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星河の覇皇

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第七十五部第五章 宣戦布告その二

「それはな」
「皇帝は玉座にあるべきであり」
「そうそう動くものではないという」
「そう言われているからな、ヴィルヘルム二世と昭和天皇を比べるとだ」 
 この二人の皇帝、君主をというのだ。
「どちらが上か」
「はい、昭和天皇です」
 高官はすぐに日本の皇帝即ち天皇だと答えた。
「あの皇帝、日本では天皇と呼んでいますが」
「あちらの皇帝の方が上だな」
「そう思います」
「ヴィルヘルム二世は自ら動いていた」
 積極的に国政を動かしていたというのだ、実際に中東やアフリカへの進出や海軍増強政策も推し進めていた。
「しかしだ」
「その結果ですね」
「ドイツは欧州の多くの国の反感を買い」
「そしてですね」
「ドイツ帝国は倒れた」
「一次大戦の終わりに」
「そうなった、だが日本はどうか」
 この国はというと。
「あの国はな」
「はい、二次大戦は敗れましたが」
「それは皇帝の失政ではなかった」
 ドイツは皇帝の失政であったがというのだ。
「昭和天皇は君臨してはいたがだ」
「しかしでしたね」
「立憲君主制を貴んでいて」
「自身は政治には出来る限り携わらなかった」
「あくまで国家元首としていましたね」
「為政者ではなく」
「祭事は行っていた」
 天皇、神道の頂点におられる方としてだ。そのことはされていた。
「しかしだ」
「国の主権者でもですね」
「非常時以外は政治は行わなかった」
「二・二六事件や大戦の降伏受諾を認める時に」
「その時以外はですね」
「政治は行わなかった、そこが違う」
 ヴィルヘルム二世とはだ。
「ヴィルヘルム二世は皇帝としての祭事にも携わっていたがな」
「ドイツ帝国皇帝ですね」
「プロイセン王としてのこともありますし」
「政治も祭事も行っていた」
「皇帝として」
「そうだった、しかしだ」
 それがというのだ。
「政治を行い失政の結果だ」
「責任を問われ」
「そのうえで、でしたね」 
 高官は一人ではなかった、電話のモニターに複数いた。その彼等がアッディーンに対して応えていた。
「ドイツ皇帝から退くことになりましたね」
「その歴史を見るとですか」
「閣下は皇帝になられると」
「皇帝は祭事を行うものだ」
 それが皇帝の仕事だというのだ。
「政治よりもだ」
「大統領は政治を行うものですね」 
 高官の一人がアッディーンに問うた。
「そうですね、しかし」
「皇帝は違うと気付いた」
 今のアッディーンはというのだ。
「国家元首であるのは同じだがな」
「選挙で選ばれる大統領とは違って」
「国の祭事を行い、そして国家統合の最高権威としてだ」
「存在するものですね」
「世襲、血脈で受け継がれていくしな」
 その権威はというのだ。
「そうあるべきなのだ」
「だからですか」
「私は皇帝になるとだ」
 それからはというのだ。 
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