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ドリトル先生と琵琶湖の鯰

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第十幕その七

「実際にです」
「ああなってしまいましたね」
「やはり酷いするべきではないですね」
「その通りですね、とはいっても」
 ここで先生はこうも言いました。
「我が国はもっと酷い国王陛下がおられました」
「そうなのですか」
「ヘンリー八世という方は」
 先生はここで河童達にその人のことをお話しますとさしもの河童達もそれはというお顔になって言いました。
「それはまた」
「酷いですね」
「幾ら何でも」
「もうそこまでいきますと」
「本朝ではいませんね」
 河童達は口々に言いました、佐吉さんだけでなくです。
「無茶苦茶ですね」
「何から何まで」
「よくそんな人がいられましたね」
「六代様より酷いです」
 その足利義教さんよりもというのです。
「まことに」
「あの方も無道でしたが」
「まさに暴君ですね」
「そう言っていいですね」
「そのせいかです」
 ヘンリー八世という人があまりにも酷い王様だったからというのです。
「我が国では以後ヘンリーという名前の王様は出ていません」
「王家の方にはおられましたね」
「はい、ですが」  
 それでもとです、先生は佐吉さんに答えました。
「本当に今まで」
「その人からですか」
「その名前の王様は出ていません」
「そこまで評判が悪いですか」
「特に女性に」
「それはなりますね、私の女房に話しても」
 佐吉さんは真面目にお話しました。
「そんな人は嫌いになりますよ」
「そうですね」
「あんまりです、浮気をして王妃を次々を交換するだけでもどうかですが」
「濡れ衣を着せて処刑していくことは」
「その都度揉めごとを引き起こしていますし」
 ヘンリー八世という人はです。
「しかもお金の使い方は酷くて家臣の人達もですね」
「沢山処刑しました」
「まさに暴君ではないですか」
「だから今ではとても評判が悪くて」
「その名前の人は出ていないですね」
「そうです」 
 実際にというのです。
「国王としては」
「それも当然ですね」
「そして日本ではですね」
「幸いそこまでの人は出ていないですね」
「そのことも日本にとっていいことですね」
「そう思います」 
 佐吉さんは心から言いました。
「いや、有り難いことです」
「そうですね」
「確かに六代様は暴君でしたが」
「ヘンリー八世程でなく」
「因果を受けましたし」
「ヘンリー八世は天寿を全うしたので」
「やはり暴君は因果を受けるものです」
 どうしてもとです、佐吉さんは強い声で言いました。そうしてそのうえで先生に対してあらためてお話しました。
「六代様の様に。織田信長さんは暴君ではなかったですが」
「むしろ名君でしたね」
「ですから民衆には凄く慕われていました」
 それが織田信長さんの真実だったというのです。
「善政を敷いていましたし」
「そこも本当に違いますね」
「浅井長政さんのことも最後の最後まで降ればです」
「助けるつもりでしたか」
「本当に暴君ではなかったです」
「そうでしたか」
「はい、ただ井伊直弼さんですが」
 佐吉さんは自分からこのことをお話しました。 
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