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星河の覇皇

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第七十五部第二章 開戦直前その八

「私もな」
「左様ですね」
「わかっていない者は言っても」
「閣下としてはですね」
「それは実は」
「違うのだ」
 確信があったというのだ。
「補給や整備についてもな」
「確信があった」
「だからこそされたのですね」
「戦争は補給と整備ですね」
「その両者があってこそですね」
「アルデンヌを見るのだ」
 ドイツ軍がフランス戦でしたことだ、機械化部隊が越えられないと考えられていたアルデンヌの森をあえて突破したのだ、これはドイツ軍の知将マンシュタインの作戦をヒトラーが了承した結果だ。
「あの時ドイツ軍は私がアステロイド帯を突破した様に動いたな」
「アルデンヌの森を突破しました」
「機械化部隊で」
「そしてフランスの防衛線の後方に急進してです」
「勝利を収めました」
 フランス軍が誇ったマジノ線を無力化してみせたのだ。
「そうして勝ちました」
「それで、ですね」
「閣下もですね」
「アルデンヌをされた」
「そうだったのですね」
「意識はしていなかったが」
 しかしというのだ。
「結果としてそうなった」
「アルデンヌですね」
「あの森を越えたのと同じで」
「他の戦闘についてもですね」
「同じですね」
「そうなる、日本の話だが」
 今度はこの国の話だった。
「桶狭間の戦は知っているな」
「織田信長でしたね」
「日本の戦国時代を終わらせた」
「彼がまだ尾張の一大名だった時の戦でしたね」
「今川義元と戦った時ですね」
 駿河、遠江、三河の三国を治め百万石と多くの兵を持っていた当時戦国屈指の大勢力であった。その彼が二万五千の兵を率いて攻め寄せてきたのだ。
「桶狭間において奇襲を仕掛け」
「大将の今川義元自身を討ち勝利を収めた」
「そうした戦いでしたね」
「あれも織田信長には確実な勝算があった」 
 戦力的には圧倒的に不利であったがだ。
「敵の位置を正確に掴んでいてだ」
「攻めるポイントもルートもですね」
「既にわかっていた」
「そして気候のことも」
「全てですね」
「あの戦いは奇襲に見えるがだ」
 その実はというのだ。
「違うのだ」
「既に把握していた、ですね」
「勝利を確信していた攻めだった」
「そうだったのですね」
「そして勝った」
 信長、彼はというのだ。
「二千の兵で二万五千の敵にな」
「およそ十二倍以上でしたが」
「その圧倒的な敵にですね」
「見事に勝ち国を護り」
「自身の名も挙げましたね」
「それまではうつけ者と言われていた」
 その奇矯な振る舞いからだ、織田信長の若き日の評価は決して芳しいものではなかったことも知られている。
「しかしだ」
「その戦からですね」
「彼をそう呼ぶ者はいなくなった」
「そして天下人の第一歩を踏み出した」
「そうした戦でしたね」
「そうだった、そしてだ」
 アッディーンはさらに話した。 
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