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八条学園騒動記

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第五百六十四話 脚本その四

「難しいよ」
「コミカルでかつ知的に」
「そして図々しくて無反省なんだ」
「そう言っていくと複雑なキャラだね」
「そのキャラを演じるから」
 それだけにというのだ。
「やっぱりね」
「難しいね」
「このことは事実だから」 
 それ故にというのだ。
「君もね」
「頑張らないと駄目だね」
「まずはキャラをよく理解して」
「原作を読んで」
「歌劇の方も観て」
 そうしてというのだ。
「僕も脚本書いていくから」
「それで脚本完成したら」
「こちらも読んで」
 そうしてというのだ。
「キャラをよく理解してね」
「それからだね」
「そう、そこから練習もして」
 舞台の実際のそれをというのだ。
「よく理解してね」
「そうしないと駄目だね」
「というか理解しないと」 
 それこそというのだ。
「しっかりと演じられないよ」
「そうした難しい役だね」
「逆に言えば理解すればする程ね」
「いいんだ」
「これシェークスピアの作品全体に言えると思うけれど」
 こう前置きしてだった、管はマルティに話した。二人は向かい合って座ってそのうえでじっくりと話し込んでいた。
「理解すればする程ね」
「いいんだ」
「そう、スルメみたいに」
「スルメ?烏賊の干物?」
「日本のね」
「スルメって僕食べたことないけれど」
「お酒のおつまみにいいんだ」
 菅は無表情だが確かな声で答えた、彼に表情がないのはいつものことだ。
「美味しいよ」
「そうなんだ」
「これが噛めば噛む程味が出て」
「それでシェークスピアの作品も」
「その登場人物達もね」
 その彼等もというのだ。
「理解すればする程ね」
「いいんだね」
「演じる時に味が出るんだ」
「フォルスタッフ卿もだね」
「僕もそうなんだ」 
 菅はここで自分もだと語った。
「実は」
「っていうとか」
「理解すればするだけ脚本もよくなるんだ」
「ああ、そういうことなんだ」
「本当にね」
「シェークスピアはだね」
「理解すればする程演技も脚本もよくなるんだ」
 こうマルティに話した。
「本当にスルメみたいだよ」
「噛めば噛む程だね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「生半可な理解だと」
「よくないんだね」
「言ってる意味とかわかりやすいけれどね」
 それでもだというのだ。
「せめてその作品を最初から最後まで読まないと」
「わからないんだね」
「そうした作品世界なんだ」
「じゃあざっとあらすじを聞くだけだと」
「駄目だよ」
「生半可な理解だと」
「何にもならないよ」
 そうだというのだ。 
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