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ドリトル先生と琵琶湖の鯰

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第五幕その三

「幾ら何でもね」
「騙して殺すつもりだったんじゃないの?」
 老馬は考えるお顔で言いました。
「最初から」
「やっぱり残酷な人だったんじゃないかしら」
 ダブダブも言います。
「織田信長さんって」
「相当残酷じゃないとしないね」
「そんなことはね」
 最後にオシツオサレツが言いました。
「死んだ人の髑髏を杯にするとか」
「それでお酒飲んでいたのかな」
「そのお話は違うみたいだよ」
 先生はどうかと言う皆に落ち着いたお顔で答えました。
「どうもね」
「あれっ、そうなの?」
「そうだったの」
「実際にあったお話じゃないの」
「そうだったの」
「髑髏で杯でお酒を飲むにしても」 
 そもそもというのです。
「織田信長さんはお酒飲まないね」
「あっ、言われてみれば」
「そうだったわ」
「織田信長さんはお酒飲まなかったんだ」
「どうもかなり弱かったらしくて」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「まずこの時点でおかしいね」
「そうだね」
「言われてみれば」
「織田信長さんはお酒飲まないから」
「杯と言われても」
「その時点でなくて」
 それでというのです。
「しかもこれは供養だったんだ」
「自分の敵を死んでも攻撃するんじゃなくて」
「そうだったんだ」
「供養であって」
「そうしたことじゃなかったの」
「そうだよ、髑髏に金粉を塗ってそうして供養するやり方もあったんだ」 
 そうだったというのです。
「昔の日本にはね」
「そうだったんだ」
「物凄く悪趣味な復讐と思っていたら」
「自分の敵に対する」
「そうじゃなかったんだ」
「そうだったんだ、ただ当時の習わしでね」
 先生はこうも言いました。
「浅井長政さん、そして一緒に織田信長さんと戦った朝倉義景さんの子供は男の子は殺されているよ」
「最後まで戦ったから」
「降らなかったから」
「それは仕方なかったのね」
「そうなんだ、あと織田信長さんは実際に許した敵は殺さなかったよ」
 降った人はというのです。
「松永久秀さんもね」
「あっ、あの物凄く悪い人だった」
「斎藤道三さんと同じ位悪かった」
「極悪人だったね」
「色々やって織田信長さんも裏切ったけれど」
 それでもというのです。
「一回目は許して二回目も許そうとしたんだ」
「そうだったんだ」
「二回目はないと言いそうだけれど」
「許しているんだ」
「そうだよ、茶器を差し出せば許すと言ったんだ」
 その二回目の時もというのです。
「松永久秀さんはそ茶器に火薬を入れて爆死したけれどね」
「その死に方も凄いね」
「日本人らしい死に方だと思うよ」
「壮絶な死に方が何ともね」
「潔いっていうか」
「そうだね、けれど本当に織田信長さんはね」
 この人はというのです。
「敵は許していたし何度も言うけれど特に残酷でもなかったんだ」
「そこどうしても誤解するけれど」
「イメージとしてあっても」
「実は違うんだ」
「そうなんだ」
 先生は皆に笑顔でお話しました。 
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