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おっちょこちょいのかよちゃん

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52 夢を叶える為に

 
前書き
《前回》
 りえと花火を楽しんだかよ子達はりえが明後日が東京に帰る日だと聞かされる。見送りを断られたかよ子はりえの為に色紙を用意して寄せ書きを書く事を提案するのだが、杉山は断ってしまう。そのまま寄せ書きをりえに渡したかよ子ではあるが、りえは気に食わず、何が何でも杉山に寄せ書きを書かせに行った。そしてかよ子とりえは今後もまた連絡を取り、共闘し合う事を誓い合うのだった!! 

 
 三河口は居間の戸窓からりえとその母が出て行く所を見た。
(りえちゃん、かよちゃんの家に挨拶に来たか・・・。あの二人が共闘したら最強無敵のコンビになりそうだな・・・)
 三河口はそう考える。
「まきちゃん、東京の人と同盟結べたんだね」
「はい、かよちゃん達も東京の子と仲良くなれたそうですよ」
「そうなん、ああ、そう。健ちゃんが札幌でありから聞いた事やその杯を持ってる人が清水に来てる事、今電話でさりにも伝えたんよ」
「それで、さりちゃんは何て言ってましたか?」
「今度神戸に行ってゆりにも聞いてみるって」
 ゆりとは奈美子の娘で、さりとありの姉である。
「ゆりちゃんの住む神戸にも何か起きているのかを確かめにですか?」
「うん、そう言ってたよ」

 翌日、りえは教会のシスターにピアノを借りた礼をしていた。
「ピアノを使わせて貰ってありがとうございました」
「どういたしまして。ピアノのコンクール、応援してるわ。あ、そうそう」
 シスターは色紙を差し出した。これはかよ子達から貰い、杉山に書くように渡した寄せ書きだった。
「杉山さとし君って子がりえちゃんに渡すように言ってたわ」
「ええっ!?」
 りえは寄せ書きを見た。確かに杉山のメッセージも加えられている。
(杉山君・・・。書いてくれたんだ・・・。ありがとうっ・・・!!)
「あ、ありがとうございますっ!」
 りえはシスターにも、杉山にも謝意を込めて言うのだった。

 杉山は考える。自分の心の中はどうなっているのか。
(俺はあいつと喧嘩した。だが、あいつは喘息でもピアノへの情熱が凄い・・・)
 杉山は疑う。まさか自分はりえの事が気になって致し方ないのかと・・・。

 新幹線の車内の中、りえは改めて寄せ書きを見る。
(皆、ありがとう・・・!また、清水に行こうっ・・・!そして、皆にまた会いに行こうっ・・・!!)
 その時、車窓から富士山が見えた。
「うわあ、綺麗っ・・・!!」
 りえは静岡県は素晴らしいと思った。そこで築いた人間関係のみではなく、美味しいマグロの獲れる漁港、落ち着いた雰囲気の街並み、そして近くで見える富士山・・・。来年も必ずこの静岡の清水に訪れようと思うのだった。

 日本赤軍の本部。日高はアドルフと共に戻っていた。杯の奪取の失敗を房子に報告した。
「失敗ですと?その通りすがりの男子高校生に吹き飛ばされて?」
「はい、その男子に対してなぜか急に怖気ついてしまい、アドルフの虐殺(ホロコースティング)もなぜか通用しなかったのです」
「そうですか・・・」
 房子は気になっていた。日高とアドルフを怒りで吹き飛ばしたという高校生を。以前、清水の地で丸岡が認識術が通用せずに念力の如く遠くへ飛ばされたという相手も高校生の男子だった。その男子には何の能力が宿してあるというのか。そしてこの男子も今後の計画に支障をきたす恐るべき存在だと房子は警戒するのであった。
「でも、剣が手に入っただけでもよしとしましょう」

 かよ子は長山と電話していた。
『そうか、同盟を組んだんだね』
「そうだよ。ごめんね、会わせてあげられなくて」
『いいよ、こっちもちょっと小春が体調崩しちゃったからね』
「小春ちゃんは今は元気になったの?」
『ああ、明日は一緒に家族で静岡のデパートへ行くつもりだよ。小春にもそこのレストランでご馳走するつもりでね』
「そっか、楽しんでね」
『うん、じゃ、またな』
 かよ子は電話を切ると、東京へ戻った杯の所持者を気になった。
(りえちゃん、どうしてるかな・・・?)
 その時、御穂津姫が現れた。
「山田かよ子ちゃん」
「御穂津姫?!」
「お疲れ様でした。杯の所持者との同盟を見事に組まれましたね。これからさらに戦いは激しくなりますが、必ずこの結果は良い方向へと導かれるでしょう」
「う、うん」
「それでは」
 御穂津姫は消えた。
(戦い、か・・・)
 かよ子は考える。そういえば長山は御穂津姫から杖、護符、杯と同等の強さを持つ剣が日本赤軍に奪われてしまったと伝えられた。御穂津姫の言う通り、激しい戦が始まるだろう。だが、たとえそこでおっちょこちょいしようが、必ず元の日常を取り戻す。かよ子はそう誓った。
(それにしても、杉山君・・・)
 かよ子は好きな男子に若干嫉妬する。杯の所持者と喧嘩したり、能力を試したり、それでもどこかりえを気にしているような感じだった。そう考えているうちに、まる子達が遊びに来た。
「かよちゃ〜ん、遊ぼ〜」
「う、うん!」

 夕日が映る中、皆はりえの事を考えていた。
「りえちゃん、今頃どうしてるんだろう?」
「もう東京に着いてる頃だろうね」
「きっとピアノの練習してるんだろうな」
「それにとても可愛かったしね」
 杉山はリフティングしながら言う。
「ああ、あいつならきっとなれるさ。すっげえ気の強えピアニストに・・・」
 この時、かよ子は杉山の顔が赤いのを確認した。夕日のせいか、それとも、彼女に惚れているのか・・・。
(りえちゃん、私にとって恋のライバルかもね・・・)

 東京の家に帰ったりえはら自宅のピアノに清水の友達からの寄せ書きを飾った。
「りえ、寄せ書き書いてもらってよかったわね」
「うんっ!」
 りえは杉山の大きく書かれたメッセージを見た。そこには「絶対に夢、叶えろよ!」とあった。
(杉山君、私、やっぱり杉山君が好きになっちゃったかもねっ・・・)
 そしてかよ子のメッセージを見る。「絶対にこの世界を守ろうね」と書いてある。
(そうよねっ、折角同盟を組んだんだもんねっ・・・)
 りえは信じていた。今後手強い敵と戦う事になった時、かよ子達と共闘できる日が来るであろうと。ピアニストの夢を叶える為にも必ず異世界の敵や日本赤軍を打ち倒すと。そして、まずは来月のコンクールに臨む。

 そして、また時は進んでいく。 
 

 
後書き
次回は・・・
「一年生の頃」
 清水市に住む小学三年生のおっちょこちょいの少女、山田かよ子。彼女はいつ、なぜ、杉山さとしを好きになったのか、そのきっかけが明らかとなる・・・・。 
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