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星河の覇皇

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第七十五部第四章 慧眼その八

「それが違ったか」
「そうでした、そしてです」
「その統計は連合では知られていたか」
「有名でよく知られていました」
「しかしマウリアではか」
「伝わっていませんでした、そしてエウロパでは」
 連合の宿敵であるこの国ではというと。
「知られていてもです」
「信じられていなかったか」
「そうでした」
 ジャバルはこうクリシュナータに話した。
「連合が自分達に都合のいい統計を出しているとです」
「そう言ってか」
「主張していてです」
 そうしてというのだ。
「信じていませんでした」
「そうだったか」
「はい、そして私はです」
「こちらの統計の方が正しいとか」
「信じています」
「そうか、連合がそこまで大きいか」
「他国に興味がなく平和主義なのが救いです」
 マウリアそして他の国々にとってはというのだ。
「若しあれでサハラにかつてあった様な覇権を目指す国ならば」
「我々に対してもだな」
「武力で以て攻め込んできてです」
 そうしてというのだ。
「我々は完全に飲み込まれていました」
「そうなっていたな、やはり」
「連合中央政府にも各国政府にもです」
「そうした野心はないな」
「企業や財団、そして様々な勢力も」
 連合の中にある彼等もというのだ、その中には宗教団体や市民団体、個人の有力者やグループ等がある。
「マウリアやサハラにはほぼ無関心です」
「連合は連合だけだな」
「そこが彼等の世界です」
 そうした国であることをだ、ジャバルも把握しているのだ。
「あくまで」
「だから外には出ないか」
「中央政府は連合全体の掌握を考えていまして」
「各国政府は自分達の権益の確保と拡大だな」
「精々その各国の中の盟主です」
「それ位だな」
「千年の間そうした盟主は出て来ていません」
 有力な国はあってもだ、アメリカや中国の様な。
「合従連衡してです」
「互いに争ってだな」
「連合の中での盟主もです」
「出ていないな」
「何しろ連合各国間での政治問題の解決で武力は用いられていません」 
 自国の防衛に限られている、しかも各国の国教は最初から厳密に規定されている。ただし新領土を持つことは中央政府の承認を得て可能だ。
「ですから」
「余計にだな」
「はい、軍事力を使えないので」
「覇権はなくだな」
「外交と経済を使っての争いだけで」
 つまり武器ではなく札束やコインでの勝負をしているのだ、それが連合の中での盟主争いということだ。
「そうしたことを繰り返し」
「千年の間していきだな」
「そこにばかり執心で」
「我々には目がいっていない」
「それが救いです、そしてそのいがみ合いがです」
「いざとなればだな」
「狙い目です」
 乱すそれだとだ、ジャバルは笑って話した。
「そうなのです」
「そういうことか、そしてその巨大な連合からか」
「言うなら巨獣から血を数滴もらいます」
「そしてその数滴が我々の命となる」
「そうなのです」
「成程な、ではそのことは頼む」
 クリシュナータはこう言って紅茶を一口飲んだ。 
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