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八条学園騒動記

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第五百六十四話 脚本その三

「本当に」
「ああした人はね」
「というかね」
「というかっていうと」
「いや、あれだけ図々しくて無反省で酒好きで女好きで」
「とんでもない人だね」
「それでもあれだけ魅力的なんてね」 
 こう菅に言うのだった。
「あの人凄い人だね」
「そこまでしても憎めないからね」
「何処かね」
「だから無茶苦茶こき使ってる部下の人達にもね」
 菅もこう話した。
「慕われてるんだよ」
「何だかんだで」
「成敗には協力しても」
 それでもである、物語の後半の森の場面でもである。
「慕ってはね」
「いるね」
「いると迷惑にしても」
 それでもというのだ。
「いないと寂しい」
「そうした人だね、フォルスタッフ卿は」
「陰がなくて意地悪でもないし」
「懲りないけれどあっさりしていてね」
「あれで器も大きい人だから」 
 こうした美点があるからだというのだ。
「それでね」
「碌でもない人にしても」
「作中でも愛されていてね」
「読者も観客も好きなんだね」
「そうだと思うよ、不良騎士とか不良お爺さんと言うべき人でも」
「人間として下劣じゃないし」 
 マルティはフォルスタッフについてこうも言った。
「愛されるね」
「そこも書いていくからね」
「楽しみにしておくね」
「是非ね」
「酷い目には遭ってもね」
「そこで僕が大事なことは」
 演じる者としてだった、マルティは言った。
「そうしたフォルスタッフ卿の長所と短所を理解して」
「コミカルでも知性がある様にね」
「演じることだね」
「難しい役だよ」
 菅ははっきりと言い切った。
「あの役は」
「そうだよね」
「マクベスとかヤーゴも難しいけれど」
 シェークスピアのこういったキャラクター達もというのだ。
「人間の悪の部分をどう出すか」
「そういえばマクベスも奥さんに唆されてるけれど」
「あの人にもそうした心があるから」
 悪の心、それがというのだ。
「悪事を為していくんだよ」
「王様殺して自分が王位に就いて」
「それからも人をどんどん殺していくんだ」
「自分にもそうした考えがあるから」
「奥さんに言われたのはきっかけで」
 それでというのだ。
「自分にも権力欲、野心があって」
「ああしていったね」
「そう、そしてそのマクベスもね」
「演じることが難しいね」
「そしてヤーゴもね」
 オセローのこのキャラもというのだ。
「最初はまともな軍人さんでも」
「変わっていったんだよね」
「色々あってね」
「それで心が歪んでいったから」
「極悪人になったね」
「そうなったから」
 だからだというのだ。
「このキャラもね」
「演じることがだね」
「難しいよ、そしてフォルスタッフ卿も」
 このキャラクターもというのだ。 
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