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戦国異伝供書

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第九十八話 三本の矢その十

「叩くのじゃ」
「そうしますな」
「そこで来島の村上水軍を使うし」
「城もですな」
「使う、よいな」
「それでは」
「そうして戦っていくぞ」
 こう言ってだった、元就は。
 戦の用意をさせた、村上水軍とも密に話して陶家の家臣達の篭絡にもかかった。だがそれはだった。
 陶も察し手を打ってきた、その手に元就は苦い顔で述べた。
「まさかな」
「はい、手を打ってきてです」
「こちらについた家臣を切られるとは」
「そうしてこられるとは」
「江良殿はこちらに引き込むつもりでな」
 その考えでというのだ。
「誘いをかけたが」
「それをですな」
「陶殿は察されて」
「そうしてでしたな」
「江良殿を粛清した」
 まさにというのだ、江良房栄という自身の重臣の一人を。
「そうした、しかしな」
「それでもですな」
 桂がここでにやりと笑って元就に言ってきた。
「それがしに」
「うむ、陶殿に文を出したな」
 元就も笑って応えた。
「そうしたな」
「確かに」 
 桂は笑ったまま答えた。
「何かと書いておきました」
「それでじゃな」
「いざとなればです」
 その時はというのだ。
「それがしはです」
「陶殿にな」
「加わると申し上げておきました、ですが」
「わしへの恨みつらみの文はか」
「書いて宜しかったのですか」
「よい」
 元就はにやりと笑って答えた。
「むしろじゃ」
「これでもかという位にですか」
「書いてこそじゃ」
 こう言うのだった。
「よいのじゃ」
「陶殿は信じますか」
「陶殿は一直線の方じゃ」
「とかく策にはですな」
「弱い、だからな」
「それがしが、ですか」
「降ると神妙に申し出ればな」
 それでというのだ。
「信じる、だからな」
「それがしからですか」
「偽の話をな」
「陶殿に送るのですな」
「そうせよ。そしてな」
 元就はさらに話した。
「陶殿の軍勢をじゃ」
「厳島にですか」
「誘い込み」
 そしてというのだ。
「倒す、そうすればな」
「周防と長門、それに石見の大内家の領地も」
「手に入る」
「そうなれば」
「かなりの力になり」
 そしてというのだ。
「尼子家にも圧倒的な差となる」
「今当家は百二十万石」
 志道が言ってきた。 
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