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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その一

               動きはじめる両軍
 オムダーマンとティムールがそれぞれの国家元首達が宣戦布告を行ったのを受けてだ、それぞれの軍は動きだした。
 だが両国の国境沿いの殆どでは動きがなくてだ、両軍共睨み合っていた。それでだった。
 オムダーマン軍第八十二艦隊に所属している戦艦ジャアファルも動きがなくてだ、魚雷手の一人ハルーク上等兵もだった。
 何か面白くなさそうな顔でだ、上司のアブクール軍曹にぼやいて言った。
「戦争がはじまりましたけれど」
「ああ、俺達はな」
「まだ待機ですね」
「そうだ、このままな」
「艦艇の配置はそのままで」
「命令があるまではな」
 アブクールはこうハルークに話した。
「だからいいな、配置についたままでだ」
「俺達もですね」
「このままでいろ」
「そうですか。俺としてはですね」 
 見ればまだ二十歳を過ぎた辺りの年齢だ、その若々しい顔でそろそろ皺が出て来た顔を持っているアブクールに話した。
「もっとですよ」
「戦いたいか」
「魚雷を撃ちたいですね」
「それなら今はだ」
「待つことですか」
「待つことも戦争だって言われたな」 
 アブクールはリラックスした態度でハルークに話した。
「そうだな」
「はい、教育機関中に」
「だからな、御前もな」
「今はですね」
「待て」
 魚雷手のその配置場所でというのだ。
「そして戦闘になって魚雷を撃つ時になったらな」
「まさにその時にですね」
「撃て、水雷長が命令してくれる」
 士官である彼がというのだ。
「それまではゆっくりしていろ」
「ここで、ですか」
「配置についたままな」
「わかりました、それじゃあ」
「あとだ」
 アブクールはハルークにさらに話した。
「待っていてもな」
「気は抜くなですね」
「そうだ」
 このことは守れというのだ。
「気を抜いたらそこで何かあるからな」
「敵が来たりするからですね」
「ここは監視場所でもあるからな」
 見ればモニターもある、そこで外の宇宙の状況を見ているのだ、こうした場所は艦内の至る場所にある。
「だからな」
「はい、監視もですね」
「しておけ」
 そちらも忘れるなというのだ。
「いいな」
「はい、それじゃあ」
「何もなくてもな」
「若し見逃すとですね」
「御前も俺も死ぬ」
「この艦にいる人間全員が」
「そうだ、死にたいか?」
「俺これで兵役終わるんですよ」
 こうアブクールに話したハルークだった。
「ですから」
「死にたくないな」
「兵役終わったら大学行くつもりなんです」
「何だ、御前大学に行くつもりか」
「はい、そこで資格を取って」
 そうしてとアブクールに話すのだった。 
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