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星河の覇皇

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第七十五部第四章 慧眼その十三

「君はだな」
「当時のローマはこれまでの共和制の統治システムでは限界が出ていました」
「執政官達が一年ごとに交代し元老院が大きな権限を持ち彼等を中々止められない様なだな」
「この共和制は領土を拡大したローマには相応しくなくなっていました」
「強力な国家元首の統率による治世だな」
「そうすべき時でした」
「だからカエサルはああしたな」
「終生独裁官になりました」
 ここから皇帝になろうとしたと言われている。
「そしてオクタヴィアヌスがその跡を継ぎましたが」
「しかし今のマウリアはか」
「そうした国ではありません」
「統治システムは今のままでいいか」
「基本は。ですから」
「皇帝にはならないか」
「はい」
 そうだというのだ。
「私は」
「共和制のままか」
「それでいいです、私の野心もそちらに向いていませんし」
 皇帝になるそれにはというのだ。
「君主の座にも」
「マウリアに向いていてだな」
「そうですので」
「そういうことか」
「私はマウリアに目を向けています」
 その巨大な野心もというのだ。
「己のことなぞ小さなことです」
「実に簡単に成し遂げられる」
「栄耀栄華なぞ」
 素っ気ない、下らないものについて語る言葉だった。
「そうしたものです、しかも既にです」
「君は資産家だったな」
「ですから」
「今の時点でか」
「興味はありません」
 栄耀栄華、それにはというのだ。
「最早」
「そうなのか」
「ですから」
「野心もマウリアに向いていてか」
「私自身のことは」
「既にか」
「満足しています、資産も幾らでもです」
 まさに今の時点でとだ、ジャバルは紅茶を飲みつつ話した。
「適っています、俗に酒池肉林といいますが」
「それもだな」
「適っています」
「贅沢もか」
「何でもありません、贅沢を楽しんでもです」
 それをしてもというのだ。
「それ以上のものがあるのか」
「ないのだな」
「ありません」
 実際にというのだ。
「楽しいことは楽しいですが」
「美酒に美食、美女に囲まれてだな」
「ですがそこで終わりです、しかしです」
「マウリア、祖国を大きくすることはか」
「非常に大きな、果てなく大きくなるものなので」
「いいのだな」
「そう考えています」
「成程な、君は確かに野心家だ」
 クリシュナータはジャバルのその言葉を聞いて彼に笑みを向けて応えた。
「それもかなりのな」
「そう言って頂けますか」
「君が否定するヒトラーやスターリンの様な、だが」
「私は彼等の能力は野心は否定していないですね」
「現人神ではないが」
 しかしというのだ。 
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