整然としてるよな」
「そうした布陣ですね」
「けれど何かな」
 それでもと言うのだった。
「妙に引っ掛かるんだよ」
「といいますと」
「守っている感じじゃないだろ」
 その布陣はというのだ。
「何かな」
「そうですか?」
「わからないか?」
「俺にはちょっと」
 こうアブクールに言うのだった。
「わからないです」
「そうか、まだわからないか御前には」
「どうにも」
「まあ御前もな、軍隊にいたらな」
「残ったらですか」
「わかるからな」 
 そうしたこともというのだ。
「それでな」
「そういうものですか」
「それは年季だな」
「そういう話は」 
 どうにもとだ、ハルークは今一つという声で返した。 
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