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戦国異伝供書

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第百一話 出雲攻めその十一

「果たされるやもな」
「ではそれをされる方は」
「これまでの話でわかるな」
「そういうことですか」
「よくうつけだの言われておったが」
「それは大きな間違いですか」
「全く以てじゃ」
 こうもだ、元就は話した。
「それは違ってじゃ」
「それどころかですな」
「天下人にな」
「なられる方ですか」
「奇矯な振る舞いがあったというが」
 まだ元服する前はというのだ。
「それは傾いておられただけのこと」
「傾奇者ですか」
「上方に多くおるというな」
「奇矯な身なりに振る舞いの」
「昔で言うばさら者の様な、な」
「そうした御仁のことであり」
「織田殿はうつけではなかったのじゃ」
 最初からそうであった、元就は看破した。
「傾奇者であられただけじゃ」
「それを多くの者は知らなかった」
「天下のな、だから政は最初からよく」
 そしてというのだ。
「戦もじゃ」
「勝ち進まれましたな」
「鮮やかにな」
「そうしたものを見ますと」
「織田殿はな」
「天下人の器ですか」
「家を継がれ瞬く間に尾張を統一され」
 元就は安芸のそれに苦労し時もかけた、だからこそ信長が為したことがよくわかるのだ。それも非常に。
「桶狭間でもじゃ」
「今川殿の大軍を破られましたな」
「思わぬやり方で」
「奇襲でしたな」
「おそらく正面から戦ってもな」
 信長ならというのだ。
「勝たれたであろうが」
「それをですな」
「あえて軍勢の多くを別のところに向かわせ」
 もう一方の敵である美濃の斎藤家の方にだ、信長は当時織田家が持っていた一万五千の軍勢のうち一万二千をそうさせたのだ。
「誰もが危ういと思ったところでな」
「僅かな兵を率いてでしたな」
「今川殿の本陣を雨の中攻められ」
 桶狭間、この場所においてだ。
「そうしてじゃ」
「勝たれましたな」
「そうなれたのもな」
「織田殿がどれだけ見事な方か」
「そういうことじゃ」
「その織田殿がですか」
「今後は天下統一の軸となられるわ」 
 そうなるというのだ。
「間違いなくな」
「まだ若い御仁ですが」
「その若さもな」
 それもというのだ。
「大きいわ」
「そうですか」
「将星というが」
 元就はこの言葉も出した。 
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