星河の覇皇

「全てです」
「楽しんでそうして」
「ですから」
「お酒はですか」
「お酒も楽しむものですね」
「そうですね、確かに」
「溺れるものではありません」
　福山はこうも言ったのだった。
「お酒に溺れますと」
「それは、ですね」
「よくありません」
「楽しむことと溺れることは違う」
「そうです、私の兄ですが」　
　福山はここで自身の肉親のことを話した。
「九十になりますが中学の時からです」
「あの方ですね」
「無類の遊び人でして」
「あらゆる遊びをしていて」
「はい、ですが」
　遊ぶ、しかしというのだ。
「溺れてはいません」
「楽しんでいるのですね」
「あらゆる遊びを。お酒も飲み」
　それもかなりだ。
「本当にあらゆる遊びをしていて通じてもいますが」
「その遊びにもですね」
「溺れてはいません」
「決してですね」
「その兄の言葉です」
「遊びは楽しむものであり」
「溺れるものではないと」
　そうなってしまえばというのだ。
「若し溺れますと」
「破滅ですね」
「最初から手を出してはいけないものもありますが」
　具体的にはドラッグもそうであるし人に害を為す遊びもそうだ、そうした悪質な遊びもあるのだ。
「しかし」
「よい遊びもですね」
「楽しんでもです」
「溺れるものではない」
「お酒も然りで」
「楽しまれて下さい」
　だからその量もというのだ。
「適量に抑えられて」
「そういうことですね」
「そうです、本当に兄はです」
　再びその遊び人の兄のことを話した。
「仕方がない位に遊びますが」
「それでもですね」
「遊びの達人で」
　そう言っていい位の人物でというのだ。
「借金も作ったことがありません」
「幾ら遊んでもですか」
「お金があればそうした遊びをしますが」
　しかしというのだ。
「それでもです」
「お金がなくてもですね」
「またそれはそれで」
「別の遊びをするのですね」
「お金がない時の遊びをすると言って」
　そのうえでというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「そこが凄いのです、困ったところもありますが」
　福山はその兄のことを思い出しどうにもという笑顔も見せてそのうえで八条に対して話をした。
「憎めず尊敬出来ることもある」
「そうした方ですね」
「そうです」
　まさにというのだ。
「奇麗な遊び方なので」
「お若い時からですか」
「その十代の時から」
　まさにというのだ。
「そうでした」
「その頃からですか」
「はい、奇麗な遊びをしています」
「遊びの達人ですか」
「そうです、遊びの天才といいますか」
　そうも言ったのだった。