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戦国異伝供書

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第九十二話 尼子家襲来その八

「しかしじゃ」
「あの山も我等にとっては代々の場所」
「よく知っています」
「それも隅から隅まで」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「思う存分攻めていくぞ」
「昼も夜もそうして」
「敵に打撃を与え」
「徐々に数を減らさせ」
「そしてその心も攻めるのですな」
「そうじゃ、戦は城を攻めるよりも人を攻めよというが」 
 この言葉のこともだ、元就は話した。
「人の心を攻めるのじゃ」
「この度もですな」
「徐々にそうして」
「そしてですな」
「徐々に追い詰め」
「そして、ですな」
「徹底的に疲れさせてな」
 尼子家の軍勢三万をというのだ。
「そして陶殿の軍勢が来た時に慌てさせ」
「そこを攻めて」
「そして勝つ」
「そうするんですな」
「そうじゃ、ここで尼子家を破り」
 そのうえでというのだ。
「我等の名声を上げてな」
「安芸を手中に収めますな」
「そうじゃ」
 桂にも答えた。
「だからな」
「ここは、ですな」
「勝つぞ、では皆わしの采配通りに動いてもらう」
 このことも言ってだ、そしてだった。
 元就は吉田郡山城を拠点として青山に布陣する尼子家の軍勢に地の利を活かした攻撃を次々と行った。
 夜に山道を伝って本陣を攻めたり焼き討ちや川の向こう岸から舟を使って急襲したりもした、そうした攻撃を次々と受けてだ。
 尼子家の軍勢は次第に消耗していった、それで総大将である尼子晴久は本陣において苦々しい顔でいた。
 そしてだ、こう言うのだった。
「よいか、本陣の守りはじゃ」
「今日も襲撃を受けましたし」
「それで、ですな」
「今は、ですな」
「よりじゃ」
 まさにというのだ。
「守りを固めてな」
「そして、ですな」
「もう攻めさせぬ」
「そうしますな」
「度々本陣を襲われておるが」
 この事態はというのだ。
「こうまで襲われるとな」
「落ち着いて采配も執れませぬ」
「敵はいつも何処からか攻めてきてです」
「そして急に去ります」
「本陣以外もそうして攻められてです」
「兵も多く失っています」
 尼子家の諸省も口々に話す。
「そうしてです」
「兵の多くが疲れだしています」
「軍はこちらの方が遥かに多いというのに」
「それでもです」
「こちらは三万じゃ」
 晴久はその数のことを話した、恰幅のいい顔立ちをしていて体格も堂々としている、勇ましい髭もよく似合っている。
「対する毛利は五千」
「ものの数ではない筈です」
「一気に踏み潰せる相手ですが」
「城攻めにかかろうにも」
「それどころではないですな」
「そうじゃ、城攻めにかかるつもりであったが」
 それがというのだ。 
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