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戦国異伝供書

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第九十二話 尼子家襲来その九

「全く以てじゃ」
「それより前にです」
「毛利家から昼も夜も攻められています」
「朝駆けすらあります」
「そうした攻め方をされては」
「城攻めもままありませぬ」
「そうじゃ、それは出来ん」
 到底というのだ。
「今はな」
「左様ですな」
「今は無理です」
「まさかここまで攻められるとは」
「思いも寄りませんでした」
「しかもじゃ」
 晴久はさらに話した。
「大内家からの援軍の話もあるな」
「どうも今は様子を見ている様ですな」
「毛利家は信用出来ぬと見て」
「この前一戦して負けていますので」
「だからですな」
「それは我等にとって僥倖であるが」
 それでもというのだ。
「しかしやがて来るやも知れぬしな」
「攻めるなら、ですな」
「早いうちがいいですな」
「やはり」
「そうじゃ、まあ大内家が来るのは当分先じゃ」
 このことはというのだ。
「だからな」
「今のうちにですな」
「毛利家を攻めますな」
「今は」
「そうすべきですな」
「そうじゃ、何とか体勢を立て直し攻めるぞ」
 こう言ってだった、晴久は本陣の守りをより固めさせそして軍全体も立て直そうと務めた、だがここで軍の布陣を引き締めようと縮小させんとすると。
 元就はそれを見て言った。
「よし、守りを固めんとしているな」
「今もですな」
「せめるのですな」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
 こう言うのだった。
「今もな、この度はわしも出るぞ」
「そして、ですか」
「尼子家の軍勢を攻める」
「そうしますか」
「そうする、この度は強く痛めつける」 
 その様にするというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「この度は」
「攻めるぞ」
 こう言ってだった。
 元就は尼子家の軍勢が全体を立て直そうと攻める気配を消してだった。
 そのうえで守りも固めんとしたがそこに隙が生じた時にだった。
 元就は自ら軍勢を率いて尼子家の軍勢に夜襲を仕掛けた、地の利を活かしてそうしてふんだんに攻めてだった。
 尼子家の軍勢を散々に破った、するとだった。 
 尼子家の士気は落ちた、それで晴久は言った。
「何とかじゃ」
「今は、ですな」
「散々に負けましたが」
「それでもですな」
「まだ諦めぬ」
 こう言うのだった。
「だから何とかな」
「守りに徹し」
「そしてですな」
「攻められはしても」
「態勢を立て直すのですな」
「そうする、よいな」
 こう言って毛利家に攻められた陣を再び整えだした、そして言うのだった。 
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