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おっちょこちょいのかよちゃん

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51 別れの寄せ書き

 
前書き
《前回》
 かよ子はりえと札幌から戻って来た三河口を引き合わせ、それぞれの情報を共有する。そしてその夜、かよ子とりえはまる子、たまえ、大野、杉山、藤木を連れて花火を楽しむのであった!! 

 
 花火を終えたかよ子達は帰ろうとした。
「私、こんな花火楽しかったわ。皆のお陰よ。本当にありがとうっ!」
 りえは皆に花火の感想を述べると共に、謝意を示した。
「明日もまた遊ぼうね」
「でも、私・・・、明後日帰らなくちゃいけないの」
「ええ!?」
 皆はショックを受けた。
「もう帰っちゃうのかい!?」
「もっとりえちゃんとやりたい事色々あったのに!」
「何か、ずっと一緒にいるような気になってたんだよな・・・」
「そうだ、帰りに皆で見送るよ!何時の電車?」
「ううん、見送りはいいわ。見送られると余計悲しくなっちゃうから。それに泣いちゃったらカッコ悪いから・・・!!」
「そうか・・・」
「本当に色々遊んでくれてありがとうっ・・・!」
「うん・・・」
 かよ子達は泣きたくなったが、堪えた。皆各々の家へと帰宅してゆく。帰り際、りえはかよ子にこう言った。
「かよちゃん」
「え?」
「明日、かよちゃんの家に行くよ。友達になってこれからの事に協力してくれるお礼をしにね」
「うん!・・・あ、あの・・・」
 かよ子はある事を思い切って聞いてみる。
「りえちゃんは、す、杉山君の事・・・、好きなの・・・!?」
「えっ!?」
 りえは一瞬凍りついた。
「うっ、そんな事は・・・。意地悪ばっかで最低よ。でも、何か気になるわね・・・」
「そう、か・・・。うん、じゃあね」
 かよ子はりえと別れた。

 かよ子は帰宅すると、母に伝えた。
「お母さん、りえちゃん、明後日東京に帰るって。それで、明日お礼を言いにウチへ寄るんだって」
「あら、そう」
「でも、何か寂しくなるよ・・・」
「でも、りえちゃんの方が寂しいんじゃない?寄せ書きでもしてあげたらどうかしら?」
「寄せ書き・・・?うん、そうするよ!」

 翌日、かよ子は色紙をみまつやで購入して、皆をとある空地に呼び寄せた。
「それで、ここにね、りえちゃんにメッセージを書いて寄せ書きするんだ。そうすれば、りえちゃんも私達の事、覚えていてくれるよ」
「ひえ〜、かよちゃん、やるねえ〜」
「お、お母さんが提案してくれたんだよ・・・」
「そうだね、寄せ書きがあればいつでも僕達の事、思い出せるもんな」 
「うん、私達の気持ちも伝わるしね」
 かよ子はやや照れた。
「それじゃ早速一人ずつ書いていこうぜ」
 皆は一人ずつ色紙に寄せ書きをする。まる子は「また花火しようね」、たまえは「ピアノ頑張ってね」、大野は「今度こそプールに行こう」、藤木は「この次はボクが守ります」と書いた。
(私は何て書こう・・・)
 かよ子は思い切って書いた。「絶対にこの世界を守ろうね」と。
「つ、次は杉山君だよ・・・」
「俺はいいや」
「ええ!?何で!?」
「皆で書かなきゃ意味ないじゃん!」
「そうだよ、りえちゃんに失礼じゃないか!」
 まる子も藤木も杉山に反論した。
「そういうの苦手なんだ。俺、ちょっと用事あるから、またな」
 杉山はそう言って去っていった。
「す、杉山君!!」

 りえは教会のピアノを使って練習する最後の日となり、最後の練習をしていた。その時、礼拝堂のドアが開いた。
「あれ、皆、どうしたのっ?」
 かよ子達が入って来た。
「りえちゃん、最後にと思って皆で色紙に寄せ書きしてきたんだ」
「あ、ありがとう・・・」
「杉山君は用事があるって言って書かなかったんだ・・・」
「そっか・・・、皆、私の為にどうもありがとうっ・・・!!」
 りえは感動で泣きそうになった。
「だってえ、アタシ達ずっと友達じゃん」
「来年もまた一緒に遊ぼうね!」
「うんっ・・・、私、皆の事、本当に忘れないから・・・。本当だよっ・・・!!」
「りえちゃん・・・」
「コンクール頑張れよ。応援してるからさ」
「うんっ!」
「じゃあね!」
 皆は教会から出て行った。だが、りえは杉山が書いていない事に不審に思った。
(なんで杉山君だけっ・・・!?)

 杉山はインターホンが鳴ったので玄関の戸を開けた。
「はい、・・・う」
 相手はりえだった。
「どうしたんだよお?」
「これっ、何で杉山君だけ書いてないわけっ?」
「俺、そういうの苦手なんだ。何書いていいかよくわかんねえし・・・」
「我儘言ってないでちゃんと書きなさいよっ!」
「ちょっと待てよ。別に俺一人だけ書かなくてもいいだろ?」
「よくないっ!絶対よくないと思うっ!明日、教会のピアノを借りたお礼を言いに行く事になってるのっ。1時までにシスターに渡しておいてくれればいいわっ」
「だから俺は書かないって・・・」
「だめっ!そう言う事だからっ・・・」
 りえは怒り顔から笑顔に変える。
「じゃあねっ・・・」
 りえは去った。
「なんだよ、あいつ・・・」
 杉山は何て書いていいか迷った。

 かよ子は家に帰った。
「お母さん、りえちゃんに寄せ書き、渡せたよ」
「よかったわね、お疲れ様」
 午後になり、誰かが山田家のインターホンを鳴らした。かよ子の母が出る。
「はい。あら、安藤さん!?」
 現れたのは杯の所有者の母だった。その所有者である娘もいた。
「かよ子、りえちゃんよ」
「うん」
 かよ子は下に降りてきた。
「りえちゃん!!」
「かよちゃんにお礼を言いに来たのっ。友達になってくれた事や私達とこれからの戦いに協力してくれた事にね」
「私も静岡に来てよかったと思うわ。りえと友達になってくれてありがとうね」
「は、はい。こっちも楽しかったです」
「安藤さん。また何かあったらお互い連絡を取り合いましょう」
「はい、それではまたいつか」
「あ、それからかよちゃん」
「え?」
「杉山君の家に言って寄せ書きを書かせたわ。やっぱり杉山君に書いてもらわないと意味ないと思ったの」
「そ、そうだったんだ。書いてくれるといいね」
「うん、じゃ、またいつかねっ!」
 安藤親子は山田家を後にした。かよ子はりえについてある事を思う。
(りえちゃん、私にとって最高の友達で、恋のライバルになるかもね・・・)
 かよ子はそう考えるのであった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「夢を叶える為に」
 りえはシスターから杉山のメッセージが加筆された寄せ書きを貰う。杉山が書いた言葉は一体何なのか。そしてかよ子、杉山、りえがそれぞれの思う事とは・・・。 
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