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ドリトル先生と琵琶湖の鯰

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第十幕その六

「お茶や甘いものがお好きで」
「お酒は飲まれなかった」
「とにかくです」
「お酒はですね」
「飲まれなかったです」
「史実で聞いていた通りでしたね」
 先生は河童のお話を聞いてしみじみと思いました。
「まことに」
「はい、あとです」
「あと、とは」
「比叡山とも仲がよくて」
 河童は先生に笑ってこうもお話しました。
「よく上がっています」
「そうでしたか」
「お参りもしています」
「昔からそうされていますか」
「人に化けて。ただあちらに長くいる方はご存知です」
 比叡山に長い間いる人はというのです。
「私達河童が比叡山に入っていることは」
「そしてお参りしていることは」
「日吉大社の方も」
「そうでしたか」
「化けると言っても変装位ですが」
「狐や狸の様にはいかないですか」
「私等はあそこまで上手に化けられないので」
 だからだというのです。
「それは無理です」
「そうですか、だから変装位ですか」
「そうなのです、ですが比叡山と我々琵琶湖の河童はそれこそ千年以上位から馴染みで」
「古いですね、千年以上とは」
「そうですね、そしてそれだけにです」
 千年以上のお付き合いがあるからだというのです。
「あちらの歴史にも詳しいつもりです」
「比叡山の方も」
「伝教大師の頃からですから」
「それは本当に古いですね」
「開山の頃からですので」
 もうその頃からと聞いてです、動物の皆は驚きましたが先生は至って冷静なままです。そうしてです。
 先生はそのまま河童のお話を聞いています、そうして言うのでした。
「では歴史の書には載っていないことも」
「いえ、実は」
「そこまでは、ですか」
「比叡山のことは昔からよく書かれていてです」
「歴史に細かく残っているからですか」
「誰かの日常位で」
 河童達が知っていることはというのです。
「歴史にあったお話の舞台裏等は」
「もう、ですね」
「歴史の書にある通りです」
「そうでしたか」
「はい、ですから」
 河童は先生にさらにお話します。
「特に先生が知りたい様なお話はです」
「ないですか」
「そうかと」
「そうですか」
「先程の織田信長さんのことですが」
「比叡山の焼き討ちですね」
「あちらは最近わかった通りで」
 それでというのです。
「山の全てを焼き尽くしたり虐殺したり等は」
「していないですか」
「あの人は確かに思い切ったことをする人でしたが」
「残酷でもですね」
「無道なことはしない人だったので」
 だからだというのです。
「むしろ室町幕府の六代の」
「足利義教さんですね」
「あの人の方がです」
 むしろというのです。
「酷かったですね」
「比叡山の焼き討ちについても」
「とにかくあの人は私等から見ても」
「苛烈過ぎましたか」
「見ていて何時かとんでもないことになると思っていましたら」
 そう考えていたらというのです。 
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