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星河の覇皇

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第七十五部第五章 宣戦布告その七

「青き獅子だな」
「はい、そうですね」
「閣下はそう呼ばれていますね」
「だからこそですね」
「獅子として戦われる」
「緊張はされてもですね」
「身体は強張らせませんね」
 幕僚達も口々に言ってきた。
「獅子の筋肉は然るべき時のみ硬くなる」
「その時以外は緩んでいる」
「さながら弓の弦ですね」
「そうしたものなので」
「それで我々もですか」
「強張ってはなりませんか」
「そうだ、緊張を極めているならだ」
 そうした状況ならというのだ。
「休むことだ、そうしていた方がいい」
「それで動けないならどうにもならない」
「戦いにも敗れる」
「だからですね」
「いざという時は」
「だからだ、今は緊張していてもだ」
 それでもというのだ。
「極度であってはならない、ただ相当な大物でもないとな」
「今はですね」
「どうしてもかなり緊張していますね」
「身体が強張らん限りに」
「そうなっていますね」
「そうしたものだ、戦いを前に平然と眠れる者がいたとする」
 先程話に出した大物についてだ、アッディーンは述べた。
「そうした者についてどう思う」
「恐ろしいですね」
「流石にそこまでの者はそうはいないでしょう」
「私は見たことがありません」
「私もです」
「そうだな、他には戦闘中で傍に銃撃が来ても酒を飲んでいられる」
 そうした者も話に出した。
「攻めるべき時ではないと言ってな」
「それは確か」
 今の話を聞いてだ、ガルシャースプは目を鋭くさせてアッディーンに言ってきた。彼も今はアリーにいるのだ。
「秋山好古ですね」
「そうだ、日本軍の将軍だ」
「日露戦争の時のですね」
「彼はそうした人物だった」
「敵が攻撃している時にでしたね」
「平然とそうして寝転がっていた」
 敵の銃撃の中で酒、ウイスキーを飲んでいたという。
「そしていざという時にだ」
「動いてでしたね」
「そしてだ」
「攻める時に動いてでしたね」
「勝った」
 その時に立ち上がり即座に馬に乗ってだ、日露戦争時に大日本帝国陸軍騎兵隊を率いて活躍したのだ。
「しかも当時世界最強と言われたロシア騎兵にだ」
「コサック騎兵でしたね」
「その彼等に勝ったのだ」
「恐ろしい人物ですね」
「こうした人物ならだ」
 まさにというのだ。
「勝てる」
「緊張し過ぎればかえって」
「敗れる」
「どうしても動きが硬くなれば」
 どうなるか、ガルシャースプは考えて述べた。
「そこからです」
「視野もな」
「狭くなります」
「そして視野が狭くなればな」
「敗北に直結します」
「敵は正面から来るだけとは限らない」
 つまり自分の視界の範囲内からである。 
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